和食の要「鰹だし」の機能性に注目
寒い夜の受験勉強の夜食に、ボリュームのあるものを食べると、翌日の朝ご飯が食べづらく、生活リズムも乱れやすくなります。
鰹や鰹だしが、肉体疲労の回復に役立つことは、過去の記事「タフなカツオのスタミナ源で疲労回復をサポート」や、「ストレス解消にこってりラーメンより鰹だしのススメ」でもご紹介してきました。
例えば具体的な効果として、疲労回復、計算作業等の効率向上、また眼精疲労改善などにも役立つと言われています。
脳内の血流改善・眼精疲労改善に一役
味の素(株)加工食品開発・工業化センターは、東京大学やその他企業との共同研究により、鰹だしを継続的に摂取することで、日常疲労感の軽減、計算作業の効率を向上することを確認(ヒト試験)しました。※国際行動神経科学会の学会誌『Physiology & Behavior』(2007年Vol.92, 957-962))に掲載
この実験は、疲労感を感じている成人男女48名を2群に分けて、一方は鰹だしを、もう一方は鰹だしに色や香りを似せた試料を、4週間飲んでもらうという内容です。
その結果、皮膚の血流量と同じく、脳内でも血流が改善していることがわかり、だしの摂取によって日常の疲労感が改善することが確認されました。また、計算作業効率(計算テスト前半15分間における正答数が増加)も向上したことが確認されています。
また、味の素(株)の血液循環改善効果(ヒト試験)によって、肉体や精神の疲労の改善だけでなく、眼精疲労改善効果もあるという報告もあります。
※日本眼光学学会誌『視覚の科学 27: 95-101(2006)』に掲載
この研究は、眼精疲労を自覚している24名を対象に、業務用鰹だしを1日125ml、28日間継続して摂取するという内容です。
その結果は、次のように考察されています。
鰹節だし継続摂取により、VDT作業時に生じる毛様体筋の調節緊張が軽減し、また涙液分泌量が正常に近づくことが示唆されたことから、鰹節だしが自律神経系の異常状態を緩和し、これらに起因する眼精疲労が改善された可能性が考えられました。
夜の飲み物におすすめなワケ
鰹だしには血流改善作用などもあり、身体が温まり疲労回復にも役立つかもしれません。
とはいえ、寒い夜の勉強の合間に、温かく香り豊かな鰹だしを飲めば、多くの人たちが、ほっと癒しのひとときを得られることでしょう。身体も温まりますし、カフェインを含むコーヒーや紅茶、緑茶のように、その後の睡眠の妨げにはなりにくいと思います。
また鰹だしに含まれるヒスチジンには、食欲抑制作用があると考えられています。夜中までがんばって勉強するとおなかもすくものですが、夜食を食べ過ぎると、胃がもたれて朝食を抜いたりしてしまいがちです。もし一杯の鰹だしを飲む程度で満たされるならば、翌日の朝食をおいしく食べられ、朝型の生活リズムにつなげやすくなるのではないかと思います。
鰹だしのおいしさは、入れたての豊かな香りが決め手です。よい香りと旨味が出ていれば、塩分を加えなくても十分においしいです。実は、ガイドも夜中まで執筆をして疲れた時に、鰹だしをお茶代わりに飲んでほっこりします。
できれば、香りも含めた美味しさを味わうには、できるだけ作り立てがよいのですが、いちいち夜中にだしをひくのは…、と思う方もおられることでしょう。最近は市販のかつおだしパックなどもいろいろとあります。こういう商品を利用すれば、手軽に煮出すことができますから、利用するとよいでしょう。
関連リンク/
・「タフなカツオのスタミナ源で疲労回復をサポート」
・「ストレス解消にこってりラーメンより鰹だしのススメ」
・「受験生の食事作りに知っておこう ビタミンB群の働き」
参考/
・かつおだし(味の素・研究開発)
・だしに学ぶ-日本人の食嗜好と健康効果(日本食生活学会誌vol.23 No.3(2012))