定年延長で、60歳以降も働くことが前提の社会に
定年延長になっても、仕事の厳しさは変わらない
70歳以上を含めた高齢者(65歳以上)全体の就業率を見ても、男性が30.9%、女性が15.8%と多くのシニアが元気に働いていることが分かります(平成28年度実績、労働力調査)。
一億総活躍推進本部(自民党)がとりまとめた「一億総活躍社会の構築に向けた提言」(平成29年5月10日)では、65歳までの完全現役の推進がテーマとして掲げられており、「働き方改革実行計画」の65歳までの定年延長、65歳以降の継続雇用を支援していく方針が確認されています。
各企業の状況を見ても、厚生年金の支給開始年齢に合わせ、60歳以降も従業員を引続き雇用することが会社に義務付けられています。ちなみに平成31年3月31日までは62歳までの雇用が義務(62歳から65歳までの継続雇用対象者は基準を設けて限定できる)となっています。
なお昭和36年4月1日以後に生まれた方は、65歳からしか年金が貰えませんので、65歳までは現在の会社で雇用が確保されます。
「使えないシニア」への風当たりは厳しく
定年延長や継続雇用で、60歳以降もとりあえず居場所と生活基盤が確保できたと喜んでいる方も多いと思いますが、世の中、そんなに甘くありません。そもそも定年制度は、生産性が低下した高齢の従業員を強制的に退職させ、若い従業員と入れ替える、つまり組織の新陳代謝のためにあるのです。定年延長等は、組織の新陳代謝の先送りでしかありません。当然ですが、「使えないシニア」への風当たりは厳しくなります。
大企業では、若年者の指導役としてのポストも、継続雇用者の増加によってほぼ埋まり余剰感が高まっています。一方中小企業では、人材不足のため65歳以上まで従業員を継続雇用している会社が半数以上あります。特に熟練技術者は貴重な戦力として、どこの企業も手放そうとはしません。
同じ高齢者でも大企業では余剰感があり、中小企業や熟練技能者では不足感がある。不思議なようですが、これが現実です。ようするに働きたい高齢者と雇いたい企業との間のマッチングがうまくいっていない、ということです。
マクロ経済的には働く人の人口(労働力人口、15歳以上で働く意思と能力を有する者の人口)が減少しており、高年齢者の労働力はますます貴重なものになります。これは中小企業だけでなく、大企業でも同じです。
少なくとも現在50代の方にとっては、会社が求めている人材像にマッチした人材になれれば、60歳以降も充実したキャリアが待っていると思います。
60歳以降も成果を出し続けることが求められる
60歳を過ぎても成果を出し続けることが求められる時代に
厚労省の外郭団体である高齢・障害・求職者雇用支援機構の「高齢者雇用の現状と人事管理の展望」(平成27年)を見ると、経営者や管理職は56.5%の方が「60歳前半の高齢者を正社員として雇用することが望ましい」と考え、82.9%の方が「高齢者を戦力として活用すべきである」と考えています。
しかも、84.4%が「高齢者も人事評価を行うべきである」と考え、その方法も59歳以下の正社員と同じ方法で行うべきという方が半数以上いました。
会社側としては高齢者を雇用はするが、今までと同様に戦力として働いてもらわなければ困る。そのために人事評価も従来通り行うということなのでしょう。
特に注目すべきは高齢者の基本給の決め方について、「仕事の成果」を重視していると答えた方が66.7%、今後は今以上に重視すると答えた方が76.9%と高かった点です。
「職務・仕事内容」が基本給決定で重視されることは当然ですが、ここまで成果を求められているとなると、与えられたポジションで、のんびりとはできません。成果を発揮できる場を、積極的に自分で見つけ出していかなければならないのです。
会社依存体質から抜け出すために、外に目を向けよう
この調査では、現在企業で継続雇用されている高齢者にもアンケートを実施しています。その中の「自らが活躍できる場を、誰が確保すべきか」という質問に対して、「会社が準備すべき」と答えた人が51.9%。「自分で探すべき」は 48.1%でした。半分以上の方が、60歳以降も会社に依存しようと考えているのですね。60歳以降も会社で活躍できる人材になるには、少なくとも会社依存型のマインドセットから抜け出さなければならないでしょう。
そのためには、現在の会社に勤務しながら、同時に社外のNPOなどで働く、積極的に社外活動をするなどして視野を広げ、50代の今から自律的にキャリアを考える習慣を身につけることが望まれます。