フォンニャ-ケバン国立公園の誕生とその特徴
本当に美しいティエンドゥオン洞窟の鍾乳石。直線と曲線が織りなす繊細かつ大胆な造形は現代美術を思い起こさせる
見事なつらら石。条件によるが、1cm伸びるのに50年ほどを要するという
やがて土地が隆起すると、陸となった石灰層に雨が降り、川が流れる。石灰岩の特徴は、水を通しやすく溶けやすいこと。川底が削られて谷となり、雨に削られて複雑な地形ができあがる。
地中では浸透した水が穴を穿って洞窟を掘る。洞窟の天井からポタリポタリと落ちる水から溶けた石灰が固まってつらら石となり、一方落ちた水滴の石灰が盛り上がって石筍(せきじゅん)ができる。この両者がつながったものを石柱という。こうして数千万年をかけて鍾乳洞を彩っていく。
これまで園内で発見された洞窟は300以上。2009年に約50の洞窟が発見され、2012年にも40以上の洞窟が見つかった。まだまだ多くの未発見洞窟があるものと思われる。
カーテンと呼ばれる膜状鍾乳石。乾燥しており、完全に岩となっている。フォンニャ洞窟にて
この地は2000年に国立公園に指定され、2003年に重要な地形を評価した登録基準(viii)が適用されて世界遺産リストに登録された。2015年には46%の登録範囲の拡大とともに、生物の進化史における重要な見本である登録基準(ix)、および絶滅危惧種などの重要な生息地を評価した登録基準(x)が適用されて、拡大登録された。
フォンニャ-ケバンの象徴、フォンニャ洞窟(ウェット・ケイブ)
信じがたい造形を見せるフォンニャ洞窟。最大で高さ83mに及ぶ。他の洞窟が公開される2010年以前、フォンニャ-ケバン国立公園の洞窟観光といえばこことティエンソン洞窟に限られていた
下がフォンニャ洞窟。右に点在するお堂のような建物がティエンソン洞窟の祠群
ソン川の支流が山を削ってできた洞窟で、川は地下河川となって7.7kmにわたって山を貫いている。メインの洞窟の周囲には13の小洞窟が接続しており、そうした小洞窟を合わせると全長は44.5kmに及ぶ。
フォンニャ洞窟の石灰棚
観光客は、フォンニャの町から竜の絵が描かれたドラゴンボートに乗って洞窟を訪れる。ボートは入口から1~1.5kmほどまで進入し、途中にあるビーチに上陸して散策を行う。大規模なつらら石や石筍・石柱があちらこちらに散在している。
こうした一般的なツアーの他に、4.5km地点までカヤックで進入する探検ツアーも催行されている。