准保育士資格の問題点
この資格は、子育て経験さえあれば「誰でも簡単!すぐとれる!」という構想です。しかし、保育所での集団保育とは、家庭での育児とは全く別の知識・経験・技術が求められます。近年、保育学会や協議会等では保育現場での事故(※)を無くすためにも「保育士の専門性の向上・保育の質の向上」を目標に掲げ、保育士にはより一層の研鑽を積むことを求めているのです。(※保育現場での事故……午睡中の乳幼児突然死症候群(SIDS)、保育中の体調変化の見落としによる重症化・死亡、保育者による虐待など)
簡単にすぐとれる准保育士という資格は、この流れとは完全に逆方向に向かっており、保育の質の低下を招くことが容易に想像できるわけです。保育中の事故も無くなるどころか増えることでしょう。また、簡単にとれる准資格なのですから、当然、正保育士よりも低賃金となります。正保育士の賃金はあまりにも低く、いまや社会問題となりつつあるほどです。その賃金よりもさらに低くなるのですから、例えばコンビニのレジ打ちのアルバイトより安くなるなどということも起こってくるでしょう。命を預かり、大切な乳幼児期の養護・教育に携わる職業が、こんなことでよいと思いますか?
また、この度の再検討にあたって、これらの問題にはなんら解決策も納得のいく説明もないままです。あいかわらず、保育士の数を増やす、数字を増やすことしか考えられていないのです。
保育は子育ての延長なの?
また「主婦の子育て経験を重視する」という発想からも、いまだに「保育は子育ての延長」と捉えられている印象を受けますし、専門職としての社会的評価が低いことが窺えます(これが低賃金と無関係ではないと思うのです)。保育士試験の勉強をした方、あるいは保育補助のパート・アルバイト経験のある方は、保育とは、自身の子育てとは全く別の専門職であることを実感していらっしゃると思います。
それに、主婦の子育て経験を重視するということは、結婚年齢未満の若い保育者は准保育士にはなれないのでしょうか?また、30~60代以上でも、子どもがいない女性の場合や、男性についてはどうなるのでしょうか?老若男女問わず多様な生き方が認められようとしている昨今、まず「主婦の子育て経験を重視する」という文言そのものに問題を感じずにいられません。
保育士が足りないので能力を眠らせている家庭の主婦にも、社会に出て活躍するきっかけにしてほしいという趣旨であるとしても、通常は、大学・短大・専門学校などで勉強するべき専門職なのです。これをたった3ヶ月の講習で「准」という名で現場に送り込んでよいものでしょうか。
准保育士資格に関するこのような様々な問題について、皆さまはどのように考えますか?
次回は「地域限定保育士」とはどんな資格なのか、紹介します。
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(参考記事)
2014年3月14日
「准保育士」導入を検討 政府、子育て経験女性を担い手に (日本経済新聞)
2014年4月30日
待機児童問題を「准保育士」で解決する危うさ(日経DUAL)