輸入車/注目の輸入車試乗レポート

外車クーペの選び方!おすすめモデルを徹底比較

外車クーペは、コンパクトからハイエンドまで魅力的なモデルがそろっていますが、今や国産車では絶滅危惧種とも言われています。今回は、外車クーペの2ドア4~5人乗りモデルのおすすめを、パフォーマンスやキャラクターを交えて紹介します。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド

<目次>  

外車クーペの選び方:ポイントは、見た目の格好良さ̟と〇〇...!?

 
M・ベンツSクラスクーペ

乗用車でトップレベルのパフォーマンスを誇る、ハイエンドクーペのM・ベンツSクラスクーペ。ハイパフォーマンスバージョンのAMG、V8ツインターボのS63とV12ツインターボのS65(写真)も用意される


昔、2ドアクーペは格好いいクルマの代名詞だった。クルマ好きでなくても、クーペに憧れた。2ドアであることを発見しただけで、格好いいと条件反射で思う人も多かったほどだ。

“背の低いクルマ”のピラミッドが大小(=クラス)たくさんあった時代、フツウのセダンの裾野が広く、その上に、スポーツモデルや輸入車、高級仕様があって、頂点にクーペモデルが君臨していた。

格好いいけれども、ドアが2枚で後席は狭く不便。だからこそ、憧れの的だったのである。クーペに乗るということは、そういう不便な勝手を超越する何か、たとえば複数台持ちの経済力、を暗に訴えてもいたわけで、それゆえ、クーペを持つことはステータスなりえた。本当は我慢してクーペ1台でも、涼しい顔をしていれば、豊かに見えた時代だったのだ。

もうひとつ、世の中には今と違って3ボックスの実用セダンが溢れていた。カローラ&サニーからクラウン&セドグロまで、大小さまざまなセダンが、現在のミニバンや軽トールワゴンのようなフツウさで、街を走っていた。

だから、人とは違うクルマとしてのクーペの存在感は格別だったのだ。同じように見えて違うことにこそ、人は価値を認めるもの。昔はセダン派生のクーペが多かったのも、それが理由だ。クラウンやセドリックにも2ドアハードトップクーペがあったのだから!

ヨーロッパやアメリカのように、セダンがまだ、乗用車のデフォルトとして根強く売れている市場では、クーペがまだ頑張っている。逆にいうと、国産ではほぼ絶滅危惧種であるから、クーペ好きは必然、輸入車にまでターゲットを拡げざるを得ない状況だ。

というわけなので、日本のクーペ市場は今、輸入車天国であった。
ポルシェ911タルガ

ラグジュアリースポーツクーペの“スタンダード”、ポルシェ911。RRレイアウトを熟成、ベーシックモデルからサーキット仕様のGT3やスタイリッシュなタルガ(写真)などバリエーションも豊富


では、クーペとはどういうクルマか。簡単におさらいをしておこう。まず、ドア数は2枚である。最近、ルーフラインもなだらかにクーペフォルムを謳う4ドアも増えたが、ここではその手の4ドアクーペを省く。あくまでも2ドアである。

座席数は4、もしくは5座。2シーターはクーペというよりスポーツカーの類いである。性能的にはベースとなったセダンに準じるか、もしくはもう少しハイスペックで、いわゆるGT(グランドツーリングカー)的キャラクターが濃い。

そして、なんといってもスタイリングである。ドアを2枚にするだけで、こうも雰囲気が変わるものか、というくらい、セダンとは違ってみえる。その昔は、前後のデザインなどほとんどセダンと一緒でドア数を減らしルーフラインをなだらかにしただけのクーペも多かった(今はほとんどない)が、それでも存在は一際目立っていた。印象が変わることはもちろん、クーペへの憧憬という見る者の心の影響も、そこには多分にあったと思う。
BMW M235i

Mスポーツ”と“Mモデル”のあいだを埋める、どちらかといえばMモデル寄りのスペシャルグレード、“Mパフォーマンス”。2シリーズにもM235iとしてラインナップ

日本におけるクーペのあらましを復習してもらったところで、今、実際に買える輸入クーペのなかから、クラスごとにオススメを挙げておこう。基本は、“格好が好きなら買いなさい”なのだけれども、それじゃ背中を押すことにもならないので、パフォーマンスやキャラクターについて筆者なりに補足解説を試みた。

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外車クーペの選び方:コンパクトクラスは本格派が充実

BMW2シリーズ

セグメントで唯一の後輪駆動、前後重量配分約50:50などスポーティな仕立てのBMW2シリーズ。価格は457万~615万円


小さなクーペのことを特に、アメリカ市場では“セクレタリィクーペ”、などと呼ぶ。訳して、秘書用クーペ。つまり、インテリジェントな女性のプライベートカーというほどの意味だ。

