- 外車クーペの選び方:コンパクトクラスは本格派が充実
- 外車クーペの選び方:ミドルクラスがスタンダード
- 外車クーペの選び方:“人と違う”ハイスペックスポーツモデル
- 外車クーペの選び方:本命は、「ポルシェ911」
- 外車クーペの選び方:世界で最も贅沢な乗り物「ハイエンドクーペ」
外車クーペの選び方:ポイントは、見た目の格好良さ̟と〇〇...!?
昔、2ドアクーペは格好いいクルマの代名詞だった。クルマ好きでなくても、クーペに憧れた。2ドアであることを発見しただけで、格好いいと条件反射で思う人も多かったほどだ。
“背の低いクルマ”のピラミッドが大小(=クラス)たくさんあった時代、フツウのセダンの裾野が広く、その上に、スポーツモデルや輸入車、高級仕様があって、頂点にクーペモデルが君臨していた。
格好いいけれども、ドアが2枚で後席は狭く不便。だからこそ、憧れの的だったのである。クーペに乗るということは、そういう不便な勝手を超越する何か、たとえば複数台持ちの経済力、を暗に訴えてもいたわけで、それゆえ、クーペを持つことはステータスなりえた。本当は我慢してクーペ1台でも、涼しい顔をしていれば、豊かに見えた時代だったのだ。
もうひとつ、世の中には今と違って3ボックスの実用セダンが溢れていた。カローラ&サニーからクラウン&セドグロまで、大小さまざまなセダンが、現在のミニバンや軽トールワゴンのようなフツウさで、街を走っていた。
だから、人とは違うクルマとしてのクーペの存在感は格別だったのだ。同じように見えて違うことにこそ、人は価値を認めるもの。昔はセダン派生のクーペが多かったのも、それが理由だ。クラウンやセドリックにも2ドアハードトップクーペがあったのだから!
ヨーロッパやアメリカのように、セダンがまだ、乗用車のデフォルトとして根強く売れている市場では、クーペがまだ頑張っている。逆にいうと、国産ではほぼ絶滅危惧種であるから、クーペ好きは必然、輸入車にまでターゲットを拡げざるを得ない状況だ。
というわけなので、日本のクーペ市場は今、輸入車天国であった。
では、クーペとはどういうクルマか。簡単におさらいをしておこう。まず、ドア数は2枚である。最近、ルーフラインもなだらかにクーペフォルムを謳う4ドアも増えたが、ここではその手の4ドアクーペを省く。あくまでも2ドアである。
座席数は4、もしくは5座。2シーターはクーペというよりスポーツカーの類いである。性能的にはベースとなったセダンに準じるか、もしくはもう少しハイスペックで、いわゆるGT(グランドツーリングカー)的キャラクターが濃い。
そして、なんといってもスタイリングである。ドアを2枚にするだけで、こうも雰囲気が変わるものか、というくらい、セダンとは違ってみえる。その昔は、前後のデザインなどほとんどセダンと一緒でドア数を減らしルーフラインをなだらかにしただけのクーペも多かった(今はほとんどない)が、それでも存在は一際目立っていた。印象が変わることはもちろん、クーペへの憧憬という見る者の心の影響も、そこには多分にあったと思う。 日本におけるクーペのあらましを復習してもらったところで、今、実際に買える輸入クーペのなかから、クラスごとにオススメを挙げておこう。基本は、“格好が好きなら買いなさい”なのだけれども、それじゃ背中を押すことにもならないので、パフォーマンスやキャラクターについて筆者なりに補足解説を試みた。
外車クーペの選び方:コンパクトクラスは本格派が充実
小さなクーペのことを特に、アメリカ市場では“セクレタリィクーペ”、などと呼ぶ。訳して、秘書用クーペ。つまり、インテリジェントな女性のプライベートカーというほどの意味だ。
