輸入車/注目の輸入車試乗レポート

輸入スポーツカーの選び方 自動車評論家が徹底比較(2ページ目)

クラシックスポーツに注目が集まり、国産からもロードスターやS660と“威勢のいい”クルマが登場するに及んで、近年にない活況を見せ始めているスポーツカー。今回は身近で実用的なハッチと2シーターの本格モデルからオススメを紹介します。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド

最も身近な“ホットハッチ”

VWポロGTI

5ナンバーサイズのコンパクトハッチバック、VWポロ。そのスポーツモデルがポロGTI。192psの1.8L直4ターボを搭載、価格は334.2万円

最も身近なスポーツカーとして、国産モデルなら前述したような本格派が存在するけれども、海外ブランドには残念ながらこれといってめぼしいクルマが見当たらない。かつては、ユーノスロードスターの登場に触発されていろんな小型スポーツカーが存在したものだったが。スポーツカー人気にかげりが差しはじめたのは、どうやら日本市場だけではなかったようだ。

その代わり、ヨーロッパの定番ブランドからは、優秀なハッチバックをベースとした、日常生活においても便利に使えてスポーツもできる、いわゆる“ホットハッチ”の素晴らしいモデルがリリースされている。初代ゴルフGTI以降、伝統的に欧州勢の強い分野であり、ある意味、スポーツカー文化の裾野を担ってきた重要なカテゴリーだ。
VWゴルフGTI

セグメントのベンチマークとなるVWゴルフのスポーツグレードがGTI。220psの2L直4ターボを搭載、価格は391万円

大きく分けて、2つのクラスがある。1つはリッターカークラス、いわゆる欧州Bセグメントに属するモデル、もう1つは、ゴルフクラス、いわゆる欧州Cセグメントに属するモデルだ。

BセグのオススメはルーテシアR.S.

アバルト500

現代に復活した名チューナー、アバルト。フィアット500をベースとしたののがこのアバルト500。1.4L直4ターボを搭載、価格は279.72万~361.8万円。ソフトトップをもつコンバーチブルモデルも用意

小さいほうからいこう。理屈抜きに運転の楽しいモデルといえば、アバルト500シリーズである。MT、セミAT、いずれも楽しい。アクセルを踏んで、ハンドルを回して、ブレーキを踏む、という行為のシンプルな組み合わせこそが運転だ! 、と言わんばかりの愉快さだ。初めてドライブすると、誰もが笑顔になる。最近、クルマが楽しくないな、と思うベテランにもオススメできるモデルだ。

もう少し、上質にスポーツフィールを楽しみたいという方には、対極にあるVWポロGTIがいい。どこまでも安定した“過激さ”は、さすがゴルフGTIの弟分といったところで、毎日気兼ねなく使える実用性の高さはノーマルのポロとまるで変わらないという懐の深さも魅力だろう。
ルノールーテシアR.S.

モータースポーツを手がけるルノー・スポールが、モータースポーツで培った技術を注ぎ込んだルノー ルーテシアR.S.(ルノー・スポール)。日常の使い勝手を考慮したシャシー スポール(307.5万円)と、本格スポーツ走行に対応するシャシー カップ(317.8万円)をラインナップ

ベストチョイスには、ルノールーテシアR.S.を推す。実用域はもちろん、スパルタン領域までカバーする。ワインディングロードを自在に走る楽しさを教えてくれるという点で、これに優るハッチバックのスモールスポーツカーは他にない。

本格FRクーペのBMW M235iも選べる

ルノーメガーヌR.S.

メガーヌをベースとしたスポーツモデルがルノー メガーヌR.S.(ルノー・スポール)。265ps/360Nmの2L直4ターボを搭載、価格は396万円

Cセグメントは、どうか。元祖ホットハッチのゴルフGTI最新モデルは、トータルパフォーマンスに優れたモデルである。ノーマルゴルフに輪をかけてとてもCセグとは思えぬ上質な乗り味を有し、ハンドリングレスポンスは常に正確で適切、パワーフィールには適度な過激ささえあって、驚くほど完成度が高い。普段遣いのスポーツカーとして、これほどよくできたモデルはないと思う。

反面、攻め込んだ場面以外でゴルフGTIは、優等生すぎて面白みに欠けるのも事実である。もっとキレキレの走りが欲しいというなら、2ドア(3ドア)モデルしかないけれど、ルノーメガーヌR.S.を勧めたい。ニュルブルクリンクでは“FFポルシェ”の異名を取り、速さ、楽しさ、スパルタンさにおいて、別格の存在だ。アクの強いスタイリングには、スポーツカーらしい派手さもあって、心も踊る。交差点を曲がる瞬間も楽しい、という意味では、心底、スポーツカーである。
BMW M235i

コンパクトクーペの2シリーズにラインナップされるスペシャルモデル“Mパフォーマンス”のM235i。326psの3L直6ターボを搭載、6MT(601万円)と8AT(615万円)を用意した

同じく2ドアで、本格的なFRスポーツクーペを選ぶことも可能だ。BMW M235iである。M+3桁数字のモデルは、Mパフォーマンスモデルといって、ノーマルラインナップのMスポーツとMとの間を埋めるシリーズで、パワートレインのチューニングやシャシーのセットといった基本の性能アップをM社が担った、言ってみればお買い得なMモデルである。

M235iの走りは、今となっては豪華ツアラーの領域に達したM3&M4よりも“キレ味”で優っているとさえ思う。3ペダルMTを選べば、忘れかけていた青春の思い出も蘇るというもの。いかにもFRらしい、素直な回頭性と後輪で蹴飛ばす加速が味わえ、これぞ我らがM3! 、というべき走りをみせてくれるという点で、このクラスのベストチョイスだ。

同じメカニズムをもつハッチバックのM135iも存在する。こちらには3ペダル仕様はなく、クーペよりやや安定志向のドライブフィールだが、実用性重視ならばM135iでもいいだろう。
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