勤務司法書士の年収・月収の記事で、勤務司法書士の収入面についてご説明しました。今回の記事では、開業司法書士の収入面についてご説明します。


勤務司法書士から開業へ

司法書士・開業

司法書士・開業

勤務司法書士の年収・月収
の記事に記載しましたとおり、一般的には勤務司法書士で高収入の道は狭き門です。というよりも、勤務司法書士で高収入を目指す方が少ないと言った方が適切です。事務所に勤務する大半の司法書士は、実務を学ぶ修行の場と考えていますので、ある程度業務を覚えると独立を考える方がほとんどです。
みなさんも、高収入を得たいと考えるのであれば、開業を考えることになるでしょう。


開業司法書士の収入

客観的なデータをみていきましょう。司法書士の年収について、以下のアンケート調査があります。


【司法書士の売上金額等の合計(確定申告額)】

(『司法書士白書2015年版』平成23年度司法書士実態調査集計結果)

(『司法書士白書2015年版』平成23年度司法書士実態調査集計結果)



■男性の55.3%が消費税課税事業者
自営業者の売上の1つの基準とされるのが、「消費税課税事業者か否か」です。課税売上高が1000万円を超える事業者は消費税の納税義務がありますが、1000万円以下の事業者は消費税の納入を免除されます。消費税課税事業者が男性の半分以上(55.3%)もいるというのは、それなりの売上が立っているといえるでしょう。

■5000万円以上はごく少数
売上が5000万円以上あるのは、「男性6.6%」「女性2.2%」とごく少数です。他の業種にも当てはまることですが、やはりこのレベルに位置できる人の割合はかなり少なくなります。

■女性のほうがかなり売上が低い
「男性の55.3%が消費税課税事業者」と説明しましたが、女性の消費税課税事業者は31.9%と、男性に比べかなり少なくなります。また、売上が500万円未満の女性が約4割(39.4%)います。女性の場合は、「家事や育児と両立するため、仕事の量を抑えている」という方が男性よりも多くなりますが、それだけでは説明できない開きがあります。

上記のデータをご覧になって、どのような印象を持たれたでしょうか。「男性の55.3%が1000万円以上の売上がある」ことなどから、「けっこう高いな」と思われた方も多いと思います。
しかし、上記の金額は、あくまでも「売上」、つまり、経費等を引く前の数字です。上記の金額が手元に残るわけではありません。
経費等を引いた金額は、以下のとおりです。


【司法書士の所得金額等の合計(確定申告額)】

(『司法書士白書2015年版』平成23年度司法書士実態調査集計結果)

(『司法書士白書2015年版』平成23年度司法書士実態調査集計結果)



■1000万円以上は男性16.6%・女性10.8%
売上では、1000万円以上が男性55.3%・女性31.9%でしたが、所得になると男性16.6%・女性10.8%まで下がります。

■半数以上が500万円未満
所得500万円未満が、男性57.5%・女性70.8%と、半数以上が所得500万円未満です。

こう見ると、「所得になると低いな…」と思われた方が多いと思います。
しかし、実際には「経費」の内容を見てみないとわかりません。個人事業主の場合、会社員などの給与所得者と比べ、経費に計上できる支出がかなり多くなります。たとえば、自宅で開業しているのであれば家賃・光熱水費の一部、飲み会代(内容によります)など、会社員であれば単なる支出となってしまうものを、個人事業主であれば経費として計上できます。また、家族を従業員として雇い、給与を支払っている場合もあります。これも経費となります。

私自身は、個人事業主ではなく株式会社を設立して予備校の講師の仕事をしていますが、私の株式会社の平成27年の営業損益額は「-65,180円」です。しかし、私の手元に残った額はまったくマイナスではありません。私自身に役員報酬を支払ったり、様々な支出を経費として計上しているために、営業損益額がマイナスになっただけです。