以前は日本車にも、たとえばサニーやカローラのクーペのようなセクレタリィクーペというべき存在があった。けれども、今やクーペ自体が貴重な存在であって、どちらかというとやっつけ仕事的なセクレタリィクーペなど作っている余裕はメーカー側にもない。
というわけなので、今やコンパクトクラスのクーペはというと、スポーツカー入門編のような本格派が多くなった。要するに、ある程度の実用性をキープしたうえで、本格的なクーペを作っている。これなら、エンプティネスト派にも受け入れ易いし、憧れのクーペを手に入れる現実的なチョイスにもなりえる。当然、クーペ全体のなかで、最も人気のあるクラスである。
コブのようなダブルバブルルーフやA~Cピラーを一体化させたアルミナムアーチなど、個性的なエクステリアのプジョーRCZ。1.6Lターボを搭載、ATは156ps(425万円)、MTは200ps(451万円)と変化をもたせた
格好で選ぶのがクーペ、という基本に立ち戻れば、注目すべきはプジョーRCZであろう。クーペデザインの命はルーフライン=背中の美しさだったりするものだが、RCZのそれはユニークでかつ美しい。ダブルバブルがルーフのみならずリアウィンドウにまで延長されており、スーパーカー級のスタイルだ。お金も掛かっている。
走りも、なかなか本格派だ。攻め込むと操って楽しい感がにじみ出てくる。GT性能も高く、長距離移動も苦にしない。
おそらく、もうすぐ生産も終わることだろう。次期型があるのかどうか、あってもここまで個性的になれるかどうか、それも分からない。今のうちに買っておくべき、長く乗れる1台であることは間違いない。
格好よりも走りを重視する向きには、クラス唯一のFRモデルであるBMW2シリーズの、M235iを狙ってほしい。3ペダルMTの走りは、それこそ昔憧れたM3そのもの。筆者などはM235iに乗ったとき、20年前に初めて操ったM3クーペを思い出した。
RCZほど凝ったデザインでなくていい。走りも2シリーズほどファンでなくていい。いずれも高レベルだけど突出しないクーペ選びというなら、アウディTTだろう。すでに第3世代もデビューしたが、日本市場へは、いまだ本格導入されていない。シルエットは完全キープコンセプトなので、購入条件さえ良ければ第2世代を手に入れるという手もある。
本命:プジョーRCZ
対抗:BMW2シリーズ
大穴:アウディTT
外車クーペの選び方:ミドルクラスがスタンダード
アウディの4シータークーペとしては11年ぶりに登場したA5。2Lの2.0TFSIクワトロ(634万円)に加え、ハイパフォーマンスバージョンのS5(938万円)、“究極”のRS5(1375万円)をラインナップ
ここは、クーペの言わばスタンダードクラスである。ある程度の大きさがあってはじめて、センセーショナルな美しさを表現できるのはモノの道理で、ミッドサイズでようやく、たいがいのアピールができるようになるのだから、当然だ。
強いのは、ドイツプレミアム勢御三家(アウディ、BMW、M・ベンツ)である。昔から、セグメント毎にセダンベースのクーペを輩出してきただけのことはあって、クーペ造りには随分と手慣れている。手練である。魅力的なセダンをしっかり造って、きっちり売って、そのうえでちゃっかり格好いいクーペを造っている。そこが日本のメーカーとは違う。
プレミアム御三家のなかで、このクラスのクーペとして最もオススメなのは、アウディA5だ。なにしろ、スタイリングが別格に美しい。シンプルで張りのあるラインは、このクラスであってもなかなか難しいレベルで実現されてある。鮮やかなカラーで乗れば、ふわっと浮き立つ存在感で、まわりの景色を変える力がある。
