アニー

4月25日~5月17日=新国立劇場中劇場

『アニー』メインキャストたち。(C) Marino Matsushima

『アニー』2015年度のメインキャスト。(C) Marino Matsushima

【見どころ】

最近ではハリウッド映画のリメイク版も話題のミュージカル『アニー』。日本では86年に初めて上演され、以来再演を重ねて30周年を迎えました。1933年、世界恐慌直後のニューヨークを舞台に、孤児のアニーが大富豪のウォーバックスさんと出会い、持ち前の明るさで幸せを掴んでゆく物語。主題歌の「トゥモロー」はもとより、ウォーバックスさんが小粋に歌う「NYC」など心浮き立つような楽曲に彩られ、子供たちによる一糸乱れぬダンスも壮観の名作です。

今回はウォーバックス役に昨年から続投の三田村邦彦さん、孤児院のミス・ハニガンに青木さやかさん、ウォーバックスの秘書グレース役に木村花代さん、ミス・ハニガンの弟ルースター役に崎本大海さん、その恋人リリー役に甲斐まり恵さんという布陣。アニー役には9000人以上を超える中から選ばれたという黒川桃花さんと前田優奈さんがダブルキャストで扮します。「ファミリー・ミュージカル」と思われがちな本作ですが、上演時間は3時間近く、社会福祉の在り方や幸福論など、大人も考えさせられるテーマも内包していて、どちらかというと子供より大人向けに作られています。まだ未見の方は30周年というアニバーサリー・イヤーの今回にぜひ、いかがでしょうか?

『アニー』制作発表で「トゥモロー」を歌う出演者たち。(C)Marino Matsushima

『アニー』制作発表で「トゥモロー」を歌う出演者たち。(C)Marino Matsushima

【制作会見レポート】

アニー役の黒川さん、前田さんを含め30人ほどの子役たち、そして大人のキャストが一堂に会した会見。子供たちは本作への出演を心から楽しみにしているのでしょう、整然と並んでいてもきらきらと目を輝かせ、全身からエネルギーを放っています。

いっぽう大人の出演者たちも本作にはそれぞれに思い入れがあるようで、三田村邦彦さんは「(昨年出演していて)日本語訳について(演出側と)相談した部分があり、)今年は少し変わってくると思います」、ミュージカル初挑戦の青木さやかさんは「以前から毎春『アニー』を観ていて、特に出産後はこの公演は絶対無くならないでほしいと思っていた。それほど好きな作品に出られることになり嬉しいです。映画版で同役のキャメロン・ディアスより怖いハニガン先生にしたい(笑)」、木村花代さんは「昔ながらのミュージカルが減っている今、こういう心に染み入る作品は貴重。裏声のソプラノを聴かせる役も最近のミュージカルでは少ないので、張り切っています」とコメント。最後に皆で「トゥモロー」を合唱し、元気で楽しく、そしてちょっぴりほろりとさせる舞台への仕上がりを期待させる会見となりました。
『アニー』2015年スマイル組キャスト

『アニー』2015年スマイル組キャスト

【観劇レポート】

この日のキャストはスマイル組(アニー役・黒川桃花さん他)。劇場が青山劇場から新国立劇場へと変わり、今回は例年に増して一つ一つのシーンの意味合いが明快なものに。主筋は「アニーとウォーバックスが家族になってゆく過程」ではありますが、もっと俯瞰でみればアニーという少女の存在を通し、アメリカという国、ひいては観客に「楽観主義」の価値を思い出させる物語であると痛感させられます。
『アニー』2015年スマイル組キャスト

『アニー』2015年スマイル組キャスト

アニー役の黒川さんは厚みのある声と正確な音程で「トゥモロー」ほかの名曲をしっかりと聴かせ、一番ちっちゃなモリー役の宮島瑠南さん(6歳)ほか孤児役の少女たちも、組体操的な動きを含め、数々のしどころを息を合わせて披露。タップキッズたちによる壮観のタップダンスでは、終始ポーカーフェイスのタップキッドもいれば、山場を無事終えて一瞬ほっとした表情を見せるキッドも見受けられ、大人だけのショーとはまた違った微笑ましさのある作品です。
『アニー』2015年

『アニー』2015年

大人の役が演じ手によってカラーが異なるのも、長く上演が続く本作ならではですが、歴代初(?)のスレンダーなウォーバックス役、三田村邦彦さんは苦労人のリアルなオーラ、ミス・ハニガン役の青木さやかさんはやさぐれた風情、ルースター役の崎本大海さんはちょっと甘えん坊のワルの雰囲気を醸し出し、芯のある高音が美しいグレース役の木村花代さんは“アニーによって恋心に気づかされる、仕事一筋の女性秘書”。今年はとりわけ元気いっぱいで、アニーに何度となく飛びかかっていた(!)サンディー役の大型犬の熱演も記しておきましょう。巨大なクリスマスツリーが登場し、全員がクリスマスの喜びを輪唱する幕切れは幸福感いっぱい。約2時間55分という長尺ながら、客席の子供たちが少しも騒がず、じっと集中する姿からも、本作の“愛され度”がうかがえるというものです。




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