バブル崩壊後に本格稼働した日本のCSR
公害問題は継続的な企業姿勢改善には至らなかった
しかしいずれのケースにおいても、企業の対応は個々の問題への対処か、好景気を背景にした一時的な活動の域を出ないものでした。すなわち、先にあげた第二の要素である活動の「継続性」の観点から、本来のCSRの理念からは程遠いものであったというわけなのです。
日本でCSRが本格的に議論されるようになったのは、90年代のバブル経済崩壊後のこと。これにはいくつかのきっかけがありました。ひとつは不祥事を起した企業の対応への不信感から、米国型コンプライアンスの考え方が導入されはじめたこと。そして、地球規模での環境問題への関心の高まりです。
これらの問題により、企業と社会がお互いに発展していくための持続的な可能性について議論が活発になっていきます。そして、2000年代に入って経団連も「企業行動憲章」にCSRの考え方を盛り込むに至ったのです。
高CSR企業、富士フィルムの取り組み
では具体的にどの日本企業が、CSR経営として進んでいるのでしょう。雑誌「東洋経済」では07年からCSR企業ランキングというものを発表しています。注目すべきは、最近3年間、1位、2位、2位と安定的に高評価を得ている富士フィルムホールディングスです。3年連続CSRで高い評価を得ている富士フィルム
企業活動の社会性においても、「富士フイルム・グリーンファンド」を通じた多数のNPO・NGOの活動支援や、発展途上国向けの低価格デジタルカメラの開発・販売などが注目されています。このようなワールドワイドでかつ高いレベルでの継続的社会貢献姿勢は、日本企業においては特筆すべき存在として評価されています。
CSR経営は、大企業にとってもその多くはだままだ課題を抱えた状況であることは確かですが、企業組織である以上中小企業にも決して無縁なものではありません。これからの企業経営を考える時、就労環境の整備や地域経済活性化への積極的な関与など、経営が主体性を持って継続的にできることから取り組む姿勢は、中小企業にも一層求められる時代になっていくことでしょう。