労務管理/労務管理に関する法律

会社員の有給休暇取得の仕組み、どう変わる?

有給休暇(年休)の取得を促進させる策として、付与された年休のうち5日分の取得するタイミングの指定を会社側に義務づける、という法改正が国会で審議されようとしています。具体的にはどんな内容なのか、サラリーマンにどんなメリットやデメリットがあるのか、関心があるところです。詳しく見てみましょう。

本田 和盛

執筆者:本田 和盛

企業の人材採用ガイド

「有給休暇の時季指定」って何?どう変わる?

年休の取得促進が期待される

年休の取得促進が期待される

現在国会では、「年休(年次有給休暇)の取得時季の指定を使用者に義務付ける改正労働基準法の審議」が始まろうとしています。ご存知でしたか?有給休暇は、サラリーマンの権利の代表格。無関心ではいられませんね。

具体的には、会社員に付与された有休日数のうち5日分について、個人別の取得時季を使用者が指定しなければならないというものです。なお、もともと手持ちの有給休暇が少ない労働者もいるので、年休日数が10日以上の労働者だけが時季指定義務の対象です。

また会社に時季指定義務がある5日分についても、会社員が自分の意思で取得した年休や会社の計画年休制度で取得済みの日数については除くことになっていますので、実際に会社が指定する日数は5日より少なくなります。

有休は、本来であれば、労働者が「この日に取得したい」と取得時季を指定して取得するものです。会社側がかってに取得時季を指定して、「この日に休め」という性質のものではありません。なお「時季」という言葉を使うのは、江戸時代に奉公人が休みを貰って実家に帰る場合に、「日」ではなく「季節」を指定して休暇を取得していたことの名残です。
 

取得時季を会社員ではなく会社側が指定する意味

有休を取って旅行に行ったり、数日間まったりと温泉にでも浸かっていたい。そんな願望とは裏腹に、働く人の有休取得は進んでいません。国の統計資料(平成26年就労条件総合調査)で確認しても、有休の取得率はたったの48.8%。付与された年休の半分以上が、未消化のまま時効消滅してしまっているのです。もったいないですね!

有休を取得する時季を決めるのは、本来は労働者なのですが、労働者に任せていても有休の取得が進まないので、使用者に取得時季を指定させようというのが、今回の法改正の趣旨です。少し専門的になりますが、有休を取得する時季を労働者が指定する権利を時季指定権と言います。

また労働者が指定した時季に有休を与えることで、事業運営に支障が出る場合、会社側は取得日を変更するように要請することができます。これを時季変更権といいます。今回の法改正は、この時季指定権が見かけ上無くなるという点で、少し違和感があります。そのため、有休の取得時季を使用者が指定する際に、労働者の意見を聴取することや、できるだけその意見を尊重するよう規制が講じられる予定です。

有休は、正社員だけでなくパートや契約社員、アルバイトにも、週の出勤日数に応じて付与されます。また有休の付与日数は、勤続年数が長くなるにつれて増加し、最高で年20日分付与されます。有休を付与される権利は、半年間継続勤務し、定められた出勤日数の8割以上出勤すれば当然に発生します。

たとえば4月1日入社の新入社員であれば、半年後の10月1日に、10日分の年休が与えられます。週2日勤務のパートでも、働き始めて半年後には2日間の有休が付与されます。

今回の法改正は休暇の取得を促進し、働く者が健康で文化的な生活を送れるようにすることが目的です。長時間残業などで、ワーク・ライフ・バランスが保てなくなっている現状を少しでも変えるきっかけになればと思います。

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