「さわる絵本 読めるおもちゃ」をめざした絵本作家
『はらぺこあおむし』の作者の名前を問われれば、多くの方がエリック・カールと答えるでしょう。でも不思議なことに、彼については『はらぺこあおむし』以外の書名をほとんどご存知ない方も多くいらっしゃいます。もちろん『はらぺこあおむし』は彼の代表作ですが、エリック・カールは40冊を超える絵本を発表し、そのいずれ劣らぬ色彩の美しさから色の魔術師と呼ばれているのです。そんなエリック・カールの絵本の中からガイドおすすめの作品を、 彼が絵本を作る際に意識したという「美しい色彩」「読めるおもちゃ」「さわる絵本」の3つの切り口からご紹介します。まずは「美しい色彩」に目を奪われる作品からご覧ください。
画家フランツ・マルクへのオマージュ『えを かく かく かく』
エリック・カールは、12歳の頃ナチス政権下のドイツでこっそり見せてもらった、フランツ・マルクの絵に衝撃を受けたそうです。フランツ・マルクは動物が大好きだったという、夭折のドイツ人画家です。『えを かく かく かく』は、そのフランツ・マルクへのオマージュとして描かれた作品です。主人公の少年が、青い馬や赤いワニ、黄色い牛や黒い白くま(!)といった驚くような色彩の動物を描きます。この常識にとらわれない少年の創作姿勢から、自由でかっこよくてのびのびした絵が次々にうみだされていくのです。
おそらく少年は作者の姿そのものなのでしょう。「絵は自由に書けばよい。間違った色なんてない!」という作者の想いが伝わってきます。清々しい読後感を得られる気持ちの良い作品です。
【書籍DATA】
エリック・カール:作 アーサー・ビナード・訳
価格:1512円
出版社:偕成社
推奨年齢:3歳くらいから
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色の魔術師が本領発揮『うたがみえる きこえるよ』
『うたがみえる きこえるよ』は、子どもの感性に訴える作品を作り続けているエリック・カ-ルの作品の中でもとりわけ異色の存在です。1人のバイオリニストが演奏を始めると音楽が絵に姿を変えて躍り出す……その音楽を表現する色彩の美しさを何に例えればよいのか言葉が浮かびません。エリック・カールの豊かな色彩表現が最大限に活かされた絵本は、本当に色の魔法がかけられたかのようです。30年以上前の作品ですが、全く古さを感じさせないことにも驚かされます。音楽的な想像力と絵画がもたらす想像力の両方を刺激してくれる作品は、余計な文章がないことも魅力の1つ。お気に入りの音楽をかけながらゆっくりと楽しみたい作品です
【書籍DATA】
エリック・カール:作 もりひさし:訳
価格:1512円
出版社:偕成社
推奨年齢:4歳くらいから
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