「終わったんだから、振り返りたくない」という方もいらっしゃると思いますが、客観的に振り返ることも重要です。そこで、この記事では「午前択一」「午後択一」に大きく分け、科目別に今年度の難易度や特徴を振り返ります。
午前択一(平成27年度司法書士試験)
■憲法(3問)第3問は、使用しているテキストによっては掲載されていない知識もあり、少し苦労されたかもしれません。しかし、第1問は簡単な判例問題であり、第2問の統治の条文問題も昨年度よりも平易な問題でした。
司法書士試験では、憲法は平成15年度から出題され始めましたが、徐々に難易度が上がり、平成23年度がピークでした。しかし、平成24年度以降は徐々に易化(いか)しています。難易度の変化のイメージは、以下のとおりです。
■民法(20問)
民法は、昨年度はかなり難しく、民法が原因で不合格になった方も大勢いらっしゃいました。しかし、今年度は昨年度に比べ、随分易しくなりました。易化している理由は、以下の点が大きいです。
・最も難しい出題形式である個数問題(※)が昨年度の「5問」から「2問」に減少した
※「個数問題」とは、5つ示される選択肢の中から、正しいもの(または誤っているもの)の数を問われる出題形式です。基本的には5つの選択肢すべての正誤がわからないと間違えますので、最も難しい出題形式といえます。
・正答率の下がる学説問題が今年度はなかった
・総則は難しい事例問題が1問は含まれることが多いが、今年度はなかった
・昨年度は難問ばかりであった債権が易化した
・親族・相続は複雑な事例問題が1問は含まれることが多いが、今年度はなかった
ということで、民法はスムーズに解けた方が多いと推察されます。
なお、上記で挙げたこと以外に今年度の特徴を挙げると、担保物権で通常2問出題される抵当権が1問も出題されませんでした。抵当権は、司法書士が取り扱う不動産登記業務で必ず出てくるものであり試験での重要性も高いですから、これは今年度のみの特徴だと思います。
■刑法(3問)
難易度は普通です。
「すべて容易に正解できる」というわけではありませんが、刑法で1問は出題されることが多い「多くの人が間違えてしまう問題」はありませんでした。
近年はずっとそうですが、刑法の出題テーマは、過去に出題されたことがあるものばかりです。今後も、これまでに出題されていないテーマ、たとえば、堕胎罪(だたいざい)や略取誘拐罪(りゃくしゅゆうかいざい)が出題される確率は低いでしょう。
刑法は他の科目以上に、過去問の事例をそのまま記憶するのではなく、抽象化して記憶していたかが問われました。たとえば、第24問(故意)・アは「脅迫罪」とあり、「脅迫罪なんて詳しくやってない」と思った方もいるかもしれませんが、この肢は具体的事実の錯誤の問題であり、普通のテキストでは殺人罪の例で説明がされていると思います。「殺人」や「脅迫」1つ1つを記憶するのではなく、具体的事実の錯誤の場合は、判例は法定的符合説、つまり、「条文の中で一致していれば犯罪は成立する」というように抽象化して記憶していれば答えが出せました。
■会社法・商法(9問)
午前択一の中では、最も難しかった科目です。
第33問の「社債権者集会」と第35問の「商事消滅時効」は、捨て問となった方もいたと思います。
なお、平成26年から平成27年にかけて、会社法・商業登記法の改正が相次ぎ、改正法がどれくらい出題されるかが注目されていましたが、改正法の出題は、第30問(会計限定監査役)・イのみでした。「会計限定監査役の定めを定款に設けたときは、その変更の登記をしなければならない」という知識です。
次のページでは、午後択一と択一全体を総括します。