防犯/防犯小説

女子一人暮らし・部屋は覗き・盗撮のターゲット

一人で暮らすことにはさまざまなことがつきまとう。それでも、翠はなんとか日々を過ごしていたが、ある日、思いもよらない出来事が……。

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

【これまでの話】
女子一人暮らし・危険の始まりは“ピンポ~ン” から
女子一人暮らし・玄関開けたら“ストーカー”?
女子一人暮らし・玄関ドア開閉に問題アリ

一人で暮らすことにはさまざまなことがつきまとう。それでも、翠はなんとか日々を過ごしていたが、ある日、思いもよらない出来事が……。

防犯学習イロイロ

カーテンのすき間から見えたのは!

   すき間から見えたのは!

あれ以来、翠は玄関ドアの開閉時には慎重になった。出入りはすみやかに、鍵をすぐにかけるようになった。また、部屋までの建物の通路を歩く時の足音にも注意して、あまり靴音が立たないようにそっと爪先立つように歩いた。
「美容にもいいかもよ」
携帯電話から聞こえてくる友人の真理の言葉に思わず微笑んだ。
「一石二鳥ね」

「それから、キーホルダーの鈴は悪くないと思うけど、帰ってきた、って知らせてるみたいだから、バッグから出すときは鈴は押さえて音は出さないほうがいいよね」
「そっか。これからそうするわ。でも、外から帰ってきて、ドアを開ける前にはドアの先の建物の横までちゃんとチェックしてる。誰かひそんでいたら怖いから」
「朝、家を出るときは?」
「ちょっと耳を澄ませてからドアを少しだけ開けて、誰もいないと分かってからドアから出る。そしてすぐに鍵をかけている。ね、すっごく慎重になったでしょ」

「でもまあ、1階だからねぇ。2階以上と比べたらやっぱりリスクは高いんじゃないかな」
「ええー? 他にもまだ気をつけることがあるかなぁ」
「何もなければいいけど、何か起きてからでは遅いしね」
「あんまり怖いこと言わないで~。あ、でも気づいたことがあるんだけど、玄関ドアに二つ錠前がついている部屋がいくつかあるのよ。ウチとか隣は一つだけなんだけど。自前でつけるのかなぁ」

「仮にさ、取り付けが2万円だとしても、2年間住むなら、チョッと待って計算するから。あ、えーと、1日27円弱だね。大家さんに相談してみてさ、保険と思って錠前追加したらどう? ワンドア・ツーロックは基本だよ。それにワンロックとツーロックの部屋が混在しているなら、余計にワンロックの部屋は狙われやすいよ」
「あー、そりゃそうだよねぇ。うん。相談してみる」
「後は窓だね」
「え?」

「1階でしょう? 窓ガラス、金槌とか硬いもので打ち付けたら割れるガラスでしょう?」
「ってか、別に窓には何もしていないよ。トンカチで叩けば割れると思うよ」
「つまり、簡単に割れる窓に、あんたは命を預けてるわけよ。よく眠れるよねぇ」
「ええ? でもだって、皆そうじゃないの?」
「まあそうでしょうね。だから、割られるんじゃない。そいでクレセント錠しかなければ簡単に窓は開くよね?」
「うーん」
「だから、窓用の補助錠を買って取り付けたほうがいいよ」
「わかった。。今度一緒に買いに行ってくれる?」

窓の外に人影

翠はベッドの上に座って壁に寄りかかっていた。テレビをつけて、音だけ小さくしていた。テレビは窓の横に斜めに置いてある。カーテンをしっかり閉じたつもりだったが、少しばかり窓ガラスが見えている。何の気もなくそこを見て、(あー、カーテン、しっかり閉めないとなぁ)と、思った瞬間、息を呑んだ。何かが見えたのだ。人の目の光だったような気がした。

「やだっ!」
「翠? どうしたの?」
「ちょっと、今、窓の外に何か見えた。ちょっと待ってて」

翠はベッドから弾かれるように飛び出して窓のカーテンをシャーッと引いた。すると、そこには若い男が首をすくめてしゃがみ込んでいた。脅えるように翠を見上げると、突然、サササササッと狭い窓の外を去っていった。翠は勢いよくカーテンをしっかり閉めて、カーテンの間のクレセント錠がかかっていることをもう一度確認した。心臓がドキドキしていた。握り締めていた携帯電話を耳にあて、泣くような声で言った。

「まりっぺ~」
「翠! どうしたの? 何があったの?」
「窓の外に、男がいたの~」
「ええ? 何それ? まだいるの?」
「ううん。カーテンをサッと開けたら驚いて逃げていった」
「顔、見えた?」
「ううん。わかんない。ただ若い男だったような。こないだの男ではなかったと思うけど」

「あああ~。これだよ。翠さ、カーテンの色は何色?」
「赤だけど・・」
「はあ~。あのさ、赤とかピンクとか花柄とかさ、カーテンでこの部屋には女が住んでるって知らせているようなものじゃん! ダメだよ~」
「だってぇ。元気が出る色だって言うからさぁ。女の子だしぃ」
「あのさ、他人の眼に見えるものはすべて個人情報なんだよ? おまけにいい加減に閉めてすき間が出来ていたなんて。覗いてくださいって言っているようなものだよ」

「だけど、窓の外はすぐ塀だよ」
「でも、人がギリギリ通れるくらいはあるでしょ。窓の下の地面は?」
「土かな、あ、コンクリートだったかも」
「どちらにしても足音がしないね。土なら足跡は残るけど」
「でも、あんなに狭いところまで入ってきて覗きをするの?」
「実際に覗かれたばっかりじゃない」
「いやだー。やっぱり1階は怖いかも~」
「とはいえ、引越すことはできないだろうから、今ある住まいの安全レベルを上げることだよね」

「まだあるよ。玄関ドアから部屋の中って丸見えにならない?」
「え? 一応通路兼キッチンがあるけど」
「ということは、玄関のドアスコープから覗かれているかもよ」
「えーー? 何それ。いやだ、怖い~」
「だから、のれんでも長いカーテンでもいいから、つけなよ。荷物の人が来ても室内を見られないようにさ」

「ドアスコープって外からは見えないんじゃ?」
「何言ってるの。明かりがついているかどうかわかるでしょ。それにドアスコープ自体をいつの間にか外されている人も多いんだよ」
「ひえぇ~~」
「それでその穴から針金みたいなのを入れて、サムターン回しとかされて泥棒に入られるんだよ」
「ぎゃー、怖い」
「ドアスコープから隠し撮りした、つまり盗撮のDVDとか売ってるって」
「それって撮られていることは分かってないわけ?」
「分かってたら撮られないでしょ。つまり、女性の一人暮らしはどこからでも狙われる。のぞきも盗撮も」
「あー、もういや~。怖いよぉ~」
「だから、対策しようよね」



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