夕陽に輝くシルクロードのバラ パルミラ
夕陽がもっとも美しい遺跡はどこか? そう聞かれたら私は「パルミラ」と答えたい。パルミラは、シルクロードの荒野を渡る商人たちがそのあまりの美しさに「バラの街」とたたえた都市国家。没落から1,700年を経た現在でもその美貌は変わらず、世界でもっとも美しい廃墟のひとつといわれている。今回はシリアの世界遺産「パルミラの遺跡」を紹介しよう。
砂漠にたたずむパルミラの遺跡
居住地区と神殿地区を分ける十字路に立つテトラピュロン(四面門)。エジプトの花崗岩で造られている ©牧哲雄
アラブ城砦から見たパルミラ全景。遺跡の周囲をヤシの林が取り囲んでいる。商人たちはこの景色を目指して死の砂漠を渡った
「パルミラ?」。そう叫びながらバスを飛び降りて遺跡を眺める。広大な砂漠の中に緑が広がり、そのまん中で無数の柱が夕陽を受けて赤く浮かび上がっている。強い風が砂を巻き上げるのか、太陽は黄色くゆがみ、彼方に続く柱の向こうは蜃気楼のように霞んで見える。