2012年に大好評を博した『音のいない世界で』のキャストが再び集結した本作。2年半ぶりの共演となりますが、当時から第二弾をつくろうという話は出ていたのでしょうか?
近藤>長塚さんも松さんも首藤さんも、もともと知ってはいたけれど、舞台を一緒につくったのは前回が初めて。たった4人で、子供のために、と謳ってはいても、創作現場では子供向けであることを常に意識してた訳じゃない。ただ絵本のようで、親しみの持てる内容だったので、そういう作品を提供するのもいいなってすごく思いました。本当に子供にとってわかりやすかったかどうかはわからないけど、そういう心がけはあった。そこに対してお客様が反応してくれているのは感じられたし、嬉しかったですね。
タイミングが合えばまた一緒にやろうという話は前回の時からしていました。4人の関係性がすごくいい距離感だったので、今回もすんなり入れた気がします。僕自身普段はダンスに時間を使うことが多いし、松さんに子供が産まれたり、2年半という時間は経ったけど、いろいろな意味でちょうどいい間隔だったと思います。
2012年「音のいない世界で」 撮影:谷古宇正彦
台本は長塚さんの書き下ろしですね。最初に台本を読んだときの印象をお聞かせください。
近藤>この台本がまたよくわからない(笑)。変わった台本だし、これを言葉で説明するのはかなり難しい。テーマは「鏡」なんだけど、要はその概念がややこしいんです。こちらが右手を上げると鏡の世界では左手が上がる、というようなことを視角化してるお芝居です。ト書きがすごく多いんだけど、それを一行一行表現してください、ということではなくて、こっち側とあっち側にこれこれこういう世界がありますよ、ということが書かれてる。ト書きがたった3行だとしても、その部分の動きをつくっていると、それだけで3時間かかったりする。可能性がいっぱい詰め込まれている台本です。
読んでるだけだとよくわからないけど、お話は実はすごく簡単。鏡のこちら側にいるタナカが首藤さんで、鏡の向こう側にいるのが僕が演じるカナタ。そこに長塚さん扮するコイケがやってくる。コイケの鏡のなかの人物がケイコで、松さんが演じています。タナカとカナタ、コイケとケイコは対になっているんだけど、この4人が鏡のあっちへ行ったり、こっちへ来たり……。ややこしくないんだけど、ややこしい。よくそんなへんちょこりんなこと考えますよね(笑)。その辺は長塚さんの世界であり、いい意味で彼の変人ぶりが出てると思う。
あまりにもわからないことが多いので、台本に沿ってアイディアを出して実験を重ね、ある程度まで行ったらまた頭に戻って細かいところを作ってーー、ということをひたすらくり返しています。