子どもの笑顔が、がんばるエネルギー!
そこで今回は、これから保育士を目指す皆さまが「はやく資格をとって保育の仕事がしたいなあ!」と思ってもらえるようなエピソードをご紹介しようと思います。
「先生みたいに読んで!」2歳児からおばあちゃんへのお願い
わたしが勤めた保育園では年に一度、保育参加という行事がありました。子どもたちが保育園でどんな生活を送っているのか、保護者の皆さまにも体験していただくために、半日ほど保育に参加して一緒に過ごしていただく日です。ある年、わたしが受け持っていた1歳児クラスのSくん。誕生日で2歳になったばかりで、まだ言葉はほとんど出てきません。Sくんは、保育士のお膝に座って絵本を読んでもらうのが大好きで、毎日のようにお気に入りの絵本を持ってわたしの膝にのぼってきます。そんなSくん、保育参加ではお母さんとおばあちゃんがご参加。いつもわたしが読んであげている、お気に入りの絵本を持っておばあちゃんのお膝に座りました。
おばあちゃんは「いつもこの本を読んでいるのね?どれどれ」と、読んであげたのですが……。室内にはたくさんの保護者や保育士がいるので恥ずかしさもあったのか、小さな声で淡々と語る口調で読み終えたおばあちゃん。Sくんはすっかり不満げな表情になり、眉間にしわを寄せて「ちがうよー!」と言うようにわたしのところに本を持って走り寄ってきたのです。
そこで今度はわたしの番。いつもの調子で抑揚たっぷりに、スキンシップも交えながら読んであげると、すっかりニコニコ。「きゃっきゃっ!」と声をあげてはしゃいでいます。この反応を見たおばあちゃんは「こういうふうに読んでほしいのね!先生は上手ねえ!おばあちゃんも上手に読めるようにがんばるね」とお孫さんであるSくんに話していました。
保護者の皆さまに、わたしたち保育士の仕事ぶりを披露することができ、専門職としての誇りを感じた瞬間でした。
「先生がいい!」1歳児でもきちんと職員をみています
1歳児を受け持っていた時のこと。Hくんは入園して間もないというのに、登園時に保護者との別れをいやがることもなく、日中も担任に甘えたり、はっきりとした自己主張をすることの少ない、おとなしいお子さんでした。そんなHくんが、ある日はっきりと「先生がいい!」と気持ちを示してくれた出来事がありました。ある日の給食が終わり、さあお昼寝をしましょうというときのこと。この日は食器の片付けがいつもよりちょっと遅くなり、別の職員(看護師)にHくんの寝かしつけをお願いしました。
すると……。
シクシクと静かに泣く声がかすかに聞こえてきます。おや?と廊下から保育室内に目をやると、Hくんはむくっと起き上がって涙を流しながらわたしの方をじーっと見つめているではありませんか。「あらら。ながみね先生じゃないとダメなのね?」と看護師さん。
いつもおとなしくて、欲求をはっきりと表現することのないHくんが、ちゃんと思いを伝えてくれた瞬間でした。看護師さんには「どうもすみません!すぐに代わりますね!」と言いながら、心の中でにっこり。保育士をしていてよかった!と幸せを感じた出来事でした。
保育園の子どもたちにとって担任保育士は母親代わりで、園の職員なら誰でもよいということではないのですね。1歳児でもちゃんと、担任とその他の職員の区別はしています。むしろ、年齢の低い子どものほうが、担任が見守っていることを確認して安心するようです。年齢があがるにつれて心身共に自立するとともに、保育園での生活にもすっかり慣れていきますので、いろんな大人や友達との交流を楽しみ、活動もダイナミックになっていきます。
乳幼児は日に日に成長し、たいへん大きく変化する時期ですので、それぞれの年齢のクラスにそれぞれちがった楽しみや愛着があります。こんな経験ができることも保育士のやりがいのひとつだと思います。