「司法書士の収入」、気になりますよね?
司法書士試験に合格後、司法書士事務所に就職した場合にどの程度の収入を得らえるのかということは、合格後についての最大の関心事の1つだと思います。

ほとんどの方は、毎月の収入から生活費を支出し貯蓄をしますので、生活の基盤となるのが収入です。
この記事では、「勤務司法書士」に焦点を当て、勤務司法書士の月収・年収(給与)の実際に迫っていきます。

 

勤務司法書士の月収・年収(給与)についての統計データは乏しい

「◯◯業の平均年収は○○円だ」といった記事をご覧になったことがあると思います。その数字の根拠は、多くは厚生労働省が実施している「賃金構造基本統計調査」です。
この調査に基づき、以下のように職種別に支給されている給与額などが公表されています。

賃金構造基本統計調査 / 平成30年賃金構造基本統計調査(e-Stat/政府統計の総合窓口)
※リンク先の「EXCEL」または「DB」のボタンを押すと、調査結果をご覧になれます。

しかし、司法書士については、調査結果が公表されておりません。

国税庁が公表している申告所得税の統計情報には、「司法書士」の項目があります。

申告所得税/平成29年度(PDF/国税庁・統計情報)

しかし、司法書士は行政書士と合わせて公表されてしまっており、司法書士単体での統計情報は公表されておりません。
また、この統計は、開業司法書士と勤務司法書士を区別しておりません。

つまり、司法書士の収入については、公的な統計データがほとんどないのが現状です。
そのため、「司法書士の平均年収は1000万円以上」「司法書士の年収は200万円台がザラ」など不確かな情報が多く出回ってしまうのです。

 

司法書士のみに絞った売上金額・所得金額(確定申告額)の統計データ

このように、司法書士の収入についての公的な統計データは乏しいのが現状なのですが、司法書士のみに絞った売上金額・所得金額(確定申告額)の統計データがあります。
全国の司法書士に対して行った売上金額・所得金額(確定申告額)のアンケート調査です。


【司法書士の売上金額等の合計(確定申告額)】
司法書士の売上金額等の合計(確定申告額)

司法書士の売上金額等の合計(確定申告額)

(『司法書士白書2015年版』司法書士実態調査集計結果)

【5000万円以上】男性:6.6% 女性:2.2%
【1000~4999万円】男性:48.7% 女性:29.7%
【750~999万円】男性:10.6% 女性:12.4%
【500~749万円】男性:13.0% 女性:16.3%
【200~499万円】男性:13.0% 女性:22.5%
【1~199万円】男性:6.50% 女性:12.4%
【0円】男性:1.6% 女性:4.5%


男性は、55.3%が消費税課税事業者(課税売上高が1000万円を超える事業者)ですので、それなりの売上が立っているといえます。
女性は、消費税課税事業者が31.9%ですので、男性に比べ少なくなります。また、売上が500万円未満の女性が39.4%です。女性の場合、「家事や育児と両立するため、仕事の量を抑えている」という方もいます。男性との売上高の差の要因がこれだけではないでしょうが、1つの要因であることは間違いないと思います。

しかし、「売上」は、経費等を引く前の数字です。上記のグラフの金額が手元に残るわけではありません。経費等を引いた金額のアンケート結果は、以下のとおりです。


【司法書士の所得金額等の合計(確定申告額)】
司法書士の所得金額等の合計(確定申告額)

司法書士の所得金額等の合計(確定申告額)

(『司法書士白書2015年版』司法書士実態調査集計結果)

【1000万円以上】男性:16.6% 女性:10.8%
【750~999万円】男性:9.0% 女性:7.0%
【500~749万円】男性:16.9% 女性:11.4%
【200~499万円】男性:31.7% 女性:30.3%
【1~199万円】男性:22.1% 女性:31.6%
【0円】男性:3.7% 女性:8.9%


所得になると、1000万円以上は男性16.6%・女性10.8%まで下がります。また、500万円未満が、男性57.5%・女性70.8%と、半数以上が所得500万円未満です。

「所得は低いな…」と思われたかもしれません。しかし、会社員でいうところの「年収」は、経費の内容を見てみないとわかりません。個人事業主は、経費に計上できる支出がかなり多いです。たとえば、自宅で開業しているのであれば家賃・光熱水費(の一部)、飲み会代(内容によります)など、会社員であれば所得から支出すべき金額が、売上から引けます。ざっくりいうと、会社員とは以下のような違いがあるんです。

・会社員  :所得-家賃・光熱水費・交際費など
・個人事業主:売上-家賃・光熱水費・交際費など=所得

会社員と個人事業主では、「所得」の実質が異なるのです。会社員の所得に相当する額は、上記のグラフの金額よりは高くなります。


……と見てきましたが、上記のアンケート調査は勤務司法書士に絞ったものではありません。勤務司法書士と開業司法書士を区別していない調査です。残念ながら、勤務司法書士に絞った統計データは私の知る限りではありません。
統計データはないのですが、求人票の定点観測、司法書士試験合格者の方からの情報、司法書士のエージェント会社へのヒアリングなどを基に、勤務司法書士のおおよその月収・年収(給与)を記載します。

 

勤務司法書士の月収

司法書士事務所の初任給は、大きく以下のように分かれます。

・東京の事務所、東京以外の大規模事務所
→月収25万円~月収30万円
・それ以外の事務所
→月収20万円

※司法書士事務所は小人数であることが多いため、10人以上の事務所を「大規模事務所」、10人未満の事務所を「小規模事務所」としています。

東京の事務所でも月収20万円の事務所もあり、それ以外の都道府県の小規模事務所でも月収20万円を超えることはあるため、すべての事務所がこの月収であるわけではありませんが、大体この程度の月収であるとのイメージをお持ちいただければ大きな間違いはありません。

一般企業のように、「40代で妻子もいるから、月収40万円スタート」など、年齢を考慮してくれるのかですが、そのようなことはあまりありません。40代の方でも、月収25万円スタートなどとなります。
 
司法書士の年収・月収

司法書士の年収・月収

司法書士の就職司法書士の就職・転職のプロに聞いた!就職状況の実際の記事で、「就職には非常に強い資格」とご説明しましたが、初任給は夢のない数字となっております。よって、扶養家族がいらっしゃる方など、上記の月収では生活が成り立たない方は、ある程度貯蓄をされてから司法書士事務所に就職されることをお薦めします。

 

司法書士の年収

年収を考える上ではボーナスの多寡がかなり影響します。しかし、ボーナスが出るかは事務所によって異なります。一般企業と同じですが、利益に左右されます。ボーナスが出る場合も、1か月分支給の事務所もあれば、4か月分支給の事務所もあります。

そうすると、年収はたとえば以下のようになります。

・東京の事務所、東京以外の大規模事務所
年収300万円(月収25万円×12か月※ボーナスなし)~年収480万円(月収30万円×12か月+ボーナス4か月分)
・それ以外の事務所
年収240万円(月収20万円×12か月※ボーナスなし)~年収280万円(月収20万円×12か月+ボーナス2か月分)

高収入といえる数字ではないですね。

それでは、司法書士事務所の中でキャリアを積み、収入が上がっていくかという問題ですが、一般企業のように年功序列で収入が上がっていくシステムはほとんどありません。数年で独立または他の事務所に移る司法書士が多いため、そのようなシステムが構築されないのだと思われます。勤務司法書士でも、年収1000万円を超える方はわずかにいますが、それは「自分で大きい仕事を取ってきている」「その人がいないと事務所が潰れる可能性がある」というほどの人であり、一般的ではありません。

よって、高い年収を望むのであれば、通常は「開業」ということになります。

 

初任給が上がる可能性

収入が上がる?

収入が上がる?

少し厳しい数字が並びましたが、今後、初任給が上がる可能性はあると考えています。なぜなら、近年は合格者が減少し、都市部を中心に資格者が足りなくなってきているからです。司法書士業の場合、資格者しか行えない業務がありますので、物理的に一定数の資格者が必要となります。そのため、資格者を確保するために都市部の事務所を中心に初任給を上げざるを得なくなるのではないかと思います。

 

勤務司法書士の現実

「初任給が上がる可能性もある」とは書きましたが、すぐに高収入が望めないのが現在の勤務司法書士の「現実」です。私は、このような現実は司法書士試験に合格する前に知るべきだと考えています。たとえば、お子さんが私立の中学に通うのであれば、上記の年収だけでは、学費を支払ったうえで生活することはまずできないと思います。そういったことも理解されたうえで、人生設計を考え、この資格の取得を目指すのかを決めてください。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。