BMW4シリーズやMベンツEクーペも、存在感はあるが、どこか生真面目さが漂う。ゴージャスやラグジュアリィを遊びきれていない感じがして、オシャレじゃない。その点、アウディはそのあたりをさらっと演出できていて、嫌みじゃない。クーペというものは、セダンに対する究極のオルターナティブでもあるわけで、セダンと同じような権威主義的な雰囲気が見えては本来いけない。アウディには、そもそもそこがないからいい。もっとも、それゆえにアウディのサルーンは日本で苦戦するわけだけれども。
最近、面白いなと思ったのが、キャデラックATSクーペだ。とにかく目立つうえに、走りの方も欧風でレベルが高い。BMWやMベンツと本来、同じレベルに権威的なブランドであるけれども、日本では幸か不幸か古き良き時代のイメージは薄れ、新しいラグジュアリィブランドのような印象が付きはじめた。目立ってナンボのクーペである。キャデラックの新星に、注目してみてほしい。
大穴は、ザ・アメリカンである。ここでは、マスタングとカマロの一騎打ちだが、新型になったぶん、マスタングに分がある。ダウンサイジングエンジンもあるし、大排気量の用意もある。何より、アメリカンな迫力の前後デザインと、英国製超高級ブランドのようなクーペフォルムの融合が面白い。素直に格好いいと思えるという意味では、これぞザ・クーペなのかも知れない。
“アメリカの青春”ともいえる初代のテイストを踏襲しつつ、グローバルモデルとして世界に通用する仕立てとされたフォード マスタング。右ハンドル仕様を含む正式な日本上陸を前に、2014年末に350台限定で導入(465万円)された
本命:アウディA5(S5)
対抗:キャデラックATSクーペ
大穴:フォードマスタング
外車クーペの選び方:“人と違う”ハイスペックスポーツモデル
クーペの4シリーズをベースに、M社がレースで培った技術を投入して仕立てたBMW M4。CFRPやアルミで軽量化、走りの最新技術も多数備わる。デゥアルクラッチミッション(1126万円)に加え、6MT(1075万円)も用意されている
クーペモデルのなかにも、ヒエラルキーはやっぱり存在する。人とは違う形に乗りたい、というなかにも、さらにまた人とは違うグレードに乗りたいという人が際限なく出てくるからだ。ミッドクラスのクーペにおいて、頂点に立つのが、たとえばBMW M4やアウディRS5、そして今はラインナップにないけれどもM・ベンツC63AMGクーペのような、ハイスペックスポーツモデルである。
最新ラインナップでは、M4対RS5ということになるが、RS5のある種、狂気じみたパフォーマンスに後ろ髪を引かれつつ、ここではM4を推しておく。サーキットを攻めまくったときの、あの楽しさは、やはり手練の造ったFRモデルならでは、だと思うからだ。人気という点でも、M4はダントツ。買って損のない、頂上ミッドクーペである。
外車クーペの選び方:本命は、「ポルシェ911」
1000万円以上のラグジュアリースポーツクーペにおいて、長らく、市場を独占してきたのは、ポルシェ911シリーズだった。RR(エンジンリア置きリア駆動)という得意なレイアウトを成熟させることで、他の誰にも真似のできないスタイルと性能を提供するに至り、それがこのクラスにおける世界のスタンダードになったわけだから、他ブランドに敵うはずもなかった。
とはいえ、911市場の旨味を知っている各ブランドが、ただ指をくわえてポルシェの独走を許しているわけじゃない。近年では、ジャガーやBMW、マセラティといった高級ブランドが追撃態勢を整え、一定の人気を得ている。
とはいえ、本命は、やはり911シリーズである。2位以下との差が少し縮まったくらいの気配はあっても、その地位は未だ盤石。世界で最も人気のあるクーペである。
もっとも、911の場合、4座のクーペだから、というよりも、その特異なレイアウトゆえ、スポーツカーなのに4座あるという、スポーツと実用の両立にこそ人気の最大の理由があるわけで、そういう意味は純粋にクーペカテゴリーに入れていいものか、悩むところではある。
