「あごを引いて胸を張る」だけではダメ?
モデルの美しさは、「姿勢」によるところが大きい
いい姿勢を作るために「あごを引いて胸を張りなさい」という合言葉をよく耳にします。子供の頃、耳にタコができるほど親によく聞かされたという方もいるでしょう。
確かに、猫背で顔が前に突き出したような方にとっては適切な修正方法だと思います。しかし、この表現には問題点がひとつあります。それは、どこまであごを引くのか?どこまで胸を張るのか?ということです。つまり、方向は示されていますが、程度が示されていません。大切なのはその方にとって適切な修正方向であるか、程度であるかということです。
万人に共通する体の一点である“頭頂”
「あごを引いて胸を張る」だけでは、程度が分からないと言いました。そして、個性があるので万人に共通な修正は難しいのではないかと思ってしまいます。しかし実は、姿勢を正す際に意識すべき、万人に共通する“体の一点”があるのです。それは、「頭頂」です。これは一点しかありませんし、誰もが持っているところですね。
テーブルに置いてあるチェーンのネックレスを想像してみて下さい。ネックレスを真っ直ぐに連ねさせるためにはどうしたらいいでしょうか?一番簡便な方法は、端を持ってただ上に持ち上げること。重力線が垂直であるため、これだけですべて一直線に連なるはずです。
ヒトも重力下で存在しているため、重力の法則に必ず従います。というより、重力下で一番効率的な体のこなし方を進化の中で作ってきたという方が適切でしょう。つまり、重力に勝つために、重力方向に頭頂を合わせてきたのです。
重力は常に私たちを押し潰そうとしています。その力に抵抗するには、真逆の方向に体を位置させることが最適だということです。
頭頂はどこ?
さて、いい姿勢は頭頂が作るということは分かりました。しかし、頭頂の正しい位置はそもそもどこ?ということになります。旋毛(つむじ)と言いたいところですが、旋毛は2つある人もいますし、正中(体の真ん中)にないことが多いですね。
前から見たときの頭の左右傾斜は耳の高さや、顎の位置で分かりやすいと思います。難しいのは横から見たときの上下位置です。
頭頂を知るのに、簡単な方法があります。それは、遠くを見ることなのです。
この時には少しあごが上がりますよね。この状態だと、上下の歯は接触することはありません。2~3mm隙間ができます。これが顎関節としての正常な位置です。顎関節の正常な位置は、頭部の正しい位置とも言えます。関節にとって楽な位置は、正しい姿勢の基準になるのです。
つまり、上下の間に隙間ができるところが頭の上下の真ん中となります。この正しい頭部の位置での頭頂が、正しい姿勢の真ん中なのです。
ここを意識すると、あごや胸という部位を意識しなくても、勝手に体はいい姿勢になります。そもそも、ヒトが進化の中で、わざわざあごや胸を意識して何かすることはないと思います。考えてから姿勢をとるようでは大変ですよね。ですから、遠くを見るという行為そのものがいい姿勢を作るというのは実用的であり、かつ自然なのです。