歳をとるにつれて記憶力がなくなることは常識のように言われていますが、本当なのでしょうか。
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記憶を司る脳の海馬は、速く歩く程度のジョギングでも2週間続けることで脳神経が増え、6週間で認知能力が改善することが分かってきたらしい。これは、すごいが本当なのか。


記憶のメカニズムと実証実験から紐解きます。

生涯にわたり再生可能な「海馬」

人間の場合、記憶をつかさどる「海馬」という器官は、生涯にわたって再生できると分かってきました。

2011年にピッツバーグ大学の研究チームが有酸素運動を続けることで海馬の大きさが約2%大きくなり記憶力が改善するという論文を発表しています。普段座りがちな55~80歳の男女を対象に、ほぼ毎日、1日40分の有酸素運動 (ウォーキングやランニング)を6カ月続けて行った結果、海馬の大きさが約2%大きくなり記憶力が改善したそうです。

また、海馬を刺激するためには、軽い運動でも十分であることが、筑波大学大学院人間総合科学研究科・征矢教授の2014年の研究によって明らかになりました。
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記憶を司る脳の海馬は速く歩く程度のジョギングでも、2週間続ければ脳神経が増え、6週間で認知能力が改善することが分かってきた。



心拍数で1分間90~100ぐらいの運動でも効果があります。ランニングよりスローペース、速く歩く程度の速さのジョギングを1日10分で構いません。2週間続ければ脳神経が増え、6週間で認知機能自体が向上することがわかったそうです。

多くの経営者やクリエイターが「走るとアイデアが浮かぶ」ということを紹介していますが、適度に走っている時は脳が刺激されるので、その効果もあり新しいアイデアが浮かぶのでしょう。

記憶の脳内メカニズム

海馬は脳の奥、両方の耳をつないだ線のあたりに、左右に一つずつあります。その形は名前のとおり「タツノオトシゴ:海馬」にそっくりな脳の器官です。海馬にも数億個の神経細胞があり、その神経細胞からはシナプスと呼ばれる回路状の組織が無数に存在していて、それぞれがネットワークを作っています。

海馬で記憶が作られるメカニズムは割と簡単です。まず、ひとつの記憶に対応する神経細胞の回路ができます。そして、その神経細胞の回路にリアルタイムに細胞の電気信号が流れて記憶するのが短期記憶で、ちょうどコンピュータのランダムアクセスメモリ(RAM)に相当します。

リアルタイムで電気が流れている間は情報を忘れないのですが、流れる電気が消えると二度と思い出せなくなります。また、時間が経ったり用が済んで他の情報が上書きされたりすると、すぐに忘れてしまうのが短期記憶です。

たとえば、相手に聞かれた質問を覚えておくことで質問に答えられることや、読書でも登場人物や前の頁の場面を覚えていることで文脈を理解したりするときに使います。

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神経細胞やシナプスが増えることは、道路や交差点が充分に出来上がることと同じ。車やバスなどの交通がスムーズに流れるように、記憶の情報もスムーズに行き来できる。

そして、特定の記憶の回路へ電気信号を流すたびに、神経細胞は電気が流れやすい形態へと変化していき、そのうち、電気が長期にわたって強く継続するようになるのが長期増強( LTP : Long-term potentiation)です。英単語を覚えるときも、繰り返すことで記憶が強くなることは、この長期増強の効果です。

長期増強により電気の強さが一定以上になると、たんぱく質が合成され新しいシナプスの繋がりによって新しい神経回路を形成します。これが長期記憶で、いったん長期記憶ができるとほとんど忘れることはありません。この長期記憶はコンピュータのハードディスクに相当します。

海馬を一つの都市と仮定すると、シナプスは海馬を形成する神経細胞同士を結ぶ道路や交差点に対応します。海馬が大きくなり神経細胞やシナプスが増えることは、都市でたとえると道路や交差点が充分に出来上がることと同じです。車やバスなどの交通がスムーズに流れるように、記憶の情報もスムーズに行き来できることになるわけです。


適度なランニングの効果がすばらしいことが分かったところで、ランニングを始めるためのちょっとしたアドバイスも以下集めてみました。

かっこよくスタイリングなランニングにすることも、モチベーションアップのためには大切ですよね。

<参考資料>
  • 運動トレーニングは海馬のサイズが大きくなりメモリを向上させる 2011年ピッツバーグ大学(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3041121/)
  • 軽い運動でも認知機能は高まる!
    ―短時間の軽運動でも高まる実行機能と脳内神経基盤の解明―
    筑波大学、中央大学 平成26年5月 27 日
  • 記憶形成のメカニズム:分子・細胞認知学の展開〔生化学 第83巻 第2号,pp.93―104,2011〕

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