スタイリングも、911のいわゆる“カエル”フォルムに抵抗を覚える人も少なくない。クーペの美しさとは、少し違う存在なのかも知れない。
2007年に登場したマセラティのGTマシン、グラントゥーリズモ。ピニンファリーナによるスタイリングはアグリーなディテールを取り入れつつ流麗に。ハイパフォーマンスバージョンも用意され、価格は1594万~2186万円。写真はハイパフォーマンスモデルのMCストラダーレ
純粋に大型クーペらしいエレガンスで選ぶなら、もう世代交代が間近とはいえ未だ存在感を失っていない、マセラティグラントゥーリズモを対抗に挙げておく。えぐい顔立ちもまた、エレガンスの何たるかを知ったうえでの表現だろう。V8エンジンのサウンドも素晴らしい。フェラーリより、いいかもしれない。
大穴には、BMW6シリーズを挙げておく。4ドアグランクーペの登場で2ドア6シリーズへの注目が相対的に下がった今こそ、2ドアの地位は逆に上がった。クーペ派には嬉しい、FRの本格派である。もう少し色気があると、もっと良かったのだけれども…。
本命:ポルシェ911
対抗:マセラティグラントゥーリズモ
大穴:BMW6シリーズ
外車クーペの選び方:世界で最も贅沢な乗り物「ハイエンドクーペ」
世界で最も贅沢な乗り物は何か。スーパーカー? いやいや、フェラーリやランボルギーニのミドシップカーは、そのスタイリングとパフォーマンスにおいて、適正価格であり、リセールバリューの高さを考えれば、超高額な買物とはいえ、決して贅沢ではない。ある意味、ムダがないのだ。
比べて、ハイエンドクーペは、大きな車体をわざわざ2ドアにして乗るわけだから、贅沢極まりないシロモノだ。超高級なクーペは、ヨーロッパでは極めて貴族的な乗り物であり、だからこそ、一定のニーズがあるため、ロールスロイスやベントレーといったハイエンドブランドが常にクーペモデルを用意するわけである。
最近、このクラスにスターが登場した。M・ベンツのSクラスクーペである。伝統的なクーペスタイルを守り、インテリアはメルセデスにしては珍しく色気たっぷり官能的で、パフォーマンスは新型Sクラス同様に乗用車界トップレベル、とくれば、薦めないわけにいかない。欠点をあえて挙げるとすれば、それは完璧に過ぎる点。ウルトラハイエンドには、どこか貴族的な退廃ムードがよく似合うもので、言わば贅沢な遊び感覚が、生真面目なベンツに欠けている。もっとも、最近のミリオネアは妙な遊びなどない方が嬉しいのかもしれない。買うなら、AMGモデルをぜひ。
本当の贅沢を味わいたいというなら、ロールスロイスレイスである。ベントレーコンチネンタルGTも捨て難いが、浮世離れという点で、前開きドアに天井天の川仕様のレイスに優るクーペはない。GTカーとしても超一流。誰がみても、クーペの凄さを実感できる存在である。クーペらしい美しさという点でコンチネンタルGTに及ばないが、逆に、どこにもない個性をまき散らしている。どちらを選ぶかは、貴方の好み次第だ。
大穴は、フェラーリFF。フル4シーターで、フェラーリ初の4駆である。フロントには伝統の12気筒ユニットが収まっている。シューティングブレーク風のスタイリングには賛否両論あるが、個性もまたクーペモデルの大事な要素。人が選ばないぶんだけ、自分が選ぶ意味がある、と思える人には最適。広い後席にキレイな女性を2人乗せ、紳士2人は前席に陣取ってパーティ会場へ。正しい使い方である。
ちなみに、これらの上に、別格の存在としてロールスロイスファントムクーペなる、正に“化け物”がある。これはもうクーペというカテゴリーのなかで一緒に語ることができないほど、違う存在だ。4ドアのファントム然り。ロールスのファントムは、もはや乗用車ではない。