プロを目指すA.M.ステューデンツの稽古とバレエ学校の稽古では、
どのような点が違うのでしょうか?
(C) TOKIKO FURUTA
牧>内容は同じですが、プロを前提にしている子たちの方が厳しく指導します。それは怒るということではなくて、厳密にするということです。バレエ学校の生徒の場合、例えば10cmズレていたらさすがに直しますが、1、2cmのズレだったら直すほどのことじゃない、それくらいのズレなら踊れてしまうという部分があります。でもA.M.ステューデンツに来たら、1、2cmのズレでも直す。そうでなければプロにはなれないということです。その違いだけで、お稽古の中身はあまり変わらないですね。
(C) TOKIKO FURUTA
ときには厳しいことも言いますが、ひとりひとりが傷付くようなことは決して口にしません。お花と同じで、開く瞬間というのはひとそれぞれ違うもの。開かないのをムリに開いてもしょうがないし、それぞれ、できるときというのは全く別々なんです。小さくても早めに理解できる子もいれば、大きくてものんびりしてる子だっている。まだ理解できない内に言っても本人は気付かないですし、何を言っても通じない。身体のラインや手脚の位置を正確に直したいと思っても、その少しの違いを今言ってもわからな
(C) TOKIKO FURUTA
いだろうなというときは、様子を見て一番通じるときに言います。ひとりひとりみんな違うので、そこは見極めていかなければなりません。
今の子たちは身体がとてもキレイになっていますよね。だから鏡で自分の姿を見ても、悪いところに気付くのはなかなか難しい。一見キレイなので、上手いという錯覚を起こすんです。
ところがバレエというのは芯であり、芯の部分というのは本人にはなかなか見えにく
(C) TOKIKO FURUTA
い。あのひとより自分の方が足が長いからバレリーナになれるのでは、と自分の中で想像するんでしょうけど、それでは上手にならない。毎週稽古をしていて、この子は半年くらいずっと見てるけど芯がまだ見えないな、そろそろ言っても大丈夫かな、という風に様子を見ていく。本人の中で芯や軸が大事だなと気付きだしたら、急いで言わなければいけない。直すなら早い方がいいですから、本人が感じ始めたときに言うようにした方がいい。
(C) TOKIKO FURUTA
ただ、A.M.ステューデンツに入って一年くらいはあまりいろいろ言わないようにしています。本人の目で、違いを見つけて欲しいんです。先にA.M.ステューデンツに入った子たちを見て、あのひとたちはキレイなのにどうして自分はできないのか、というのをとにかく発見して欲しい。地元の教室ではそれなりに上手い子たちだったりするから、A.M.ステューデンツに入ったときはここでも褒められると思ってしまう。他人が見えてないんです。
(C) TOKIKO FURUTA
自分しか見えてなかったものが、一年くらい経つと周りが見えてくる。見える力が出てくるんですね。私はこれがいいと思ってたけど、こっちのひとの方がいいんじゃないかと考えるようになる。発見しようと感じて少しずつ動き出したら、ガラリと変わってくる。その一年間で向こうも私を信頼しはじめ、こちらもこの子には言っても大丈夫だな、上手くなりたいんだなとわかったとき、その関係性の中で直せるようになる。ただ単に先生だから直せる、という訳ではないということです。
(C) TOKIKO FURUTA
ある年令に来た途端にやる気が出て、急に変わる子もいます。最初はよくわからずにバレエが好きという気持ちだけで通っていても、先生の言う通りやっているとどんどん自分が変わっていくのに気付く。そうすると、もっともっとやる気がでてくる。どちらにしても、理解力があるから上手になれる。集中力がないと、私が説明したものをいちから全部記憶していけませんから。
その場で与えられたステップの順番にしても、小さい子たちのクラスはみんななかなか覚えられないけれど、大きい子たちのクラスはすぐに覚えてしまう。1~2年違うだけで大きく違うし、長年やっていくとできるようになります。小さい子たちのクラスでも、なかには天性で頭のいい子、すぐ覚えられる子もいます。そうではない子でも、やっていく内に集中力が出て変わっていくことは多いですね。
(C) TOKIKO FURUTA