食と健康

喉に詰まらない餅の作り方・高齢者も安心の介護食餅

【病院勤務の管理栄養士が解説】お年寄りのお餅の窒息事故は少なくありません。誤嚥リスクが高い食材ですが、お汁粉やお雑煮が好きな高齢者は多く、介護食向けにアレンジできないか悩まれる介護者は多いでしょう。今回は病院で勤務する管理栄養士として、おかゆを使った喉に詰まらない「お餅」の作り方、嚥下が苦手でも安全に食べられるお汁粉レシピをご紹介します。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

高齢者にもお刺身や天ぷらを……介護食でも楽しめるお正月

喉に詰まらない餅・高齢者も安心の介護食餅の作り方

みんな大好きな「餅」。高齢者だって食べたいんです! 安心して食べられるお餅はちょっとした工夫で作れます。

病院では退院の前日に帰宅後の食事について家族を交えて話をすることがあります。本人にも無理のない範囲で同席していただきますが、その際、「帰ったら○○が食べたいな」と仰る方がいます。その中でも希望頻度が多いのは「お刺身」と「天ぷら」です。

ユニバーサルフードデザイン(UFD)で「容易にかめる」「歯ぐきでかめる」相当の食べ物が食べられる人であれば、お刺身は筋のないやわらかい魚を選び、小さく切って適切な硬さに調整すれば食べられないことはありません。天ぷらについても、やわらかい具材を選んで揚げ、出し汁に浸し衣を柔らかくした後、仕上げに細かく切れば、お刺身同様、安全に食べることができます。

UFDで「舌でつぶせる」「かまなくてよい」の場合は、お刺身は「たたき」のようなものを選べば食べられることもありますし、天ぷらもすり身などのやわらかい食材を揚げた後、出し汁に浸して柔らかくすると食べられることが多いです。

ただし、どのような状態で食べていただくにしても、出し汁に浸してやわらかくするので、しょう油の塩分には気をつけたほうが良さそうです。
 

喉に詰まらない餅……窒息事故を予防する誤嚥リスクの低い餅の作り方

お刺身や天ぷらのようなアレンジしやすい食べ物であればいざ知らず、時として「お汁粉」というオーダーがかかるときがあります。お汁粉と言えば、温かいあんこに餅を入れた、お正月の代表的な食べ物の一つ。高齢者にとっては昔を思い出す懐かしい味なのでしょう。しかしご存知の通り、「お餅」は毎年お正月になると窒息事故の報道が繰り返される危険な食材です。

「退院できるのに、食べたいものが食べさせてあげられない……」。一緒に話を聞いている家族の顔が曇るのも無理はありません。でも、大丈夫です。せっかくお家へ帰れるんです。おいしいお汁粉を安心して食べていただこうではありませんか!

お汁粉と言えば、あんこもさることながら、やはり「お餅」が命です。安全性から考えると、やはりそのまま「お餅」とはいきませんが、誤嚥リスクの少ないお粥を使ってアレンジしたお汁粉の作り方をご紹介します。
 

介護食のおかゆを使った「喉に詰まらない安全なお餅」の作り方

おいしいお餅が入っていなければ、お汁粉を食べた満足感は得られません。

UFD(ユニバーサルフードデザイン)で「容易にかめる」「歯ぐきでかめる」相当の食べ物が食べられる人であれば、「もち麩」や介護食の通販サイトで「さっくりお餅(ふくなお)」や「やわらか福もち(キッセイ薬品)」のようなものを購入すれば、好みの味付けで食べていただくこともできると思います。

UFDで「舌でつぶせる」「かまなくてよい」の場合は、レトルト食品の「スプーンで食べるおもち(アサヒ)」があります。レトルトですので、そのまま食べることができます。
また、本来はお湯を入れれて、ミキサーでつぶした状態のおかゆを作るための商品で「舌でつぶせる」や「かまなくてよい」レベルに相当する餅を作ることもできます。有名な介護食の商品としては、「粥ゼリーの素 宮源のお粥(宮源)」や「ぱぱのおもゆ(伊那食品工業)」などがあります。どちらも良い商品ですが、お餅を作るには「宮源のお粥」の方がまとまりがよく、扱いやすい印象があります。

