フレンチ/東京のレストラン

フレンチが和食になり和食がフレンチになる魔法の料理

四谷三丁目の路地に静かにオープンしたフレンチ割烹。暖簾をくぐると鮨屋のようなカウンターがすーっと広がる。その日その日の素材でイマジネーションを働かせ、フレンチのエスプリと日本料理の雅を組み合わせ、新しい料理が繰り出される。清酒のラインアップにもこだわりが垣間見え、ワイングラスでいただく純米吟醸の香りに酔いしれたい。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

トレンドはジャポネスク

フランス、パリでは日本の素材や調味料は今や先端のトレンドになっているようだ。昨年、レストランひらまつやポールボキューズを展開する平松氏にパリの食事情を伺ったところ即帰ってきた言葉が「ジャポネスク」という言葉だった。もはや、ワサビ、海苔、醤油、山椒まで揃うレストランが多いのは不思議ではないと聞く。

東京ではどうか。和風フレンチという触れ込みでいくつかのレストランに行ったことがあるが、どうも思い出せない。インパクトのある記憶に残る料理はなかったからかもしれない。
ドミニクコルビ

                    暖簾が目印だ

今はフレンチは現代風のものと伝統的なものと、シンプルにグリエするスタイルのものとはっきり分かれて、和風フレンチは過去のものとなっているような気もしないではない。

そこに現れたのがフランス人のベテランシェフ、ドミニク・コルビ氏だ。フレンチ割烹と銘打ったそのスタイルはカウンター主体の鮨屋のような雰囲気を漂わせる。清酒のラインアップを前面に打ち出し、ワインは隠れているような印象だ。
ドミニクコルビ

カウンターと厨房を隔てるものはない

かつてその場所は一世を風靡したフレンチ、スクレサレがあったところ。カジュアルながら伝統的なフレンチを出すレストランであったが、今となれば時代の変化を感じずにはいられない。それぞれの国に根付き、いいところを取り入れ、すべてフランス料理の範疇に組み入れてしまう。フランス料理は明らかにどんな料理よりも先を行き、変化と進化を遂げている気がしてならない。

日々変化するお任せのコースを

料理はすべてコース仕立てになっており、その日の仕入具合により内容が変わる。これは予約時や前日に仕入れが決まる頃に確認するのがいいかもしれない。野菜料理も肉料理も日々スタイルを変えてサービスされる。ここはコルビ氏のこれまでの経験による引き出しの多さに素直に敬意を表したい。フレンチと和の技術の中で要はなんでもあり!ということだ。これで楽しくないわけはないだろう。
ドミニクコルビ

心地よいガスパッチョにほっとするひと時

ガスパチョとプティビーフグリエ、海藻仕立てのプディングといった小さな料理はとてもシンプルに作られている。バターは控えめながら素材の味わいが凝縮され、小ぶりでも強さを感じさせるものに仕上がっている.

魚料理は炙り出汁醤油のジュレを使い、日本の調味料をフランス料理のソースにトランスさせるもの。山椒と甘夏のマリアージュもなかなかユニークな組み合わせだ。
ドミニクコルビ

ほうれん草のクレーム たいら貝の炙り出汁醤油のジュレをのせて 山椒と甘夏の香り たまり醤油のカラメル添え

全国から届く10種類の野菜を煮詰めたスープはブルーテに近いかもしれない。ワサビの味わいが全体を引きしめて、そして開放する。
ドミニクコルビ

10種の野菜のスープ 宮崎どりのわさび菜包みと温泉卵 わさび添え

シャランの鴨のグリエでフランスに戻ることになる。リンゴとの組み合わせは「鉄板」であるが、そこにブドウのビネガーを加えアクセントをつける。
ドミニクコルビ

シャロン鴨の炭火焼き 林檎のソテー 古々美醂とぶどう酢のソース 菜の花添え


和的とか割烹フレンチという前に全体的に、メリハリが効いて飽きのこない、「次はなんだろう?!」と思わせるワクワク感が楽しめる。

隣の席に素敵なマダムが一人で食事をされていた。近所の方だという。夜遅くまでやっていて、ちゃんとした料理がいただける、使い勝手の良さが気に入っているとのこと。小さいレストランだが、お一人様、カップル、6名までのグループに対応する。
ドミニクコルビ

ドミニク氏の根強いファンも多いと聞く。モデルのSさんと出くわす偶然に感謝。

フランス人の繰り出す日本のフランス料理。日本人として季節感を出して四ツ谷の地にしっかり根付いてほしいと願う。

フレンチ割烹 ドミニク・コルビ
住  所:東京都新宿区荒木町9番7号 ナオビル1階
  四谷三丁目交差点から曙橋方面へ徒歩5分程度
営業時間:18:00~02:00
18:00~21:30 お任せコース3種類(8000円、10000円、15000円)要予約
21:30~02:00 アラカルト
カウンター10席、6席の個室あり
予約/問合せ
03-6457-8899

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます