セクシュアルマイノリティ・同性愛/イベント

今年のGWは特別な「虹」を見に行きましょう(3ページ目)

同性パートナーの権利を認める日本初の新条例が成立した渋谷区。その渋谷区の代々木公園で、今年のGWもパレードが行われます。これまでになく晴れやかで笑顔あふれるパレードになりそうですね! 関連の情報もいろいろお届けします。

後藤 純一

執筆者:後藤 純一

同性愛ガイド

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パレードへようこそ!

パレードへようこそ!

(C)PATHE PRODUCTIONS LIMITED. BRITISH BROADCASTING CORPORATION AND THE BRITISH FILM INSTITUTE 2014. ALL RIGHTS RESERVED.

『パレードへようこそ!』はゲラゲラ笑えてオイオイ泣けるエンタメ作品。舞台は1980年代のイギリス(まだゲイが「ヘンタイ」と罵られるような時代です)。ロンドンの都会っ子ゲイ&レズビアンと、ホモフォビアまるだしな荒くれ炭鉱夫たちとの間にまさかの「友情」が成立!という、奇跡のような、これが実話なの?とビックリするような物語。そして、セクシュアリティのこと、カミングアウトのこと、HIVのことなど、ゲイにとって大切なあらゆることが盛り込まれている、名作中の名作でした。ぜひ大勢の方に観ていただきたい映画です。 

この映画に登場する個性豊かなゲイやレズビアンたちは、みんなそれぞれに事情を抱えており、それぞれの物語が少しずつ描かれていきます(きっとその中に「あれは僕だ」と思える人もいることでしょう)。そして、LGSM(炭坑夫やその家族を支援するレズビアンとゲイの会)の活動を通じて、いろんな「小さな奇跡」が起きていくのです。そのいちいちが身にしみて…本当に泣けます(ていうか、最初の方からほぼ泣き通しだった気がします)

『パレードへようこそ!』は、文字通りパレードのシーンから始まります。学校の実習だとウソをついて家を出たジョーは、電車に乗ってロンドンへ行き、おっかなびっくり、パレードの列に加わります。そこでマイクに「(隠れているよりけばけばしい方がいいと書かれた)旗を持ってくれ」と言われて、なんとなくそのグループについていくのですが、パレードが終わった夜、ゲシンの本屋で、マイクの仲間である熱い青年・マークが立ち上がり、「今、この国の炭鉱夫たちは危機に瀕している。サッチャーにいじめられ、苦しんでいる彼らの境遇は僕らと同じじゃないか」と、炭鉱組合を支援することを提案し、LGSMが結成されるのです。

最初はゲイコミュニティでも募金がなかなか集まらず、また、どの炭鉱組合に電話をしても「レズビアン&ゲイ…」と言った瞬間に電話を切られてしまい(あからさますぎてウケます)、先が思いやられるのですが、ようやくウェールズの炭鉱の村・ディライスが受け取ると言ってくれて、組合の代表であるダイが来ることに。彼はLGSMの意味を知らず、LがロンドンのLだと思っていたのですが(笑)、話を聞いて快くメンバーと握手し、その夜、いっしょにゲイバーに行き、募金に協力してくれた人たちに感謝のスピーチをするのです(そこで「コミー!(共産主義者)」というヤジが飛ぶあたりがリアルでした)。ノンケであるダイは「私たちが受け取ったのはお金だけではありません。友情です」と語り、ゲイたちから喝采を浴びます(まずそのシーンで涙腺が崩壊…)。この言葉に、映画のテーマが凝縮されています。

LGSMのメンバーは、みんなでディライスの村に行くことになるのですが(村の側は困惑しますが、ある聡明な女性のおかげでOKになります)、村の荒くれ炭鉱夫たちは(寄付金をもらっているにもかかわらず)ロコツな侮蔑語を吐き捨て、集会所から出て行き、あからさまに拒絶します。差別には慣れているとはいえ、さすがにメンバーもへこみます。しかし、LGSMメンバーのある素敵な行動がきっかけとなり、村の男たちの態度が変わっていき…。

このように、ちょっと進んでは壁にぶつかり、の繰り返しなのですが、LGSMのメンバーたちは、励ましあいながら、ゲイらしいセンスと知恵と熱意によって苦難を克服し、少しずつ前に進んでいく(奇跡を起こしていく)のです。

1980年代の名作『トーチソング・トリロジー』は、周囲の無理解や迫害に負けず、強く気高く、愛に生きようとするゲイの姿を描き、涙を誘いました。限りなく深く優しい「愛」の物語でした。1990年代の名作『ロングタイム・コンパニオン』は(あるいは『RENT』は)、過酷なエイズ禍のなかで、ゲイどうしが絆を強め、希望を失わずに生きていこうとする、悲しくも崇高な作品、「友愛」の物語でした。そして21世紀に誕生した名作『パレードへようこそ』は、ゲイ(やレズビアン)とストレートとの「友情」の物語です。

人は誰かのために生きるとき、本当に強くなれる、美しく輝ける、ということをこれ以上雄弁に物語る作品はなかなかありません。ゲイの登場人物たちは理不尽な苦難に直面しながらも、決して希望を失いません。それは、愛する人がいるから、苦労を共にし、支え合う友人たちがいるからです。愛は(友情は)死の恐怖をも乗り越えるもの。生きる意味そのものなのです。

愛すべき村人たちの姿にもぜひ、注目してください。彼らは決してただの田舎者ではありません。炭鉱夫(マイナー)である村の男たちはキホン、乱暴でバカだったりしますが、友情には篤いのです。ひとたび仲間だと認識すれば、決して裏切りません(男気と言いますか。惚れ惚れしちゃいます)。その妻や子どもたちはゲイ&レズビアンのよき味方です(ただ一人を除いては…)。予告編にも出てきますが、そんな村の元気なオバチャンたちがロンドンのゲイバー(しかもSMとかやっちゃうようなハッテン系のお店)に押し入るシーンは爆笑モノ。「田舎の人たちはホモフォビック」という「偏見」を痛快に笑い飛ばしてくれます(案外、日本だって…と思わせてくれます)

劇中で使われている音楽も素晴らしいです。ザ・スミス「What Difference Does It Make?」、カルチャークラブ「Karma Chameleon」、デッド・オア・アライブ「You Spin Me Round」、ブロンスキ・ビート「Tell Me why」、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド「Two Tribes」、ピート・シェリー「Homosapien」、コミュナーズ「For A Friend」といった、80年代イギリスのゲイゲイしい名曲がふんだんに盛り込まれています。 

ともあれ、気軽に笑いながら楽しめる映画ですので、彼氏やお友達、あるいは家族や同僚の方などを誘って、ぜひ映画館に足を運んでみてください。GWのパレードの前に観るとピッタリかも!

パレードへようこそ!」(原題:PRIDE)
2014年/イギリス/監督:マシュー・ウォーカス/出演:ビル・ナイ、イメルダ・スタウントン、ドミニク・ウェスト、パディ・コンシダイン、ジョージ・マッケイ、ジョセフ・ギルガン、アンドリュー・スコット、ベン・シュネッツァーほか/配給:セテラ・インターナショナル/4月4日(土) シネスイッチ銀座ほか全国順次公開

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