廃墟の美とその不思議
大階段を昇ると姿を現すクセルクセス門の有翼人頭像。牡牛の身体に人の頭部をつけた神像は古代メソポタミアでよく見かけられる ©牧哲雄
すでに人工美は滅び、自然美というわけでもない。いったい何が人を廃墟へと引き寄せるのだろう?
ギリシアの影響も見て取れる柱頭 ©牧哲雄
手前の柱と奥の柱が空間というものの神秘を明らかにすると同時に、太陽の動きは柱の形と影を微妙に変えて、時間の不思議をにぎやかに語り出す。
規則正しく立てられた柱に幾何学の美を発見すると同時に、千数百年の時間が不規則に浸食した大自然の美が立ち現れて、人と自然と時間が一体となった「世界」がそこに姿を現す。
謎の聖都ペルセポリス
階段のレリーフ。各地の民族が貢ぎ物を持って登庁する様が描かれている ©牧哲雄
「ペルセポリス」の名がギリシア語であるように、その詳細は古代ギリシアのクセノフォンやローマ時代のプルタルコスらの著書をあたるか、ペルセポリスにある石碑の文字を解読するしか方法がないのだが、その量はけっして多くはない。実は当時この都がこの地でなんと呼ばれていたかすらよくわかっていない。
諸王の上に君臨するアケメネス朝の大王を描いた、王の玉座のレリーフ ©牧哲雄
現在有力なのが、当時ペルシアに信者が多かった宗教ゾロアスター(拝火教)の正月(春分の日)であるノー・ルーズを祝う場所だったのではないかという説だ。
ノー・ルーズの日、古代オリエント各地から諸王がこの聖都を訪れ、「諸王の王」といわれたアケメネス朝の大王に謁見し、各地の名産品や金品を献上した。謁見の様子はいまもレリーフに見ることができる。