以前は日本車にも、たとえばサニーやカローラのクーペのようなセクレタリィクーペというべき存在があった。けれども、今やクーペ自体が貴重な存在であって、どちらかというとやっつけ仕事的なセクレタリィクーペなど作っている余裕はメーカー側にもない。

というわけなので、今やコンパクトクラスのクーペはというと、スポーツカー入門編のような本格派が多くなった。要するに、ある程度の実用性をキープしたうえで、本格的なクーペを作っている。これなら、エンプティネスト派にも受け入れ易いし、憧れのクーペを手に入れる現実的なチョイスにもなりえる。当然、クーペ全体のなかで、最も人気のあるクラスである。
プジョーRCZ

コブのようなダブルバブルルーフやA~Cピラーを一体化させたアルミナムアーチなど、個性的なエクステリアのプジョーRCZ。1.6Lターボを搭載、ATは156ps(425万円)、MTは200ps(451万円)と変化をもたせた


格好で選ぶのがクーペ、という基本に立ち戻れば、注目すべきはプジョーRCZであろう。クーペデザインの命はルーフライン=背中の美しさだったりするものだが、RCZのそれはユニークでかつ美しい。ダブルバブルがルーフのみならずリアウィンドウにまで延長されており、スーパーカー級のスタイルだ。お金も掛かっている。

走りも、なかなか本格派だ。攻め込むと操って楽しい感がにじみ出てくる。GT性能も高く、長距離移動も苦にしない。

おそらく、もうすぐ生産も終わることだろう。次期型があるのかどうか、あってもここまで個性的になれるかどうか、それも分からない。今のうちに買っておくべき、長く乗れる1台であることは間違いない。

格好よりも走りを重視する向きには、クラス唯一のFRモデルであるBMW2シリーズの、M235iを狙ってほしい。3ペダルMTの走りは、それこそ昔憧れたM3そのもの。筆者などはM235iに乗ったとき、20年前に初めて操ったM3クーペを思い出した。

RCZほど凝ったデザインでなくていい。走りも2シリーズほどファンでなくていい。いずれも高レベルだけど突出しないクーペ選びというなら、アウディTTだろう。すでに第3世代もデビューしたが、日本市場へは、いまだ本格導入されていない。シルエットは完全キープコンセプトなので、購入条件さえ良ければ第2世代を手に入れるという手もある。
アウディTT

初代がスタイリッシュで個性的なスタイルで話題となった、アウディTT。2代目はよりダイナミックでスポーティな仕立てに。本国ではすでに3代目が登場している。価格は434万~915万円


本命:プジョーRCZ
対抗:BMW2シリーズ 
大穴:アウディTT
 

外車クーペの選び方:ミドルクラスがスタンダード

アウディA5

アウディの4シータークーペとしては11年ぶりに登場したA5。2Lの2.0TFSIクワトロ(634万円)に加え、ハイパフォーマンスバージョンのS5(938万円)、“究極”のRS5(1375万円)をラインナップ


ここは、クーペの言わばスタンダードクラスである。ある程度の大きさがあってはじめて、センセーショナルな美しさを表現できるのはモノの道理で、ミッドサイズでようやく、たいがいのアピールができるようになるのだから、当然だ。

強いのは、ドイツプレミアム勢御三家(アウディ、BMW、M・ベンツ)である。昔から、セグメント毎にセダンベースのクーペを輩出してきただけのことはあって、クーペ造りには随分と手慣れている。手練である。魅力的なセダンをしっかり造って、きっちり売って、そのうえでちゃっかり格好いいクーペを造っている。そこが日本のメーカーとは違う。

プレミアム御三家のなかで、このクラスのクーペとして最もオススメなのは、アウディA5だ。なにしろ、スタイリングが別格に美しい。シンプルで張りのあるラインは、このクラスであってもなかなか難しいレベルで実現されてある。鮮やかなカラーで乗れば、ふわっと浮き立つ存在感で、まわりの景色を変える力がある。

BMW4シリーズやMベンツEクーペも、存在感はあるが、どこか生真面目さが漂う。ゴージャスやラグジュアリィを遊びきれていない感じがして、オシャレじゃない。その点、アウディはそのあたりをさらっと演出できていて、嫌みじゃない。クーペというものは、セダンに対する究極のオルターナティブでもあるわけで、セダンと同じような権威主義的な雰囲気が見えては本来いけない。アウディには、そもそもそこがないからいい。もっとも、それゆえにアウディのサルーンは日本で苦戦するわけだけれども。
キャデラックATSクーペ

