電気料金
大規模マンションでも、各専有部分の住戸の居住者は地域電力会社と個別に契約して受電している場合がほとんどでしょう。ただ、2005年の電気事業法の改正によって、建物全体の受電容量が50kw(ファミリータイプの住戸で40戸前後に相当)以上であれば、管理組合が大口契約者となり、専有部分を含めて高圧一括受電することが可能になりました。
つまり、管理組合が自らが事業者となって高圧で電力を安く仕入れて各区分所有者には低圧に変えて販売することができるのです。
最大の利点は、管理組合が大口利用者として受電した場合、共用部分だけでなく専有部分の電気料金も3割程度安く購入できるという点にあります。
しかし、これを実現するにはいくつかの要件があります。
(1) 電力会社の既存設備を撤去のうえ、管理組合自らが受変電設備(トランス)を所有する必要があります。
(2) 各専有住戸の使用量検針から電気料金の出納請求まで管理組合自らが行う必要があります。
(3) 受変電設備の保守点検を所有者である組合が実施しなければなりません。なお、3年毎に1時間程度の停電を伴う点検実施が必要となります。
上記(2)・(3)については、それぞれ専門業者に委託することも可能です。また、設備投資の回収については、保守点検、出納・請求業務等のランニングコストを考慮してもおよそ7~9年で回収できます。(ただし、回収効果の試算については個別に調査が必要です。)
受変電設備の耐用年数は25~30年以上のため、初期投資の費用回収後は電気料金の差額分が大きな収益源となり、管理費の減額や修繕積立金の補てんなどに活用することも可能です。
一方、このような一括受電に伴う設備投資の負担や検針から出納請求等の運営業務までの一切を管理組合に代わって引き受けるサービス業者(新電力のほか、通信会社、管理会社の系列会社など)がいます。
このプランの場合、サービス業者は下記のような条件を提示しています。
1) 管理組合と10年~15年の契約を締結する。(更新条項付き)
2) 管理組合には一定の電気料金の削減を還元する。
2)については、共用部分の電気料金の20~40%相当額が一般的ですが、専有住戸への還元に振り替えることも可能です。
このスキームは、地域電力会社に代わってサービス業者と受電契約することで、初期投資の負担なく一定の削減メリットを享受できる商品であると言えます。
ただし、この場合はマンション全体の電気料金の価格差によるメリットの大半を設備投資を負担したサービス業者が享受することになります。
なお、いずれのスキームの場合でも、一括受電に際しては各住戸の既存の受電契約を解約してもらう必要があり、組合総会での決議に加えて最終的には組合員全員から同意書を取り付ける必要があります。
したがって、どちらを選択するにしろ、円滑にコンセンサスを得るには一括受電のしくみやメリットはもちろんのこと、デメリットやリスク等の留意事項を組合員全員が正しく認識してもらわなければなりません。
2016年には電力小売りの完全自由化が予定されており、ガス会社・通信会社などの異業種も参入して顧客獲得競争が激しくなることが予想されます。
マンションの住人としては、一括受電か個別契約かの選択だけでなく、誰から電気を購入するかの選択肢も増えるため、まずは管理組合内の基本方針を決めておくことが望ましいでしょう。
【マンションの一括受電導入サポートの例】
◆マンション電力見直し隊
◆東京電力のスマートマンションサポートサービス
◆中央電力の一括受電サービス