世界遺産/アフリカ・オセアニアの世界遺産

セレンゲティ国立公園/タンザニア(3ページ目)

マラ川を前に立ち尽くす数百万頭のヌー。川にはワニ、対岸にはライオンやハイエナ、上空にはハゲワシが待ち構えるなか、ついに大移動を開始する! 今回は世界で一番有名なサバンナ、タンザニアの世界遺産「セレンゲティ国立公園」を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

セレンゲティの動物たち

朝もやの中のバッファロー。バッファローをはじめとする草食動物は臆病ゆえ近寄るとしばしば盲目的に突っ込んでくるという。そのため肉食動物以上に危険とも

朝もやの中のバッファロー。草食動物は臆病ゆえ近寄るとしばしば盲目的に突っ込んでくるという。そのため肉食動物以上に危険とも

東アフリカのサバンナを観光する場合、サファリ・カーに乗って動物たちを探し求めることになる。特にゾウ、サイ、ライオン、ヒョウ、バッファローの5大哺乳動物を「ビッグ5」という。

ゾウやバッファローのような巨大な動物は歩いているだけで大迫力だし、ライオンやヒョウのような肉食動物の身体は本当に美しい。特にヒョウやチーターの歩く姿。肩のたくましさ、腹にかけての曲線美、重心は低く大地をしっかり踏みしめる尻から後ろ足にかけての筋肉群。凪の海のように、力を内に秘めるその姿は究極の機能美だ。

装甲がとてもかっこいいサイ

装甲がとてもかっこいいサイ

驚いたのはサイの装甲。あれはまるで戦車。目が悪いので、近くに動物がいるととりあえず突っ込んでくるらしく、ブッシュなどで出くわしたら一瞬でお仕舞いということで、マサイ族が非常に恐れている動物でもある。

彼らが恐れるといえば意外なのがカバ。特に川とカバの間に立ち入ったり、船でカバのテリトリーに入ったらまず助からないのだそうだ。一説では動物による死者でもっとも多いのがカバによる犠牲者なのだという。

 

ビッグ5以外にも動物は数多く、キリン、シマウマ、ガゼル、エランド、トピ、ヌー、カバ、ワニ、チーター、ハイエナ、ジャッカルなど、哺乳動物だけで60種を超える。

セレンゲティで生命を感じよう

インパラを食べるチーターの親子。地上最速の健脚を活かして50%といわれる高い成功率を誇る狩りの名手 ©リゾートアンドサファリ

インパラを食べるチーターの親子。地上最速の健脚を活かして50%といわれる高い成功率を誇る狩りの名手 ©リゾートアンドサファリ

命は大切だ。セレンゲティを見ればそんなこと、一目瞭然。どの命も命をつなぐために命をかけている。

マサイキリンの親子。動物たちはこのようにいつも家族ですごす

マサイキリンの親子。動物たちはこのようにいつも家族ですごす

動物たちは基本的に家族やグループで行動する。だから目にするのは多くが家族だ。ゾウもヌーもバッファローも子供を取り囲んで移動しているし、子供たちはしょっちゅう親の身体に触れて自分の位置を知らせながら歩いている。

そんな子供でも襲わないと肉食動物たちは自分たちの子供を育ててはいけない。植物たちは彼らに食べられないと土地を豊かに保っていかれない。そうやって命のつながりがサバンナという生態系を守り、サバンナがまた一つひとつの命を育んでいく。

 

しかしながら現在セレンゲティの多くの野生動物が絶滅の危機に瀕している。たとえばチーターの個体数は5,000~7,000と見積もられているし、チーターのみならずライオンもヒョウもサイもゾウもハイエナもイノシシもシマウマもキリンもIUCN(国際自然保護連合)によって作成されたレッドリストに記載され、絶滅を危惧されている。

絶滅は単に種の消滅を意味するだけでなく、他の動物に絶滅の連鎖を引き起こしてサバンナという環境の破壊につながり、サバンナの破壊は周辺地区の環境をも変え、やがて地球規模の変化へと移行する。同時に、他の地域の環境破壊がもたらした地球環境の変化がサバンナに影響し、こうして自然環境はそれぞれが影響を与え合いながら予測できない形で書き換えられていく。
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