ラグジュアリーブランド、キャデラックのエントリーモデルATSのクーペ版がATSクーペ。2L直噴ターボを搭載、ブランドコンセプト「アート&サイエンス」を用いた個性的なスタイリングに。価格は509万円


最近、面白いなと思ったのが、キャデラックATSクーペだ。とにかく目立つうえに、走りの方も欧風でレベルが高い。BMWやMベンツと本来、同じレベルに権威的なブランドであるけれども、日本では幸か不幸か古き良き時代のイメージは薄れ、新しいラグジュアリィブランドのような印象が付きはじめた。目立ってナンボのクーペである。キャデラックの新星に、注目してみてほしい。

大穴は、ザ・アメリカンである。ここでは、マスタングとカマロの一騎打ちだが、新型になったぶん、マスタングに分がある。ダウンサイジングエンジンもあるし、大排気量の用意もある。何より、アメリカンな迫力の前後デザインと、英国製超高級ブランドのようなクーペフォルムの融合が面白い。素直に格好いいと思えるという意味では、これぞザ・クーペなのかも知れない。
フォードマスタング

“アメリカの青春”ともいえる初代のテイストを踏襲しつつ、グローバルモデルとして世界に通用する仕立てとされたフォード マスタング。右ハンドル仕様を含む正式な日本上陸を前に、2014年末に350台限定で導入(465万円)された


本命:アウディA5(S5) 
対抗:キャデラックATSクーペ
大穴:フォードマスタング
 

外車クーペの選び方:“人と違う”ハイスペックスポーツモデル

         BMW M4

クーペの4シリーズをベースに、M社がレースで培った技術を投入して仕立てたBMW M4。CFRPやアルミで軽量化、走りの最新技術も多数備わる。デゥアルクラッチミッション(1126万円)に加え、6MT(1075万円)も用意されている


クーペモデルのなかにも、ヒエラルキーはやっぱり存在する。人とは違う形に乗りたい、というなかにも、さらにまた人とは違うグレードに乗りたいという人が際限なく出てくるからだ。ミッドクラスのクーペにおいて、頂点に立つのが、たとえばBMW M4やアウディRS5、そして今はラインナップにないけれどもM・ベンツC63AMGクーペのような、ハイスペックスポーツモデルである。
アウディRS5

クワトロGmbHが手がけた、頂点を極めるRSシリーズ。そのA5版がRS5。450psの4.2Lエンジンに7速Sトロニックの組み合わせ、4WDを備える。価格は1375万円


最新ラインナップでは、M4対RS5ということになるが、RS5のある種、狂気じみたパフォーマンスに後ろ髪を引かれつつ、ここではM4を推しておく。サーキットを攻めまくったときの、あの楽しさは、やはり手練の造ったFRモデルならでは、だと思うからだ。人気という点でも、M4はダントツ。買って損のない、頂上ミッドクーペである。
 

外車クーペの選び方:本命は、「ポルシェ911」

ポルシェ911

RRというパッケージングをもつ、スポーツカーブランドポルシェの“生命線”、911。7世代目となるタイプ991にも4WDやターボなど多彩なモデルが用意される。価格は1178万~2813万円


1000万円以上のラグジュアリースポーツクーペにおいて、長らく、市場を独占してきたのは、ポルシェ911シリーズだった。RR(エンジンリア置きリア駆動)という得意なレイアウトを成熟させることで、他の誰にも真似のできないスタイルと性能を提供するに至り、それがこのクラスにおける世界のスタンダードになったわけだから、他ブランドに敵うはずもなかった。

とはいえ、911市場の旨味を知っている各ブランドが、ただ指をくわえてポルシェの独走を許しているわけじゃない。近年では、ジャガーやBMW、マセラティといった高級ブランドが追撃態勢を整え、一定の人気を得ている。

とはいえ、本命は、やはり911シリーズである。2位以下との差が少し縮まったくらいの気配はあっても、その地位は未だ盤石。世界で最も人気のあるクーペである。

もっとも、911の場合、4座のクーペだから、というよりも、その特異なレイアウトゆえ、スポーツカーなのに4座あるという、スポーツと実用の両立にこそ人気の最大の理由があるわけで、そういう意味は純粋にクーペカテゴリーに入れていいものか、悩むところではある。

スタイリングも、911のいわゆる“カエル”フォルムに抵抗を覚える人も少なくない。クーペの美しさとは、少し違う存在なのかも知れない。
マセラティ グラントゥーリズモ

2007年に登場したマセラティのGTマシン、グラントゥーリズモ。ピニンファリーナによるスタイリングはアグリーなディテールを取り入れつつ流麗に。ハイパフォーマンスバージョンも用意され、価格は1594万~2186万円。写真はハイパフォーマンスモデルのMCストラダーレ


