無人の森のシェルター小屋の中から、野生動物を一晩中ウォッチング
奥深い森の湿地に建てられた迷彩色のシェルターの中から、フィンランドの象徴動物であるクマをはじめ、餌を求めてやってくる夜行性の野生動物たちをじっくりと観察できる
森の狭間で、晴れた日でもぬかるみが多く近くに小川が流れ、見通しの効く湿地が動物たちの格好の観察場所
フィンランドの国土の70%を覆う豊かな森には、クマやオオカミなど、北国ならではのさまざまな野生動物たちが暮らしています。彼らは普段、人間がなかなか入ってこないような森の奥深くに生息しており、日頃人々がベリーを採ったりキャンプをするような場所ではめったに見かけることはありません。そんな野生動物たちを観察したり写真撮影をしたいというフィンランドのワイルドな自然愛好家たちに人気なのが、今回紹介する場所。森の中に建てられたシェルター小屋のなかで夜を明かします。特別窓から動物たちの観察や撮影を楽しむアクティビティが好評です。
これはより良い環境で写真撮影に集中したい人のための1人用のシェルター小屋。この他に集団で宿泊できる小屋がある
このような野生動物観察用のシェルターは古くからフォトグラファーのベースキャンプとして各地に存在していましたが、近年、動物たちの冬眠期間以外の季節に、野生動物観察の初心者や旅行者でもこの珍しいアクティビティを楽しめるようにサービスを整えた施設が注目を集めています。ヘルシンキから600kmあまり離れた中東部の小さな街クフモ(Kuhmo)を拠点に、観光者でも安心して利用できるサービスを始めたボレアール・ワイルドライフ・センター(Boreal Wildlife Center)もそのひとつ。自然観察のプロフェッショナルのスタッフたちが運営・管理をしている施設なので、もちろんこれまで事故が起きた事例もなく、安全性はきちんと保証されています。
クマはイメージよりも大人しい動物で、実は物音を聞いたり人に出くわしても自ら逃げていくことの方が多い。けれど時には二本足で立って相手を威嚇しながら、クマ同士でなわばり争いをするシーンも見られる
とはいえ、この特別な宿泊体験にホテルのような快適さやサービスを求めるのはやや筋違い。無人の森に建てられた小屋の中には電気も通っていませんし、もちろんwi-fiも使えず、飲料や食料も最初に一晩分持ち込まなければいけません。テントよりは幾分設備が充実し寝床も確保された小屋で野宿をするのだ、くらいの覚悟と準備は必要になってきます。また、動物園やサファリパークで飼いならされた動物を見るのとは異なり、相手はあくまで野生の動物たちなので、目当ての動物が確実に見られるという保証はありません。それでも、森の常連客であるクマを始め、より希少度の高い動物が、自分たちの留まる小屋のすぐ先まで無邪気にやって来たときのスリルと感動は、まさにここでしか味わえませんよ!ハイシーズンの夏場は白夜のお陰でほぼ一晩中明るいので、朝までフィールド観察に明け暮れてしまう人も少なくないのだとか。
それでは、実際にどんな動物たちが見られるのか、そしてタイムスケジュールや設備、準備物などについて、確認していきましょう。
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次ページでは、森の中で見られる可能性のある動物たちを紹介!