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田村一行『おじょう藤九郎さま』インタビュー!(4ページ目)

大駱駝艦の拠点・壺中天(こちゅうてん)で、この冬上演を迎える田村一行振付『おじょう藤九郎さま』。青森県八戸地方の民俗芸能「えんぶり」を題材に10月に八戸市南郷文化ホールで上演し、好評を博した話題作が待望の東京初演を果たします。ここでは、開幕に先駆け田村さんにインタビュー! 作品の成り立ちとその想いをお聞きしました。

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

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「えんぶり」を教わる過程で、最も印象的だったことは?

田村>親方が言うには、同じ踊りを一日に三回以上やらないそうです。なぜなら、何度も踊って集中力が続く訳がないし、いいものが出る訳がないと。 だったら全力で二回やって、それで終わればいい。農家の方たちが昼間にガッと働いて、次の日も朝早いという状況で集まってやるからこそなのかも知れません。二回練習して、終わったらお酒を飲んで、“お疲れ!”って解散する。なるほど、だらだら稽古してちゃダメなんだって反省させられました(笑)。

今回「えんぶり」を題材にする上で、“やってはいけない”ことは避けたいと思ったので、親方に“ダメなことって何ですか?”と聞いたんです。すると、“ダメなものなんてない”と仰っていたのが印象的でした。僕がやれば僕の踊りになるし、誰かがやればその人の踊りになる。それは、自分たちが追い求めている踊りの考えの中でも、最も重要なことのひとつだと言えます。こうやりなさいというものがあれば、言われたことを上手にやればいいとなるけれど、何でもいいよと言われると、途端に動けなくなったりする。そしてそこで何をどう踊るのかというとき、ダンサーとしての質が問われと思うんです。

踊りはもちろん、親方たちと話をできたこと自体が、とても濃密で、素晴らしい時間でした。「田村さんたちはプロだから」と言って僕たちを立ててくれるのですが、そうされることが恥ずかしいくらい、とにかく親方たちの踊りに対する考えが深い。この話を後輩にも聞かせたい、そうしたらきっと彼らも何か変わるんじゃないかって思ったり(笑)。それくらい考え方や話すことが、僕らが普段踊りの現場で話すような内容であったり、直面する問題と全然変わらないんです。

東京でビデオを見ながら振りや動きを分析したりもしたんですけど、どうしても規則性がわからないところがある。あるときの映像を見ると4回繰り返してる動きがあったとしても、他の映像では3回だったり。最終的に組の方に“どういう規則性でああなってるんですか?”と尋ねたら、“ライブです”と。その場その場の空気で、みんなで息を合わせていく。それでも色々な事柄がきちんと成立していくことに驚かされました。そういうこともあって、だんんだん“自分たちなりのえんぶりをやればいいんだ”と思えるようになってきたんです。

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『おじょう藤九郎さま』八戸公演 (c)Hiroki Umenai



タイトル『おじょう藤九郎さま』の由来とは?

田村>藤九郎という人物は、「えんぶり」をつくったといわれているひと。ただ、藤九郎さんにまつわる伝説は各地に様々あるようです。

なかでも荒谷に伝わる藤九郎だけ、何故か“おじょう”と付くらしく、その由来は分からないようです。いろいろ迷ったんですけど、動きや構成はもちろん、荒谷えんぶり組にまつわる話なども大変興味深く、その様々な事柄をひとつの世界に集約するには、中心にあるモノの力を借りるしかないと思い、藤九郎という人物に焦点を当てようと考えました。でも僕が“藤九郎”と呼び捨てにするのは失礼だと思い、“さま”を付けて“おじょう藤九郎さま”としました。

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「オママゴト」(2010) (C)松田純一



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