現地で教わったものをどのように作品に落とし込んでいったのでしょう。
八戸でのえんぶり稽古
組によってそれぞれ異なるものの、“一年の農作業をシュミレーションするかのように演じてみせる”という、だいたい30分くらいの大きな流れはどこも決まっています。最初は口上。 “えんぶり摺りの藤九郎が参りてそうろう”と始まります。それから地面をならすような仕草があったり、『祝福舞』という近年では子供たちが踊る演目や、田植えのシーンがあったりと……。また八戸は海の町でもあるので、大漁を祈るような海にまつわる踊りも入ってくる。最後は『畦留め』といって、水を堰き止めて、“これで虫けら一匹ここには入れません”というような台詞で終わる。
作品化しようとしたとき、考えれば考えるほど、本来の構成は残した方がいいのではないかと思えてきました。決まりがあるからこそ、遊べるということもある。実際僕は振付がある方が遊べるタイプなので、構成を残した方がより自由になれるのではという狙いもありました。
『摺り込み』『大黒舞』『田植え』『笠づくし(荒谷えんぶりにだけある演目)』など、「えんぶり」の動きをそのまま取り入れたシーンもあれば、ちょっと手を加えているシーンもあります。あと教わった演目以外でも、面白いと思った振りを自分の振付の中に散りばめたりもしました。舞台美術では、大雪の中で見た、あのうわっと旗が揺らめいていた感じを出したくて、のぼり旗をいっぱい使ったりしています。“名前の入った旗”というのは、飾ってみると、墓標に見えたり、存在を主張しているように見えたりと、いろいろな意味に見えてきて面白く、とても効果的だったと感じています。
「又」(2014 ) (C)山本尚明