日本のエネルギー自給率はわずか4%。再生可能エネルギーの重要性は高まるばかり。
そもそも、日本のエネルギー自給率はわずか4%。残り96%を海外からの輸入に依存しています。こうした資源小国・日本において、電気を大切に使おうという意識は原子力発電所の再稼動如何(いかん)にかかわらず、1人ひとりが常に持ち続ける必要があります。
政府も資源・エネルギー大国へと挑戦し始めるようになり、電力システム改革の断行に乗り出しています。これまでのエネルギー政策をゼロベースで見直し、分散型エネルギーシステムの普及拡大を図るべく、再生可能エネルギーの導入促進へと本腰を入れ始めました。
こうして2012年7月、太陽光や風力、水力などの自然エネルギー源によって発電された電力を電力会社が固定価格で買い取る「固定価格買取り制度」がスタートしました。マイホーム市場ではスマートハウスやエコマンション建設を後押しし、グリーン・イノベーションの波が住宅産業にも押し寄せました。
しかし、制度のスタートからわずか2年余り。その先行きに暗雲が垂れ込め出しました。再生可能エネルギーの買い取り申し込みを保留する電力会社が現れたのです。現状、保留するのは「特別高圧」と「高圧」だけで、住宅用太陽光などの「低圧」(出力10Kw未満)は申し込みを受け付けるとしていますが、いつまで続くかは不明です。住宅のスマート化を腰折れさせかねない不安材料の出現です。ゼロ・エネルギー住宅の実現が遠のき始めました。
そこで、本稿の前半ではハウスメーカーやマンション分譲業者が行なってきた環境性能の向上に対する取り組みを振り返り、後半では再生可能エネルギーの買取り申し込みを保留する理由と住宅市場への影響を考察します。
再生可能エネルギーを活用し、「地産地消」で電力使用量をゼロにする
2012年9月、横浜市港北区に誕生した「パークホームズ大倉山」(総戸数177戸)に注目が集まりました。本物件は経済産業省が公募した「平成23年度次世代エネルギー・社会システム実証事業」において、分譲マンションとして初めて実証対象に採択された物件だったからです。マンション内の電気情報をIT技術によって一元管理し、電力需給の最適化を目指す先鋭的な仕組み「HEMS」と「MEMS」が取り入れられていました。HEMSとは、IT技術を活用して専有部分のエネルギー情報を集約・一元管理し、各居住者が自発的に節電アクションを起こせることを目標とした電気の効率利用に関するシステムの総称です。家電(エアコンやキッチン回りなど)や各部屋の電力使用量をデータとして蓄積し、どれだけの電気を消費しているかをタブレット(端末)に表示。実際の数値を“見える化”することで、1人ひとりの節電意識を刺激します。
また、HEMSが専有部分を範囲としているのに対し、共用部分にまで電気の効率利用に関する適用範囲を拡大したのがMEMSです。太陽光パネルの発電状況、蓄電池の蓄電量、共用部分の照明の使用状況、さらにエレベーターの電力使用量といったデータを見える化し、同時に共用部分のピークカット(電力の最大消費時間帯の節電)を自動制御することで、無駄のない電力利用を可能にします。
ところが、その売電制度が迷走し始めています。上述したように、再生可能エネルギーの買取り申し込みを保留する電力会社が現れたのです。買取り申し込みの保留は住宅のスマート化を阻害します。ゼロ・エネルギー住宅実現の足を引っ張ります。
一体なぜ、電力各社は買い取りを保留するのか?―― 次ページで、その理由を探ります。