純粋に大型クーペらしいエレガンスで選ぶなら、もう世代交代が間近とはいえ未だ存在感を失っていない、マセラティグラントゥーリズモを対抗に挙げておく。えぐい顔立ちもまた、エレガンスの何たるかを知ったうえでの表現だろう。V8エンジンのサウンドも素晴らしい。フェラーリより、いいかもしれない。

大穴には、BMW6シリーズを挙げておく。4ドアグランクーペの登場で2ドア6シリーズへの注目が相対的に下がった今こそ、2ドアの地位は逆に上がった。クーペ派には嬉しい、FRの本格派である。もう少し色気があると、もっと良かったのだけれども…。
BMW6シリーズクーペ

BMWのラグジュアリーなFRクーペが6シリーズ。BMWのクーペらしいスタイルに、3Lターボと4.4Lターボを搭載する。価格は972万~1304万円


本命:ポルシェ911   
対抗:マセラティグラントゥーリズモ
大穴:BMW6シリーズ
 

外車クーペの選び方:世界で最も贅沢な乗り物「ハイエンドクーペ」

M・ベンツSクラスクーペ

モダンラグジュアリーをキーワードにフラッグシップに相応しい仕立てとされたM・ベンツSクラスクーペ。マジックボディコントロールなど最新技術も数多く採用される。価格は1724万~3182万円


世界で最も贅沢な乗り物は何か。スーパーカー? いやいや、フェラーリやランボルギーニのミドシップカーは、そのスタイリングとパフォーマンスにおいて、適正価格であり、リセールバリューの高さを考えれば、超高額な買物とはいえ、決して贅沢ではない。ある意味、ムダがないのだ。

比べて、ハイエンドクーペは、大きな車体をわざわざ2ドアにして乗るわけだから、贅沢極まりないシロモノだ。超高級なクーペは、ヨーロッパでは極めて貴族的な乗り物であり、だからこそ、一定のニーズがあるため、ロールスロイスやベントレーといったハイエンドブランドが常にクーペモデルを用意するわけである。

最近、このクラスにスターが登場した。M・ベンツのSクラスクーペである。伝統的なクーペスタイルを守り、インテリアはメルセデスにしては珍しく色気たっぷり官能的で、パフォーマンスは新型Sクラス同様に乗用車界トップレベル、とくれば、薦めないわけにいかない。欠点をあえて挙げるとすれば、それは完璧に過ぎる点。ウルトラハイエンドには、どこか貴族的な退廃ムードがよく似合うもので、言わば贅沢な遊び感覚が、生真面目なベンツに欠けている。もっとも、最近のミリオネアは妙な遊びなどない方が嬉しいのかもしれない。買うなら、AMGモデルをぜひ。
ロールス・ロイス レイス

オーナードリブンの4ドアサルーン、ゴーストのクーペモデルがロールス・ロイス レイス。特徴的なファストバックスタイルをもつ究極のパーソナルカー、価格は3333万円


本当の贅沢を味わいたいというなら、ロールスロイスレイスである。ベントレーコンチネンタルGTも捨て難いが、浮世離れという点で、前開きドアに天井天の川仕様のレイスに優るクーペはない。GTカーとしても超一流。誰がみても、クーペの凄さを実感できる存在である。クーペらしい美しさという点でコンチネンタルGTに及ばないが、逆に、どこにもない個性をまき散らしている。どちらを選ぶかは、貴方の好み次第だ。
フェラーリFF

フェラーリ初の4WD×4人乗りモデルのFF(フォー)。V12エンジンをフロントミドに搭載、個性的なエクステリアに仕立てられた。ラゲージ容量は450~800L、価格は3290万円


大穴は、フェラーリFF。フル4シーターで、フェラーリ初の4駆である。フロントには伝統の12気筒ユニットが収まっている。シューティングブレーク風のスタイリングには賛否両論あるが、個性もまたクーペモデルの大事な要素。人が選ばないぶんだけ、自分が選ぶ意味がある、と思える人には最適。広い後席にキレイな女性を2人乗せ、紳士2人は前席に陣取ってパーティ会場へ。正しい使い方である。
ロールス・ロイス ファントムクーペ

ロールス・ロイスの最上級モデル,ファントムの2ドアモデルがファントムクーペ。全長約5.6mのボディには、後ヒンジのコーチドアパルテノン神殿グリルなどの伝統的スタイルを踏襲する。価格は5490万円


ちなみに、これらの上に、別格の存在としてロールスロイスファントムクーペなる、正に“化け物”がある。これはもうクーペというカテゴリーのなかで一緒に語ることができないほど、違う存在だ。4ドアのファントム然り。ロールスのファントムは、もはや乗用車ではない。
 

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