このように、個人事業主の所得や会社の損益額は、会社員の所得とは意味がまったく異なるので、「会社員でいうところの手元に残っている額はどれくらいなのか?」は正直なところわかりません。それぞれの司法書士が、どのような経費を計上しているかなどを見ないとわからないのです。
ただし、会社員でいうところの手元に残っている額は、上記の所得金額よりも高いことは間違いないでしょう。


司法書士が開業に有利な点

司法書士は、業種として開業に有利な点があります。司法書士の開業における大きなメリットは、開業費用が安く済むということです。

たとえば、医者や歯科医であれば、数百万円、数千万円する機材を揃える必要があり、開業に数千万円、数億円かかるのが普通であるため、能力が高いから開業できるというわけではありません。親が開業しており、それを継げるかどうかが大きく影響します。
しかし、司法書士の開業費用は一般的には50万円~150万円程度です(開業後数か月は仕事がまともにないということを考慮して、生活費を含めて開業資金300万円程度と見積もることもよくあります)。
50万円~150万円の中身は、次のようになります。

まず事務所ですが、これは賃貸するとしても、通常のマンションの1室を事務所用に賃貸することが多いので、 初期費用は20万円~40万円程度です(通常のマンションの賃貸だとお考えください)。なお、後述しますが、開業形態は多様化していますので、自宅開業など事務所の家賃がかからない形態もあります。

事務所を賃貸するのであれば、机や椅子などを揃える必要があります。これは、どれくらいこだわるかによって値段が変わってきます。安く済まそうと思えば10万円を切ることも可能ですが、こだわればキリがないところです。応接用の机や椅子は、少し良いものにしたいと考える人が多いですが、これもピンキリです。

パソコンやプリンター複合機は所有していないのであれば購入する必要がありますが、現在では所有していない人のほうが少ないでしょう。開業当初は仕事が少ないと思われますので、自宅で使うようなプリンター複合機でも仕事はできます。よって、パソコンとプリンター複合機を購入したとしても、5万円~20万円程度です。

また、司法書士は、毎月「会費」というものを支払わなければなりません。都道府県によって異なりますが、これが月2万円前後です。
※司法書士登録をしていない方が開業する場合には、登録費用10数万円もかかります(司法書士は登録をしていないと業務ができません)。

あとは、開業の挨拶状の費用やホームページの作成費など、かかる費用は人によって異なりますが、(当面の生活費を除き)開業費に200万円以上かける方は、私の知り合いではほとんどいません。開業費が安い点は、有利な業種であることは間違いありません。


開業形態の多様化

現在では開業形態はかなり多様化しています。一般的にイメージされる「事務所を借りて開業する」という形態以外にも、たとえば、以下のような開業形態があります。

■自宅開業
自宅を事務所として届け出て開業することも可能です。事務所の賃貸費用などがかからないというメリットはありますが、自宅ではお客様と会いづらいので喫茶店などで相談を聞く必要がある、自宅の住所を知られてしまうなどというデメリットもあります。

■共同事務所・合同事務所として開業
他の司法書士、または、他の士業(税理士、行政書士など)と合同して事務所を借りるということです。メリットは賃料・光熱水費・コピー機のリース代などを折半できることです。デメリットは、同一の事務所であるとお互いがどれくらいの仕事を取ってきているかなどがわかってしまうので、人間関係が難しいということです。

■他の先生の事務所内で開業
司法書士事務所内開業

司法書士事務所内開業

最近は、この形態も多くなってきていると感じます。「他の先生の事務所内で開業」とは、すでに事務所経営をされている他の司法書士の先生の事務所を間借りして開業するということです。他の先生の事務所の机を一つ借りるイメージです。多くが、それまで勤務していた事務所の中で開業するという形態です。通常は月2万円~5万円程度支払うだけで(事務所の先生が寛大であれば無償で)、事務所内のコピー機なども使えるので、開業当初は助かります。また、事務所の先生に相談することが容易であるということも、メリットです。ある程度仕事が軌道に乗ったら、自分で事務所を借りて完全に独立することとなります。


<よく読まれている関連記事>
勤務司法書士の年収・月収