ご馳走のはずのおせち料理、3日で飽きてしまうのはなぜ?

おせち料理

楽しみにしていたお正月のおせち料理。それなのに、いざお正月を迎えるとすぐに食べ飽きてしまいます。すると食べたくなるのがカレーやラーメン。どうしてなのでしょうか?

年末、新年のためにいそいそと準備される「おせち料理」。元旦には普段食べない食材も詰め込まれた華やかなお重を前に、多くの人がお正月気分を楽しむことと思います。しかし三が日を終える頃にはおせちにはもう飽きてしまい、重箱の中には食べきれなかった料理が寂し気に残されてしまう……。そんな経験はないでしょうか?

そして三が日が終わるころになぜか多くの人が共通して食べたくなるのが「カレー」や「ラーメン」。当たり前のようにも思われがちですが、普段あまり食べられないご馳走を前にしながら、日常的なものを強く食べたくなってしまうのはなぜなのでしょうか?

「飽きるのは脳の才能」? 食生活においても変化を求める脳

食生活においても無縁ではない、「飽きる」「飽きた」という日常的な感情は、大辞林によると以下のように説明されています。
飽きる〔四段動詞「あく」の上一段化。近世江戸語以降の形〕
  1. 同じ物事が何度も続いて,いやになる。いやになって,続ける気がなくなる。 「パン食に-・きる」 「仕事にすぐ-・きて長続きしない」
  2. 満ち足りて,これ以上はいらなくなる。 《飽》 「好きな物を-・きるほど食べたい」
  3. 動詞の連用形の下に付いて,いやになるほど十分に…する意を表す。 「見-・きる」 「そんなせりふは聞き-・きた」

おせち料理の「飽きる」は1.で解説されているように同じものが続いていやになってしまう状態でしょう。「3日坊主」「長続きしない」など、悪い意味で使われることが多いものですが、「飽きる」ことは悪いことばかりではありません。

脳科学の茂木健一郎先生によると、「飽きることは、脳の才能のひとつ」と解説されています。以下、『幸福になる「脳の使い方」』からの引用です。
~前略~
何かに飽きるということは、変わろうとする脳からのサイン。
逆説を言うなら、変化し続けるものは、飽きることはない。
飽きっぽい人は、夢中になれる何か、自分が変われる何かを常に探しているのかもしれない。
~後略~
「食べたいもの」に当てはめると少し大げさに聞こえてしまうかもしれませんが、食生活においても同じものを避け、違うものを求める脳からのサインとしては、納得できるものがあります。

3日間おせち料理で同じような食事ばかりを目にしていると、脳は変化を求めます。これは人間の脳の仕組みとしても当たり前のことなのかもしれません。

ではなぜカレーやラーメンなのか? 栄養学的な解説

カレーライス

カレーを食べたくなるのは、おせち料理で濃い味に慣れてしまったことが原因かも?

同じものが続いた場合、他の食品が食べたくなるのは気持ち的にもわかりますが、なぜカレーやラーメンが食べたくなってしまうのでしょう。このような塩辛い食べ物が恋しくなる理由は、栄養学的にも解説できます。

まず、おせち料理は「保存食」であるという性質上、「濃い味」、しかも「甘い味付け」のおかずが中心になります。人間は薄味に慣れるのは難しいですが、濃い味には比較的簡単に慣れてしまいます。そのため、いきなり普通の日に食べているような体に気を使った薄味の料理では味気ないと感じてしまうのです。「塩辛い」もの「香辛料の効いた辛い」ものが食べたくなるのは、このためかもしれません。

また、以下は私の推論ですが、お正月明けに「カレー」が食べたくなるのは1976年の「おせちもいいけどカレーもね」というフレーズでカレーのCMが流され、話題になったことも一つのきっかけになっているのではないかと感じます。それまでは、おせち料理に飽きたとはいえ、おせちの代わりに「カレーを食べよう!」という発想には至らなかったように思います。「飽きちゃったから、何か他のものがいいよね」といった話は持ち上がるものの、メニューは各自、各家庭でバラバラだったと思います。いつの間にかすりこまれたイメージが、今の食の嗜好にも影響を残しているのかもしれませんね。

カレーやラーメンだけでなく……外食で一家団らんもよし!

お正月は栄養の視点からもいろいろなことが言えますが、せっかく家族が揃う楽しいお正月ですから、普段家族の食事を作っているお母さんもたまには家事を休んで骨休めしてもらいたいところです。おせち料理の味付けが多少濃くなってしまっても、一時的なことで致し方ないとも言えるかもしれません。

そして昨今は元旦から営業している店舗もちらほら見受けられます。年末年始は活動量が下がりやすい時期ですので、意識的に外出して体を動かす機会を作るのもよいものです。お正月早々に営業されているお店の店員さんにはご苦労をおかけしてしまいますが、こういった店舗を上手に使って、お正月料理に対する「飽き」の気持ちに対応して食を楽しむのもよいかもしれませんね。

「ハレの日」の後は、日常の食生活も新鮮な気持ちで豊かに

祝日を「ハレの日」、普通の日を「ケの日」とも言いますが、ハレの日ばかりが続くと疲れてしまうものです。「ケの日」があるから「ハレの日」が映えるとも言えます。次の祝日を楽しみにしながら日常生活に感謝してていねいに暮らしていくことが大切です。

食生活においても、ハレの食事とケの食事があることで、ハレの日のごちそうはもちろん、日常的な食事にも新鮮さがまた取り戻せるとも考えられます。「3日間おせち料理を食べ続けてハレの状態に飽きてしまい、日常的なカレーやラーメンが恋しくなって、また新しい気持ちで美味しく感じられた!」ということも含めて、お正月シーズンの食の楽しみのひとつにできれば、人生における「食」がより豊かものになるようにも感じます。
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