世界遺産/アフリカ・オセアニアの世界遺産

ロイヤル・エキシビジョン・ビル/オーストラリア(3ページ目)

19世紀のゴールドラッシュからオーストラリアを見守り続けてきた世界遺産「ロイヤル・エキシビジョン・ビルとカールトン庭園」。多文化が共存し、文化と自然を愛する「ガーデン・シティ」メルボルンの象徴を案内する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

白亜のロイヤル・エキシビジョン・ビル

ロイヤル・エキシビジョン・ビル北門。門の正面には近代建築で有名なメルボルン博物館が並んでいる

ロイヤル・エキシビジョン・ビル北門。門の正面には近代建築で有名なメルボルン博物館が並んでいる

カールトン庭園の全体を見下ろす白亜の美しい建物がロイヤル・エキシビジョン・ビルだ。

この噴水、当時は動力も使わず68mもあるビルのドームより高く水を送り出していた。いまは水不足で止められていることも多い

この噴水、当時は動力も使わず68mもあるビルのドームより高く水を送り出していた。いまは水不足で止められていることも多い

メルボルンには19世紀以後の建築物がたくさんの残っていて、街を歩いているだけでも楽しめるのだが、きわめつけがこの建物だ。

翼を広げた白鳥のような全体像はロマネスクの聖堂のようだし、正面の半円のバラ窓を見上げるとゴシックの大聖堂のような迫力を感じる。設計したジョセフ・リードは、ビザンチン、ロマネスク、ロンバルディック、ルネッサンスをはじめ、様々な建築様式を取り入れて、重厚ながら軽快でかわいらしい建物に仕上げて見せた。

おもしろいのが正面玄関にある噴水。天使たちが遊んでいるこの噴水をよーく見てみると、カモノハシやワニ、カメなど、オーストラリアの動物たちが彫られているのがわかる。

 

メルボルンの歴史とロイヤル・エキシビジョン・ビル

1880年のメルボルン万博ではここがメインのホールとして使われた。現存する世界最古の万博ホールで、永久建造物としての万博ホールは世界で唯一

1880年のメルボルン万博ではここがメインのホールとして使われた。現存する世界最古の万博ホールで、永久建造物としての万博ホールは世界で唯一

メルボルンの歴史は1850年前後のゴールドラッシュにはじまる。近郊で金が発見されると世界中から人々が押し寄せ、たった30年で大英帝国第二の都市にまで成長した。それを象徴するのが1880年のメルボルン万博だ。

ホールの様子

ホールの様子

19世紀半ばより、世界各国が1か所に集まって産業や文化を競争・交流しあう万国博覧会が活発に開催された。1951年のロンドン万博を皮切りに、ニューヨーク、パリ、ウィーンと世界史上の重要都市で開催されてきた万博だが、1880年10月1日~1881年4月30日、万博ははじめて南半球に渡り、メルボルンで開催された。

ビクトリア朝時代のイギリスは誇りをもってこの万博を開催し、メイン・ホールとしてこのロイヤル・エキシビジョン・ビルを建築した。通常ホールは一時的に建てられるものだが、この建物は当初から永久建造物として設計された。

1888年の入植100周年記念万国博覧会もここで開催されて200万人もの入場者を記録したほか、1901年にオーストラリアとしてイギリスから独立すると、一時は国会議事堂としても使われて、その後州議会の議事堂となった。

 

世界遺産「ロイヤル・エキシビジョン・ビルとカールトン庭園」は、19世紀後半の産業(万博)を象徴する建物であると同時に、カールトン庭園はオーストラリアに渡った人々の心の豊かさの、ロイヤル・エキシビジョン・ビルは人々の挑戦と誇りの象徴なのである。

ロイヤル・エキシビジョン・ビルに入ってみよう!

ロイヤル・エキシビジョン・ビルのドーム。ガラス窓を並べて光を取り入れているため、内部は意外なほど明るい

ロイヤル・エキシビジョン・ビルのドーム。ガラス窓を並べて光を取り入れているため、内部は意外なほど明るい

ロイヤル・エキシビジョン・ビルの内部はとてもシンプルだ。

博覧会の会場であるために、内部は基本的に大広間がひとつで、ゴテゴテした装飾もほとんどない。しかし、よく見るとなかなか味がある。

まずは窓。まだ電気がなかったため、太陽光を効率的に取り込む構造になっており、中央のドームや玄関門ファサードのバラ窓の透明なガラスによって、内部は電気がなくてもかなり明るくなっている。

シンプルながら美しい内装

シンプルながら美しい内装

壁も白やパステルカラーの淡い色調で、柱はすっきり見せたり彫刻が彫られているように見せるため、トロンプ・ルイユ(だまし絵)によって装飾されている。そのため、シンプルながらとても明るく軽快な内装になっている。

中央ドームを支える四方の柱に描かれているのは、春夏秋冬を告げる天使たち。ロイヤル・エキシビジョン・ビルは直接宗教施設だったわけではないが、ビクトリア女王や天使たちを描き、神々と大英帝国を称えている。

なお、現在ロイヤル・エキシビジョン・ビル内部は開放されておらず、中に入るには14時からの内観ツアーに参加しなければならない。ツアーには予約が必要で、ロイヤル・エキシビジョン・ビルの隣にあるメルボルン博物館で受け付けている。詳しくは下記へ。
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