「虎屋文庫資料展」
東京・赤坂の「虎屋」本社ビルで、42年間、77回にわたり開催されてきた「虎屋文庫資料展」。2015年秋からの本社ビル建替えに伴う、虎屋ギャラリーの約3年間のお休みを前に、感謝を込めた大回顧展「虎屋文庫のお菓子な展示77」を開催中です(~2015/6/16)。展示に携わる人たちの静かなる情熱にも注目です。「虎屋文庫」とは
東京・赤坂に本社を置く「虎屋」。室町時代後期に京都で創業した和菓子店のほか、「とらやパリ店」(仏・パリ)、「TORAYA CAFÉ(トラヤカフェ)」(表参道・六本木・青山)、「とらや工房」(御殿場)などを展開し、様々な切り口で和菓子文化を広めてきました。和菓子文化を伝え、創造することにも力を注いできた虎屋で、その大きな一翼を担うのが、1973年に創設された「虎屋文庫」。在籍する7名は、いわば和菓子文化の専門職。虎屋に伝わる史資料の保管・調査研究に加え、機関誌や展示を通じて和菓子の情報を発信しています。
休館前の特別企画「虎屋文庫のお菓子な展示77」の見どころは?
42年間、年1~2回開催されてきた虎屋文庫の企画展「虎屋文庫資料展」。現在、休館前の特別企画「虎屋文庫のお菓子な展示77」(~2015/6/16)が開催されています。多彩な展示のうち、あえて見どころを挙げるなら、何度も回を重ねた大人気の2つのテーマ、「歴史上の人物と和菓子」と「源氏物語と和菓子」に関するもの。
過去3回開催された「歴史上の人物と和菓子」展から、ぜひ見ておきたいのは、琳派の絵師として知られる「尾形光琳(おがたこうりん)」が虎屋へ注文したお菓子、「色木の実(いろこのみ)」と「友千鳥」。くちなしや小豆を使用し、秋に色づく葉を表現した「色木の実」は愛らしい雰囲気。
優れたデザイナーでもあった光琳が和菓子へ与えた影響は大きく、光琳がデザイン化した「光琳菊」や「光琳梅」などの意匠は、現在の和菓子にも生きています。
虎屋のホームページでも紹介されている「歴史上の人物と和菓子」の話は、書籍化の予定もあるそうで楽しみです。
過去に5回も開催された「源氏物語と和菓子」展の見どころは、故・片野孝志氏の料紙(和紙をつなぎ合わせた装飾的な紙)と、『源氏物語』54帖の様々な場面を表現したお菓子を組み合わせた展示。ため息がでるような美しい世界観が表現されています。
過去77回の展示のハイライトが絵巻のように広がる会場で、ひときわ目を引くのは珍しい和菓子の数々。レプリカと間違えられることも多いそうですが、基本的にどれも本物です。
会場では、展示菓子を作る職人さんや虎屋文庫の皆さんの声が紹介されており、現場の方々が企画展へ注いできた愛情と情熱がヒシヒシと伝わってきます。
限定販売の生菓子に注目!
毎回販売されてきた、展示テーマに合わせた限定菓子は来館者の大きな楽しみ。今回の限定菓子は、第64回の企画展で好評を博した「招福袋(しょうふくぶくろ)」と「宝来袋(ほうらいぶくろ)」の2種類です。外郎生地で、それぞれピンクの餡と生姜が香る白餡を包んでいて、とろけるように滑らかな口当りです。長年通っているファンも多いという「虎屋文庫資料展」。かくいう私も20年近く楽しみに通ってきたので、3年の休館は長く寂しく感じられます。
本社ビルの完成が予定される3年後、2018年の企画展については今のところ未定。ただ、その3年の間も虎屋文庫の活動は続き、通常通り電話やFaxなどでの問い合わせには対応できるそうなのでご安心を。
3年後、パワーアップして戻ってくるであろう「虎屋文庫資料展」。楽しみに待ちたいと思います。
<展示詳細>
■ 「とらや」
第78回虎屋文庫資料展
休館前の特別企画「虎屋文庫のお菓子な展示77」※常設展なし。
開催日時:2015年5月20日~6月16日 10:00~17:30
※会期中無休
開催場所:東京都港区赤坂4-9-22 2階「虎屋ギャラリー」
東京メトロ 銀座線・丸の内線 「赤坂見附」駅A出口より徒歩7分
電話: 03-3408-2402(平日9:00~17:30)
FAX:03-3408-4561
※1階「とらや 赤坂本店」(直営店)、地下1階「虎屋菓寮 赤坂本店」は、
2015年9月30日をもってビルの建替えに伴うお休みに入ります。