掛値なしに世界最高のFRスポーツカー性能
はたして、ラスベガス郊外の小さなカジノタウン・パーランプで試乗した新型コルベットのZ06は、掛値なしに世界最高のFRスポーツカー性能が与えられていたのだった。しかもそれは、アメリカンマッスルの権化、ではなく、グローバルに通用するスポーツカー性能である。もちろん、広大なアメリカの土地を思い起こさせるワイルドさは持ち合わせていたが、それも含め、すべての性能が緻密な計算のうえに成り立っているという印象で、どちらかといえばZ06というよりも、先代ZR-1の後継モデルと言ったほうがいいとさえ思った。
決して悪い意味じゃない。なにしろ、先代ZR-1の性能は先代Z06よりも完全に上だったし、その時点ですでにフェラーリ599やアストンマーティンDBSといった、値段倍以上の名門ヨーロッパ勢に、勝るとも劣らないパフォーマンスをみせていたのだから!そして、なんと、新型Z06のパワースペックは、今や先代ZR-1を完全に上回っている!
アルミニウムを使った基本的なボディ構造は、ベースモデルと変わらない(だからベースモデルも凄い!)。パワートレインとサスペンションを積み込んだベアシャシーをみて気づくノーマルモデルとの違いはといえば、スーパーチャージドされたV8エンジン、カーボンファイバー製のトルクチューブ、エグゾーストシステム、クーリングシステム、大径ブレーキシステム、などである。
注目は、やはりパワートレインだ。LT1と呼ばれる新世代の6.2リッタースモールブロックV8エンジンをスーパーチャージャーで高性能化したLT4ユニットである。
先代ZR-1用を大きく上回る、最高出力659ps、最大トルク881Nmを獲得。さらに、3ペダルはノーマルと同じ7速で、2ペダルのオートマチックは自社製8速とした。このGM8ミッションは、2速増えたにも関わらず、従来の6速GM6とほぼ同じ大きさで、しかも軽い。大パワー&大トルク用ATに関しては、GMの右に出る者はいないのだ。
ボディ剛性の向上も、すさまじい。前作では剛性確保のため、クローズドボディの用意しかなかったが、今回は、デタッチャブルトップ仕様である。ルーフ無しでも先代Z06より約2割、ルーフを装備すれば約6割もボディ剛性が向上している。それゆえ、新型Z06にはコンバーチブルも用意されたのだ。
見た目の迫力の理由は、史上最大のワイドボディであるという説明で片がつく。ノーマルに比べて、フロントで56mm、リアで80mmもワイドだ。ちなみに、エンジンフードとルーフパネルは、CFRP(カーボンファイバー強化樹脂)製である。