「所得」は「給与所得」「一時所得」「雑所得」など10種類ある
人が生活していくためには、一般的に何らかの稼ぎがないといけません。個人の稼ぎ、つまり儲けのことを「所得」といい、税法上では「給与所得」「一時所得」「雑所得」など10の区分があります。今回はこれらの課税方法、つまりは税金のかけられかたについて解説したいと思います。<目次>
所得税の課税方法は2つ
所得税の課税方法は、「総合課税」と「分離課税」の2種類があります。●総合課税
不動産所得、事業所得、給与所得、一時所得、雑所得、土地・建物・株式以外の譲渡所得等はこちらに含まれます。
●分離課税
退職所得、土地・建物の譲渡所得、株式の譲渡所得、山林所得等はこちらのグループです。また、退職所得、土地・建物の譲渡所得、株式の譲渡所得、山林所得が合算されることもなく、それぞれ別個に分けて離して税金がかけられます。
さらに分離課税は、土地・建物の譲渡のように申告しなければいけない「申告分離課税」と、利子所得のように、利子を受けとった段階ですでに天引きで課税されている「源泉分離課税」に分けられます。ここでは、合算して課税されるか、単独で、つまり、分けて離して課税されるか、という簡略化された分類でみていきましょう。
所得税の課税方法を身近なものに置き換えてみる
この税金のかけられかたを、身近な例として、ハンバーグ定食になぞらえてイメージしてみましょう。ハンバーグ本体は、挽き肉や玉ねぎなど様々な材料がボウルの中でまざって作られます。一方、つけ合わせとしてつくライスやサイドサラダといったものは単品で提供され、決してボウルのなかでかきまぜられることはないはずです。ハンバーグ本体を構成する挽き肉や玉ねぎを、卵を、不動産所得や給与所得など、総合課税される所得に置き換えてみてください。一方、ライスやサイドサラダといった単品でも提供可能なものを、退職所得や山林所得など、分離課税される所得に置き換えてみると、イメージしやすのではないでしょうか。
事例:サラリーマンがアパート経営と株の売買をしていた場合
例えば、会社勤めのサラリーマンAさんが給与所得のほかに、アパート経営と株の取引を行っていたとします。この場合、会社の給与所得とアパート経営での儲けである不動産所得は、同じ「総合課税」というグループ内にはいりますが、株の売買で生じた儲けである譲渡所得はこのグループに含まれず、分離課税となります。損益通算により、赤字と黒字を相殺できることも
「損益通算」とは、所得金額の計算上、赤字があった所得をほかの黒字の所得から差し引く(相殺する)ことをいいます。ただし、どの種類の所得でも通算できるわけではなく、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得の4つの所得のどれかで損失、つまり、赤字があった場合に限定されています。赤字があるだけの所得なら他にもいくつかあります。
たとえば、保険を解約して保険金が生じた場合には、一般的には一時所得となりますが、「生活の都合上、途中解約してしまった」という場合には保険金が既払込保険料を下回る場合がでてきます。このような場合は、一時所得で赤字が生じてることとなります。
また、仮想通貨で得た所得は原則、雑所得に分類されることが国税庁タックスアンサーに掲載されていますが、仮想通貨で損失が生じた場合は雑所得で赤字が生じてることとなります。
つまり、実社会では、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得の4つの所得以外でも赤字が生じる可能性はあるのですが、損益通算できる赤字というと不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得の4つの所得に限定されているのです。
損益通算できるケース・できないケース
事例のAさんが株の譲渡で損失を出してしまった場合、給与所得と損益通算できるでしょうか。答えは不可。なぜなら、給与所得と株の譲渡は、前者が総合課税グループ、後者が分離課税グループで、交わることはないからです。では、Aさんが年の中途で会社を辞め、個人事業主として開業した場合はどうでしょう。仮に独立初年度は事業が芳しくなくても、給与所得との相殺はできます。なぜなら、給与所得と事業所得は同じ総合課税グループ内だからです。
「生活に必要でない資産」から出た損失は損益通算できない
ただし税制改正により、同じ総合所得でも、給与所得とゴルフ会員権等の売却で生じた損失は損益通算できなくなりました(平成26年4月1日以降)。これまでも、譲渡で生じた損失であっても、別荘や時価30万円超の貴金属、書画、骨董、競走馬等の譲渡で生じた損失は「生活に通常必要でない資産」の損失とされ、損益通算できませんでした。ここに「主として趣味、娯楽、保養または鑑賞の目的で所有する不動産以外の資産」が追加されています。その代表例が、ゴルフ会員権やリゾート会員権です。
損益通算後、さらに所得控除を差し引く
損益通算された後も通常、所得は残ります。ここからさらに、所得控除が適用されるならそれを差し引き、残りの金額(=課税所得金額)に税率がかけられるのです。所得控除は全14種類。雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、配偶者控除、扶養控除、基礎控除などがあります(詳しくは「所得控除って何?どんな種類がある?」を参照)。
所得税の計算方法
もし総合課税グループ内で残額があれば、「超過累進税率」といって、所得が高ければ高い部分だけ高い税率がかかる仕組みになっています。一方、土地・建物の譲渡所得、株式の譲渡所得、山林所得については、土地・建物の所有期間や、上場株か未上場株かなど、それぞれ内容によって別個に区分されて税金がかかります。また、退職所得の税率は超過累進税率が用いられます。
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平成25年より復興特別所得税がスタートしている
住宅ローン控除や配当控除といった税額控除がなければ、通常、この税率が課された段階で税額計算は終わりです。ただし、平成25年から平成49年までの所得税については、上記の税額に1.021%を乗じて計算します(=復興特別所得税)。住宅ローン控除や配当控除といった税額控除があるなら、税額控除を差し引いた後の税額に1.021%を乗じます。
総合課税か分離課税か、損益通算が適用されるかされないかは、人間でいうと骨格にあたる部分です。まずこの部分を押さえないと、その次の所得控除、税率の選択、税額控除、復興特別所得税の加算なども誤ってしまうので、たいへん重要です。