雨の日はうつ傾向に? 物事を深く考えすぎない方がよい梅雨
梅雨時はネガティブ思考に陥りやすく、憂うつが加速しやすいもの。上手に気分をコントロールしていくコツはあるのでしょうか?
梅雨の季節ならではの認知の傾向を知るヒントに、「気分一致効果」という言葉があります。気分一致効果とは、よい気分のときには物事をポジティブに評価しやすく、悪い気分のときにはネガティブに評価しやすい効果を意味します。
雨の日が多くジメジメとした梅雨時は、「嫌な天気だな」というネガティブな気持ちになりがち。ネガティブな状態では、天気とは関係のない他の物事の捉え方もネガティブ傾向になりやすく、何でもないことも悪い方向へ、悪い方向へと考えてしまいがちになります。
したがって、梅雨の天気の悪い日には、物事をあまり深く難しく考えすぎない方がよいのです。相手からの返信が遅れただけでも「私のことが嫌いなのかしら?」、仕事がなかなか終わらないと「俺は仕事ができないのかも」……というように、どんどん悪い方向に考えてしまう可能性があるからです。
「悲しい話」を夜にしてはいけないのも気分一致効果が理由
梅雨の話題から少しずれますが、「気分一致効果」を象徴する興味深いエピソードをお話しましょう。漫才師の島田洋七さんは以前ヒットした著書『佐賀のがばいばあちゃん』(徳間文庫)で、祖母のサノさんが幼い頃の洋七さんに語ってくれた「悲しい話は夜するな。つらい話も昼すれば何ということもない」という言葉を紹介しています。当時、育ち盛りの洋七さんを育てていたサノさんは、その日の夕食にも困るほど貧しさの中で生活していたそうです。「明日の米もないのに、この子をどう育てていけばいいのか」と、頭を抱える毎日であったろうと想像します。
そんな生活の中でサノさんがつぶやいたのが、上の言葉です。暗闇の中で物事を考えても、何にもならない。おてんとうさまの下で考えれば、また違う考えが浮かぶだろう……。サノさんは、そんな思いでこの言葉を語ったのではないでしょうか。戦中戦後の激動期を生き抜いた人が、体験の中から紡ぎ出した「気分一致効果」を伝える知恵の言葉です。
それでは次に、梅雨の日のうつ気分を解消するために効果的な、簡単にできる憂うつ解消法をご紹介しましょう。
梅雨時の憂うつ解消には「同質の原理」で静かな曲が効果的!?
気候と音楽のフィッティングは大切
実は、気分を変えるために気分に合わない音楽を選ぶと、逆にストレスが溜まる可能性があります。聴く人の気分に合わせた音楽を選ぶこと、これは「同質の原理」と呼ばれる音楽療法の基本です。
アップテンポのリズミカルな音楽は、気持ちのよい晴天の日に聴けば、さらに気分が向上し、ハッピーな気分に浸れることでしょう。しかし梅雨の気分が沈みやすい日には、スローテンポなやわらかい楽曲が気持ちにフィットするはずです。憂うつを払しょくするために、無理に明るい音楽を選ぶのはよくありません。まずは気持ちが慰められるようなスローな曲をかけ、徐々に気分が良くなってきたら、少しずつ明るめの曲にシフトさせていくとよいのです。
逆に、暗いムードの曲ばかりを聴き続けるのは、陰鬱な気分を深めてしまい、逆効果です。恋人を失った女性の心情を歌うハンガリーのポピュラーソングに、『暗い日曜日』という曲があります。絶望して日曜日の朝に死ぬことを考える曲ですが、この曲に共感した人々の自殺が社会問題となり、「自殺の聖歌」と呼ばれたこともあるほどです。
音楽は気分を慰めることもあれば、思いがけない影響を与えることもあります。梅雨の季節には、憂うつになりがちなデリケートな気分をケアできるよう、上手な選曲を心がけてメンタルケアをしていきましょう。