聖誕教会の世界遺産登録に対するアメリカとイスラエルの反発
パレスチナ人居住区とユダヤ人居住区を分けるベツレヘムの分離壁。銃を構えた兵士がゲートを管理している
聖誕教会の側廊。現在教会はカトリック・フランシスコ会、正教会、アルメニア使徒教会が分割管理している
これに反対した両国は分担金の拠出を凍結。特にアメリカは全予算の22%を負担していたため、ユネスコは予算削減や人員整理に追われることになった。そして2013年11月に分担金の支払期限である2年を迎え、両国のユネスコにおける投票権は失効した。
世界遺産登録に際しても、「イエス生誕の地:ベツレヘムの聖誕教会と巡礼路」の緊急登録申請に対してイスラエルは反対動議を提出。アメリカもこれに反対したが、2/3以上の賛成をもって2012年7月に登録された。このとき登録された構成資産は以下となっている。
- 聖誕教会
- 聖誕教会に隣接したカトリック・フランシスコ会、正教会、アルメニア使徒教会の修道院と教会
- それらの鐘楼
- テラス・ガーデン(階段状の庭園)跡
- 聖誕教会周辺の巡礼路
アレクサンドリアの聖カテリーナ修道院。聖誕教会の周囲には3つの修道院が隣接しており、それらの修道院や教会、鐘楼、さらに周囲の巡礼路を含めた宗教コンプレックス全体が世界遺産に登録された
そもそもユネスコは二度の世界大戦の反省を踏まえて創設された組織だ。ユネスコ憲章第1条にはその目的について、「教育、科学及び文化を通じて諸国民の間の協力を促進することによつて、平和及び安全に貢献することである」とある。
国連の一機関でありながら独自の道を歩むユネスコ。はたしてこのエルサレムとベツレヘムに平和をもたらすことができるのか? 人類が試されている。
■ユネスコ憲章前文より
「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」