奪われたのはユーザーニーズなのか?
ゲーム専用機とスマートフォンが本当に取り合っているものは、なんなのでしょうか?
例えば、2014年、ゲーム専用機では200万本以上を販売するダブルミリオンタイトルが5本も登場しました。5本のダブルミリオンというのは、大変なことです。ゲーム専用機からスマートフォンへゲームのニーズが移動したのであるなら、なぜ、それらは遊ばれているのでしょうか。実は、ゲーム専用機はまだまだ人気があるということなのでしょうか? しかも、それら5本は全てニンテンドー3DS(以下3DS)のタイトルです。競合するはずの携帯機でヒットが出ていて、逆にWii UやPlayStation4などのスマートフォンのゲームとは利用機会の違う据え置き機は、非常に苦しい状況です。
今回は、これらの状況を説明してみたいと思います。専用機がスマートフォンに奪われたものを、ユーザーではなく、別のものに置き換えると、話はぐっと分かりやすくなります。
コストと販売のバランス
妖怪ウォッチのような、社会現象とも呼ぶべきムーブメントがあったにも関わらず、市場は縮小傾向にあるゲーム専用機
前述の通り、2014年はダブルミリオンが5本も出ています。スマートフォンにお客を奪われているのに人気タイトルが次々出るというのは不思議な話です。しかし、専用機のゲームが売れなくなっているというのも、事実なのです。2014年のゲーム専用機の市場規模は前年比で約10%程度縮小しています。大ヒットがあるのに、市場規模は小さくなっている、なぜでしょうか?
大きな原因は、コストと販売バランスにあります。もう少しかみ砕くと、高騰する開発費と、海外市場で販売を伸ばすことができない、という2つがポイントです。日本の多くのゲームメーカーは海外で販売を伸ばすことができていません。よって、多くのゲームが国内市場で採算をとらなければいけないわけですが、ゲームハードが高度に進化していくにつれて、開発費が高騰し、コストと売り上げのバランスが決定的に崩れてきています。
その為、回収の見込める大型タイトルのみに大規模な予算が投じられ、売れるタイトルと、売れないタイトルの差が激しくなり、さらには、発売されるタイトル数自体が減っていきます。ダブルミリオンを次々に出した3DSの2014年に発売されたパッケージソフトの数は約100タイトルほど、ニンテンドーDSやPlayStation2の最盛期と比べると4分の1以下にまで減っています。
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つまり、一部の大型タイトルだけは売れるけれど、それ以外は予算と売り上げのバランスが保てず、発売数自体が減少し、あるいは発売されてもゲームの進化にあわせて作り込むことが難しくなり、市場規模の縮小を招いているという状況です。
専用ゲーム機市場の苦しい環境のさなか、携帯電話向けにソーシャルゲームが流行り、そしてスマートフォンではパズル&ドラゴンズの大ヒットが生まれます。