“地方企業に就職した学生の奨学金の返済を免除する”という政府の新たな取り組みがいま注目を浴びています。

2016年度からの導入となる新制度が作られる背景には、地方から都会への人口流出に歯止めをかけ、地方大学が地元企業や自治体と協力して地域振興を図るという大きな目的があります。

まずは、奨学金の返済を免除する新制度の基本的な内容を整理します。

自治体と地元企業が奨学金返済支援基金を創設

「奨学金を活用した大学生等の地方定着の促進」と題された、新制度の枠組みは以下のようです。
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<図1>奨学金を活用した大学生等の地方定着の促進

【1】自治体と地元産業界で基金を創設
【2】国が基金の1/2を補助
【3】日本学生支援機構は第一種奨学金の「地方創生」優先枠を設ける
【4】都道府県それぞれが100名を推薦する(全国計 4,700名)
【5】基金が設ける要件を満たした奨学生の返済の一部または全額を肩代わりする

対象者の要件は、地方自治体と地元産業界が話し合って決めることとなっていますが、「特定分野の学位や資格の取得」「地元の産業分野や振興に係る企業への就職」などが前提とされています。

ポイントは、国から1/2の助成があるとはいえ、自治体と地元産業界が対象者の要件を決めることだと思います。

これまでの地方振興といえば、安易な箱モノ作りが多く、結果的に多額の税金を無駄にしただけでなく、将来の若者にツケまで残しています。

今回は、箱モノではなく“人材というソフト”です。

しかも、自治体それぞれが、ある意味自由に対象要件を設けることになるので、要件内容と数年後の結果を見れば、自治体の本気度や能力が明らかになるとも言えます。

返済免除となるのはいくら位か?

支援内容は、第一種奨学金の「地方創生」枠に採用された学生の全額または一部を免除となっています。

基金では一人あたりの奨学金貸付額の目安を400万円としていますが、大学生の場合はいくら位になるのでしょうか。
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<図2>第一種奨学金の貸与月額

第一種奨学金は、大学種別、通学環境により金額が異なるので、ここでは国公立の自宅生と私立の自宅外生で計算してみます。

<国公立大学・自宅生>
貸与月額 45,000円×12ヶ月×4年=2,160,000円
<私立大学・自宅外生>
貸与月額 64,000円×12ヵ月×4年=3,072,000円

奨学金の返済負担が問題になっているなか、確かにこの金額は大きな魅力です。