前回に続き、「山滴る、甘党市2015」のリポートです。今回は、実行委員の内田美奈子さんと西川葵さんの活動を中心にご紹介します。
 

「日菓(にっか)」と「御菓子丸(おかしまる)」(京都・紫野)

赤い糸

日菓「赤い糸」360円(税込)。山の芋を使った薯蕷(じょうよ)きんとん

京都の和菓子作家「日菓」。実行委員の内田美奈子さんと杉山早陽子さんによるユニットです。

和菓子店に勤めていた杉山さんと、和菓子職人を目指し京都に移り住んだ内田さんが出会い、2006年から「日菓」としての活動をスタートしました。展覧会での作品の発表やワークショップを開催するなどし、他分野の作家やアーティストとのコラボレーションも数多く経験。

バックグラウンドは異なりますが、豊かな感性と表現力、「和菓子で何ができるか」「一瞬を楽しむ」等目指すところなどに共通点があるためでしょうか、東京の「wagashi asobi」のお2人と共に、新しい和菓子の表現者としてメディア等でも注目を集めてきました。
枕もち「夏」

日菓「枕もち『夏』」360円(税込)。白小豆餡をういろうで包む


甘党市には「やぎさんゆうびん」と「水切り」の2種類の干菓子と、きんとん製「赤い糸」、羊羹製「3時」、こなし製「富士波」、ういろう製「枕もち『夏』」の4品の生菓子を出品。

いずれも可愛らしくて面白い。意匠(意匠)にも菓銘(菓子の名)にも、「今の日常」を落とし込んでいるので、今を生きる私たちにとって、分かり易く腑に落ちるのでしょう。
琥珀の実

「琥珀(こはく)の実」


「日菓」の隣で実っていたのは、杉山さんのソロ活動「御菓子丸」の「琥珀の実(こはくのみ)」。「日菓」の日常に寄り添った可愛らしさとは違う、自然界にあるものを切り取ってきたかのような野趣ある装いと、洗練のバランスが印象的で惹きつけられました。

菓子楊枝の材料「黒文字」の枝に、寒天と砂糖で作る「琥珀(こはく)」を刺した「琥珀の実」。「菓子とは元々果物や木の実のことでした。そこからヒントを得て、木に実る果物が、そのまま化石になったというイメージで作りました」と杉山さん。
御菓子丸

御菓子丸「琥珀(こはく)の実」1カット150円


好みの実を枝ごとパキンと切るのはお客さん。私も切らせていただきましたが、楽しい! さらに黒文字の切り口が爽やかに香るという、嬉しいおまけまで付いてきました。口に含むと琥珀はどこか涼やかで、甘夏が爽やかに香りました。

大学時代は写真部に所属していたという杉山さん。「写真は残るけれど、和菓子は食べれば消える」消えゆくものならば「瞬間」を楽しんでもらおうとこのような趣向にしたのだそう。見て、切って、食べる。全ての瞬間に楽しみがありました。

<店舗情報>
■「日菓
工房所在地:京都市北区紫野東藤ノ森町11-1
地図:「日菓」  
※工房では「月一日菓店」や受注販売の受け渡しを行う

「うめぞのCAFE & GALLERY」(京都・烏丸)

キウイの羊羹

「キウイ羊羹」


今回の甘党市の発案者であり、京都の茶屋「梅園」の3代目であり、抹茶ホットケーキなどが人気の「うめぞのCAFE & GALLERY」の店長でもある西川葵さんは、甘党市ではカフェを担当。

ひと息つこうと、いただいた「キウイ羊羹」は、瑞々しく涼やか。

大葉のクッキー

「大葉のクッキー」

見るからに体が喜びそうな「大葉のクッキー」は、ハッとするほど鮮やかな大葉の香りに夏の訪れを感じます。

西川さんの優しげな雰囲気と重なるホッとするようなお菓子の数々。お店の居心地もさぞ良いのだろうなあと思いを馳せました。
大葉のクッキー

「大葉のクッキー」


実行委員として準備から忙しく動いてきた西川さん。和菓子に関わる多くの人との交流も生まれ、様々な話をする中で、多くの学びがあったそう。和菓子の世界はここから一層広がっていくのでしょうか。

<店舗情報>
■「うめぞのCAFE & GALLERY
所在地:京都府 京都市中京区不動町180
Tel:075-241-0577
営業時間:11:30~19:00(L.O.18:30)
定休日:なし
地図:「うめぞのCAFE & GALLERY」  


山滴る、甘党市2015

同じく実行委員の松永大地さんにも甘党市後の感想をいただきました。「なにより作り手の人たちが面白くて、かっこいいということが改めてわかりました」。

また、イベント名に俳句の夏の季語「山滴る」を付けたのは、今回の取材で大変お世話になった同じく実行委員の大久保加津美さんです。「俳句と和菓子は世界観に通じるところがあると思い付けました。春は山笑ふ。秋は山粧ふ(やまよそう)。冬は山眠る。甘党市を開催する機会に再び恵まれたら、どの表現を使うことになるのでしょうね」と何だかとても楽しそう。

甘党市

「山滴る、甘党市2015」


駆け足で、その場にご店主がいらしたお店にインタビューをさせていただきましたが、ほかにも東京・台東区の「菓子屋ここのつ」、京都・円町のかりんとう屋さん「あめんぼ堂」、「和菓子になったテキスタイルデザイン」で知られる京都の「亀屋良長×SOU・SOU」、京飴の「Crochetクロッシェ」、金沢で米粉100%のお菓子をつくる「甘味こしらえ しおや」、和菓子ワークショップの「和菓子サロン一祥」が参加。

今回取材した方たちの活躍で、「和菓子はおもしろい、楽しい。」と感じる人が増え、和菓子を食べる人はもちろん、作る人が増えることにもつながればと願います。和菓子は修行を重ねた和菓子職人さんが作るものだけではなく、おばあちゃんの手作りおはぎも、炙った干し芋も、焼いた餅にきなこをまぶした安倍川もちも、全て和菓子です。

家庭で作る人、和菓子作家として表現する人、自分らしい和菓子のお店を展開する人、和菓子店で勤める人。作り手の層が広がることにより、和菓子に興味を持つ人も増え、それはきっと和菓子の文化を守り伝えていくことにも繋がっていくと思うのです。

「山滴る、甘党市2015HP」

<前回の記事>
「今」を映す和菓子の集い。「山滴る、甘党市2015」

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