いずれもオンラインで購入できますが、ヘルシーフードの通信販売は「宮源のお粥」「ぱぱのおもゆ」「スプーンで食べるおもち」が購入可能です。Yahooショッピングやamazonなどの大手サイトで販売されているものもありますので、購入もしやすいと思います。

高齢者も食べやすいお粥で簡単に作るお汁粉レシピ

「さっくりお餅」や「やわらか福もち」ならびに「スプーンで食べるおもち」はすでに餅の形状になって販売されていますので、調理に特別な配慮はいりません。「スプーンで食べるおもち」は袋から出すときに少しコツが要りますが、特別な調理技術はいりません。

しかし「ぱぱのおもゆ」や「宮源のお粥」など「お粥の素」を使う際はお餅をつくる必要があります。「スプーンで食べるおもち」は、餅はできていますので調理の必要はありませんが、味付けのしるこなどで誤嚥をしてしまってはいけません。そこでここでは「お粥の素」を使ったレシピを紹介します。レシピは「宮源のお粥」で表記しますが、「ぱぱのおもゆ」で代用も可能です。いずれの商品を使う場合も、出来上がった餅のかたさのチェックは忘れずに行ってください。

■準備するもの
  • 宮源のお粥 20g
  • お湯   100~120cc
  • インスタントのしるこ汁
■作り方
  1. きれいなボールに宮源のお粥(粉状)20gを入れ、お湯を少しずつ加えながら、泡だて器でよくかき混ぜます。
    ※粘り気はでませんので、粉とお湯をしっかりなじませてください。
  2. 一口大に丸めたら「お餅」の完成です。
  3. 完成したお餅をしるこ汁にいれれば、お汁粉の完成です。
    ※しるこ汁は市販のお湯をそそいでつくるインスタントのものでも大丈夫ですが、小豆を家族の分と一緒に煮込んだ後、さらに1人分をしっかり煮込み、裏ごしして皮を除けば一層、美味しいしるこ汁を作ることができます。

汁が温かいうちにお餅を入れて食べて下さい。しるこ汁は少しとろみがついていますが、普段、お茶などにとろみ剤を入れている人は餅を入れる前にとろみをつけて下さい。しるこ汁にとろみ剤でとろみをつける場合、お茶などよりもとろみがつくのが遅いです。とろみがつくまで10分以上かかりますので、気長に待ってください。

お粥の素で作ったお餅は時間が経っても固くなりにくいので、慌てずゆっくり食べましょう。好きなものに関しては、どんなことがあってもがんばって食べてくれる人が多いようです。普段の食事時間よりも多少長く、時間がかかっても昔食べたときの思い出が甦ってくるので喜ばれるはずです。ただし、お汁粉1杯程度であれば15~20分以内には召し上がってください。

また、普通のお餅に比べるともちろん安全ですが、他の食品同様、嚥下のレベルに応じて家族が見守るなどの注意はもちろん必要です。
 

お汁粉だけではない「お粥の素」のアレンジレシピ

お粥の素は割と量があるため、1度買うとしばらく自宅に残っていると思います。ですが、便利なことにお粥の素はさまざまな料理にアレンジすることができます。 やわらかく煮た野菜とだし汁に混ぜれば「お雑煮」に、しょう油あんやあんをのせれば「みたらし団子風」に、できあがった餅であんこを包めば「大福風」にもなります。また、お湯のかわりにインスタントのしるこ汁と粥の素を混ぜてなじませれば「赤飯風のお粥」も作ることができます。ただし、だし汁や塩分のつよい汁を加えると上手くゼリー状にならないこともありますので注意して下さい。

前述の通り、ご紹介した製品は「お湯を入れればミキサーでつぶしたおかゆができる」というものですが、このお粥や餅状ゼリーの素は寒天であるため、低温ではゼリー状になりません。必ず、沸騰したての湯(最低でも70度以上)を使うようにして下さい。

毎年お正月になると、お餅を食べられない高齢者の見ていない隙をねらって、他の家族だけでお汁粉やお雑煮を食べているという家庭も少なくないのかもしれません。通信販売でこれらの商品を調べると、少しお値段は張りますし、介護食の餅を探すのも手間かもしれませんが、せっかくの行事。みんなで一緒に楽しんで、思い出に残るお正月を過ごしていただきたいと思います。どうぞ素敵な家族団らんの時間をお過ごし下さい。

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