キャリア形成は計画や戦略よりも「感覚」を大切にしてほしい
では就職活動における「競争戦略」を、楠木教授はどのように考えているのだろうか。キャリア形成にとって大切なのは計画や戦略よりも感覚
小寺:では若者は就職活動の際に会社や仕事は、どうやって選んでいけばよいのでしょうか?
楠木:まずは自分の中にある「好き嫌いの感覚」を大事にして決めて良いのではないでしょうか。自分が何が好きで何が嫌いかわからないなんて言って周りに相談する人がいますが、そんなの嘘です。うどんが好きか、そばが好きかを誰かに相談して決める人なんていないはず。みんな必ず感覚的に「こっちが好き」っていうのはあるのです。それでまず選んでやってみて、後になって違ったなと思えば変えてもいいんです。今の就職活動を見ると、「環境決定的」だと感じます。つまり、自分がどこに行くべきか、どういうポジションになるべきか、を先に考えてしまっている。大事なのは「どこに自分を置くか」ではありません。繰り返しになりますが、自分の「好き嫌い」が一番大事だと思います。どこに行ったって、20年以上かけて築き上げた「好き嫌い」はそう簡単に変わるものではありませんから。
うまくいかない時こそジタバタしないことが大切
小寺:ということは社会人になって、もし仕事や会社が合わないと感じた時は転職するのはありだという考えですね?楠木:年齢が若ければ若いほど、道を変えてみるのはありだと思います。ただちょっと仕事がうまくいかなくなった時にジタバタするのはよくないですね。そういう時は最低限のことはやりながら、うどんでも食べて布団かぶって寝てればいいんです。私だってそういう時期が2年ほどありました。もちろん授業とか目の前の仕事はやるんだけど、そんなに張り切り過ぎない。そうやって過ごしている期間がある程度あると、機が熟すというか「よし!今だ!」という時がくるんですよね。そういう時はいい仕事が夢中でできる。『ストーリーとしての競争戦略』を書いている時なんか、気づいたら12月31日も仕事をしていた記憶があります。だから機が熟すのを待つためにも、うまくいかない時はうどん食って布団かぶって寝るんです(笑)。
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