所得控除とは
所得控除は大きく分けて、ヒトに関する控除と、それ以外の控除に分けられます。年末調整のとき、会社から「給与所得者の保険料控除扶養控除等(異動)申告書」、「給与所得者の保険料控除申告書」という書類を提出するようにお願いされたと思います。ざっくりいって、このうち「給与所得者の保険料控除扶養控除等(異動)申告書」がヒトに関する控除、「給与所得者の保険料控除申告書」がそれ以外に関する控除の情報を記載する書類です。
ヒトに関する主な控除として、配偶者控除と扶養控除があります。配偶者控除は、年収103万円以下の配偶者がいる場合に38万円(70歳以上の場合は48万円または58万円)の控除が受けられるものです。103万円の壁として有名ですね。また扶養控除は、その年の12月31日で満16歳以上の親族がいる場合に38万円~63万円の控除が受けられるものです。こちらも103万円の壁が存在します。また、ご本人や配偶者や親族が障害者である場合など、これに加えて一定の金額が加算されます。また、誰でも定額で38万円の基礎控除というものが受けられます。今回の例では、この基礎控除38万円のみを受けている方を想定しています。
そのほかの控除について
次に、それ以外の控除についてご説明します。支払金額の段の一段下に社会保険料等の金額、生命保険料の控除額、地震保険料の控除額と並んでいますね。このうち、社会保険料等の金額は、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料の天引き額の年間合計となっているはずです。次に、生命保険料と地震保険料の控除額は、保険会社から送られてきた控除証明書をもとに『給与所得者の保険料控除申告書』で計算した金額が記載されているはずです。会社に提出した申告書のコピーがお手元にあれば、金額をチェックしてみてください。そもそも金額が入っていない場合は、会社の担当者が入れ忘れている場合もあります。私も会社員時代に、地震保険料の控除証明書を出したはずなのに控除がされていないことがありました。担当者が私の地震保険料を違う社員の控除として処理していたのです。「おや?」と思ったら、人事等の担当者に確認をとってみましょう。
所得控除の額の合計額が計算できれば、いよいよ税額の計算です。まず、税金の計算のベースとなるのは、源泉徴収票の『給与所得控除後の金額』から、『所得控除の額の合計額』を引いた額です。引いた額を以下の税額表に当てはめて計算します。
ご存じのとおり、所得が高い人ほど税率も高くなっていきます。平成27年以降は、さらに一行追加され、4,000万円超の方については、税率が45%に引き上げられます。なお、控除額とは税率を掛けたあとの金額から定額で控除できる金額です。さらに、今回の例では受けていないですが、住宅借入金等特別税額控除(いわゆる住宅ローン控除といわれるもの)を受けている場合は、計算した所得税額からダイレクトに引くことができます。
意外と多い所得税の納税額
いかがでしたでしょうか。アバウト太郎さんはこうして年間に33万2500円の所得税を国に納めました。この金額を消費税で支払ったとしたら、いくら分の買い物をしたことになるか見てみましょう。33万2500円÷8%×108%=448万8750円でおよそ450万円の買い物に相当します。一月換算で37万円くらいですね。今回の例では社会保険料控除の額も仮の数字なので実際は税額はもう少し税額は少なくなります。とはいえ、天引きされているのであまり意識していないですが、消費税よりも所得税の方が納税額が高い方も多いと思います。また、今回は触れていませんが、給与からは住民税も控除されています。本来働いた対価としてもらえる給与額面からは多くの税金、さらには社会保険料が引かれています。今後も高齢化社会の進展とともに、社会保険料を中心に負担は増えることが予想されます。自分がどのくらいの税金などの負担をしているのかということに普段から関心をもつことで、こうした将来の負担増をある程度予測して、備えることができるようになるのではないでしょうか。