遺伝子組み換え技術の賛否両論
研究者たちには「夢の技術」である遺伝子組み換えでしたが、これにはさまざまな疑問点や問題点があげられています。- 食した際に健康に悪影響を与える可能性が否定できない
- 自然環境を破壊する
- 有機農業、従来型農業と共存できない
(1)については、市販される前にさまざまな検査が行われています。もっとも活用されているのは、ラットやマウスによる動物実験です。ラットやマウスは寿命が2~3年と短いため、何らかの問題が起こるとしたら早急に異常が起こると考えられているからです。そこで、ラットやマウスなどで健康障害が起こらないことを確認し、さらに他の動物でも確認し……、と念入りに調査をした上で食用としてのゴーサインが出されます。
遺伝子組み換えに詳しい農学博士の恩師が、かつてこんなことを言っていました。
「遺伝子はたんぱく質をつくる情報源である。たんぱく質は加熱をすると変性する。たとえば、生卵を焼いて目玉焼きにした場合、元の生卵には戻らない。元に戻らないことが変性の特徴なのだ。遺伝子組み換えの作物のほとんどは、加熱をしなければ食用にできないもの。変性した後のたんぱく質は元のたんぱく質とは違う性質を示すのだから、遺伝子組み換えであろうと従来の品種改良で作られた新品種であろうと、大差はないではないか?」
この発言は、私も真実だと思います。実際、遺伝子組み換え作物での健康被害は今のところ出ていません。
(2)、(3)の自然環境や従来型農業との共存については、遺伝子組み換え作物は他の品種と一定の距離を保たれた隔離場で栽培することとされており、こちらもかなり厳しい制限がかけられています。
とはいえ、自然界は強いものが生き残ります。セイタカアワダチソウやアメリカザリガニの大発生のように、どこで種が一般の農地に出て行ってしまうかは分かりません。最善の注意は払っていても、ここだけは「100%大丈夫」とは言い切れないように思います。自然界への影響、これこそ反対派が最も主張したい点なのかもしれません。
幻の青いバラを見てみたい
かつて青いバラの花言葉は「不可能、ありえない」という意味でした
しかし、コワイと感じるのは知らないからだとも言えると思います。誰もが遺伝子組み換え技術について、正しく理解することができれば、恐怖心は軽減するのではないでしょうか。
かつて英語で青いバラ(blue rose)の花言葉は「不可能、ありえない」という意味で、「できないこと」の象徴でした。バラには青色を発色するための遺伝子を持っている品種がなく、従来の品種改良では作り出すことが不可能だったためです。
しかし、この青いバラは、遺伝子組み換え技術で誕生することとなります。日本のサントリーフラワーズが開発したこのバラの名前は「アプローズ(APPLAUSE)」。「喝采」という意味です。「アプローズ」の発売を受けて、青いバラの花言葉は「奇跡」「神の祝福」「夢叶う」が追加されました。
なによりも、遺伝子組み換え技術が「不可能を可能に代える」技術であるとしたら、この技術に賭けてみたいと思うのは、夢を見すぎでしょうか。
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