クリエイションは現場主義? 事前に振りを用意しておくことは?
平山>どの作品においても“あなたはこの役でこの音楽を使ってこういうことをしますよ”と、最初に説明してから始めることはまずないですね。たいていクリエイションの最初の数回はワークショップから始めます。そこで“こういうスタイルで進めるつもりです”という意思表示と、“こういうきっかけを出したらどう返って来るかな”と様子を見ています。現場でダンサーを見ていると、ポンと変わっちゃうんです。原田>正直、最初は本当に戸惑いました。でも一緒にやっていくうちに、これが平山さんのスタイルなんだなってわかってきたというか……。私自身はゼロから全部ひとりでつくる作業が苦手で、何かひとつテーマがあって、そこから膨らませていくタイプ。ソロ公演のときは演出家にお願いして、主軸となるストーリーを立てていただき、そこからつくり上げていきました。構成があって、流れがあって、起承転結があって、選曲をして固めていく感じです。
加賀谷>何も準備せずにイマジネーションに頼れてしまうのは、本当にすごいと思うし尊敬します。平山さんみたいにイメージでつくってみたいけど、私には無理。私はびびりなので常に計画的です。最初に“今回はこういう作品にしよう”というヴィジョンをはっきりと持ち、冒頭から順番通りにつくっていく。結構きちんとしているんです(笑)。私だったら、ダンサーがリハーサルに集まってくるところに何も準備しないでいく勇気がない。しかも平山さんの方法でつくっていたら、どこに着地するかも見えないし、ちゃんと形になっていくかすごく不安だと思う。どこに降りるかもわからないままつくるというのは、やっぱりすごいですよね。
平山>それはダンサーを信じているから。自分が疑問を投げかけ続ければ、最期まで応え続けてくれるひとたちだという信頼があるから。自分自身はすごく不安で、彼らのポテンシャルに応えられるだろうかって考える部分はあるけれど、ダンサーに対する不安はない。プロセスがちゃんと成り立っているから、最後に出来上がるものは決して悪いものにはならないはず。