シンプルな製茶にも知恵と技術が結集
摘んできた新芽は、すぐに蒸して乾燥させます。この工程も気候や新芽の状態により微妙に調節されます。
(画像提供/孫右ヱ門)
その後、茶を刻み、選別機で葉柄、なんと葉脈までを取り除いて、純粋に葉の部分だけにして碾茶となります。
揉む過程の入る玉露や煎茶と比べると、製法は一見シンプルなようですが、蒸し機の角度や散茶機の羽の回転数が少し変わるだけでも、香りや味など、仕上がり状態は変わってしまうそうです。気温や、その年の茶葉の状態に応じて、微妙な加減をコントロールされています。
蒸された後の茶葉を風で乾燥させる散茶機。茶葉が折れず、またムラなく乾燥できるように、風の送り具合をコントロールしています。
その後ようやく石臼で挽いて抹茶となります。「100gの茶葉が様々な工程を経て、仕上がった碾茶はわずか5gになってしまいます。茶摘み・製茶・茶選りと、どの過程においても、一年間大切に育ててきた茶葉をどうしたら100%生かし切ることができるかを、常に考えています」と語る太田さん。
以前孫右ヱ門本簀製法抹茶をいただいたことがありますが、旨味と甘みはもちろん高貴な香りで、すべてが調和し角のない風味。まさに「ま~るい」という表現がぴったり。長年茶道の稽古を続けているガイドも、初めて口にした驚きの風味でした。
古い葉や色の悪い葉を選別する「茶選り」の工程も、孫右ヱ門では人が丁寧に行っています。
(画像提供/孫右ヱ門)
またそれだけ凝縮しているからこそ抹茶は、おいしい飲み物としてだけでなく、じっくり味わう時空間を作り出す「茶文化」を育み、現代では健康面においても様々な作用に期待が集まっているのだと思います。
優れたクオリティに定評があり、全国品評会で上位を占める孫右ヱ門の本簾製法による抹茶は、旨みが凝縮されています。
(画像提供/孫右ヱ門)
私たち消費者も、たんなる抹茶ブームとして受け止めるだけでなく、その魅力を支えている人たちの存在に思いを馳せて、一碗を大切に味わいたいと思います。
取材協力/京抹茶 孫右ヱ門
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・各種機能性成分を有した各種国産農水産物「茶」 (食品産業センター)
『お抹茶のすべて』誠文堂新光社
『抹茶の研究』
『緑茶の事典』(柴田書店)
その他