直近のLGBTムーブメント
今年の2月、晴天の霹靂で渋谷区が同性カップルを「結婚に相当する関係」と認める証明書を発行する条例案を区議会に提出して以来、にわかに世間でも同性パートナーの権利や同性婚への注目が高まり、さまざまに動きが活発化してきました。4月から5月にかけての動きを、ここでまとめてご紹介したいと思います。◎LGBT支援法律家ネットワークが同性婚法制化を求め、日弁連に人権救済申し立てを行います
LGBT支援法律家ネットワークは、セクシュアルマイノリティを支援する法律実務家・専門士業の全国ネットワークで、弁護士,行政書士,司法書士,税理士,社会保険労務士など70名以上が参加しています。渋谷区の新条例に関しては、憲法に違反するものではないとする見解を示す要請文を出しています。そんなLGBT支援法律家ネットワークの有志26名が今年の7月、「同性婚ができないのは憲法の法の下の平等に反する」として、日本弁護士連合会(日弁連)に人権救済を申し立てることが発表されました。同性婚の法制化を政府や国会に勧告するよう求めるもので、同性婚に関する憲法判断を問う日本で初めての訴訟も視野に賛同者を募ります。
◎法務省が性的マイノリティをテーマにした人権啓発ビデオを制作しました
法務省が性的マイノリティをテーマにした人権啓発DVDを初めて制作し、4月1日には動画をYouTube上にも公開しました(こちらでご覧いただけます)。根拠となる法律がないことなどから公的機関の対応が遅れがちな同性愛者についても扱い、職場や学校での研修などで役立ててもらうねらいがあるといいます。近年、地方公共団体の人権担当職員が集まる研修で、性的マイノリティの問題について「啓発ビデオがほしい」などの要望が寄せられることが増え、このDVD(動画)を制作することになったそうです。担当者は「教育や人権問題に関わる人はもちろん、一般の方々にも理解してもらうことが重要。ぜひ多くの方に見てほしい」と語っています。
◎電通総研の最新の調査で、日本のセクシュアルマイノリティ人口が全体の7.6%と算出されました
「日本のLGBTは全体の5.2%」という数字を記憶している方も多いと思います。これは2012年に電通ダイバーシティ・ラボが行った調査によるものですが、今年の4月、同様の調査が実施され、全人口の7.6%と算出されました。前回の調査からパーセンテージが上がったのは「前回調査からの3年間で、アップルのティム・クックCEOら、社会的影響力のある人がカミングアウトしたり、渋谷区の同性パートナーシップ条例が制定されたり、情報に触れることが多くなった。これまで違和感を持ったまま生きていた人が、気づくきっかけになった」からだとされています。
◎文科省が初めてLGBTの子どもへの配慮を求めるよう全国の学校に通知
文部科学省は4月30日、性的マイノリティ(LGBT)の子どもへの配慮を求める通知を全国の国公私立の小中高校などに出しました。これまでは法律上の定義がある性同一性障害者に限られていましたが、同性愛などについても国として学校に対応を求めたのは初めてです。今回の通知では、LGBTの児童生徒への対応について初めて言及。子どもが相談しやすくするために、教員の性的マイノリティについての心ない言動を慎むことや、子どもの服装や髪形を否定したりからかったりしないよう明記しました。また、校側は原則として児童生徒の事情に応じた対応をすべきだとして、複数の教員や教育委員会、医療機関と連携して対応するよう求め、サポートチームの設置などを推奨しました。
◎LGBT法連合会が、国や自治体に差別禁止と支援を義務付ける法律の私案を発表しました
「LGBT法連合会」が5月19日、都内で会見を開き、LGBTへの差別を禁止し、差別を受けた人への支援を国や自治体に義務付ける「LGBT差別禁止法」の考え方(私案)を発表しました。学校や職場、医療現場などあらゆる分野でLGBTへの直接的、間接的な差別やハラスメントをなくすための基本方針を政府が定め、各自治体が基本計画を策定するよう求めるものです。同会の永野靖弁護士(日本で初めてゲイであることをカミングアウトした弁護士さんです)は「性的指向や性自認は自ら選べず、変えられない。法的根拠が差別解消への後押しになる」と語りました。今後、同会は、LGBTへの差別をなくすための法的課題を検討している超党派の国会議員連盟に私案を提出し、制定を働きかける予定だそうです。
いかがでしょう? どれもエポックメイキングなニュースですが、約1ヵ月半の短期間にこれだけのことが動くなんて…スゴいと思いませんか? 尾辻かな子さんがパレードのスピーチで「これからの10年は司法と立法の10年になる」とおっしゃっていましたが、本当にそうなんだろうなぁと思います。今後もこういうニュースを毎月紹介していけたらと思います。