EGCの割合が高い水出し煎茶
水出し煎茶は、渋味や苦味が少なく、誰でもおいしく淹れられる手軽さも魅力です。
・80℃前後の熱水で緑茶を抽出した時は、EGCGとEGCが同割合で含まれる
・10℃以下の冷水(冷蔵庫)で緑茶を抽出した時には、EGCの割合が高い緑茶ができた
水温が低いほどEGCGは浸出されにくく、EGCは水温が低くても時間をかければ多く浸出するそうです。
水出し煎茶は、特別な淹れ方ではなく昔からあります。茶葉を多めにして、水を淹れて10~15分程度で淹れる方法もありますが、EGCは時間をかけて浸出させる方がよいので、冷蔵庫で時間をかける方法がよいのでしょう。
ご家庭にある普通の緑茶で淹れることができます。ただし、カテキン類は、玉露や番茶、ほうじ茶よりも煎茶や釜炒り茶の方が多く含まれます。水出し用に適した茶葉も販売されています。
水出し煎茶の淹れ方
- 茶葉10~15gをポットに入れます。
- ミネラルウォタまたは水道水を1リットル加えます。
- 冷蔵庫で6時間以上冷やします。
冷蔵庫に入れておく水出し煎茶は、寝る前に仕込んでおけば、朝から飲めます。ただし衛生の観点からも、作ったお茶は1日のうちで飲みきりましょう。
家庭で緑茶を淹れる意味
カテキンは酸化しやすいのですが、緑茶は製造工程で「蒸す」ことにより酸化酵素の働きを止めるため、カテキン類が減少しません。ウーロン茶や紅茶は、蒸す過程がないため酸化酵素の働きにより、カテキンの大部分はテアフラビンやテアルビジンに変化し、減少します。これによりウーロン茶や紅茶独特のおいしさや機能性成分も生まれますが、緑茶ほどのカテキン類は含まれていません。また静岡県環境衛生科学研究所(No.119)商品テスト情報によると、急須で淹れた緑茶は主要カテキンがほとんどですが、市販の緑茶飲料はエピ体のGC、GCGの比率が多くなっており、これは製造過程での加熱殺菌によるものと考えられています。
『喫茶養生記』に見られるように古くから緑茶は薬と伝えられ、利用されてきました。健康のためにカテキン類を上手に摂取する上でも、緑茶をご家庭で淹れて飲む意味があるのではないでしょうか。
もちろん、緑茶は食品であり薬ではありません。今回ご紹介した研究報告もさらなる検証が必要です。また緑茶はカフェインが含まれるため、中には夜飲むと寝付きにくくなる人もいるでしょうし、極端に飲みすぎることの弊害もあります。特に緑茶サプリメントは肝障害の報告もあります。
偏った摂り方をするのではなく、緑茶をおいしく淹れて豊かな時間を過ごすという楽しみ方が大切だと思います。その上で、科学的に明らかになった栄養成分を上手においしく摂取でき、日々の健康づくりに役立つのであればなおよいことです。
和食ブームの中で、緑茶も大切な和食文化の一つの要素です。緑茶はちょっと面倒と躊躇されている方は、手軽に淹れることができる水出し煎茶から、そのおいしさや魅力に触れてみてはいかがでしょうか。
参考/
・『緑茶通信vol.35』(公益財団法人世界緑茶協会)
・『緑茶の事典』(柴田書店)
・機能性成分・活用性等調査各種機能性成分を有した各種国産農水産物「茶」(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構)
・緑茶と健康のメカニズム 機能効用ナビゲーション013(静岡県経済産業部農林業局 茶業農産課)
・静岡県環境衛生科学研究所No.119 商品テスト情報
・カテキン(健康食品の安全性・有効性情報)