劣等感とは何か……人と比べる相対評価の世界で、避けられない感情
人は程度の差はありますが、何らかの劣等感を必ず抱えているもの。もし誰かにそれを指摘されるような事があれば苦笑いぐらいで済むでしょうか、それとも……
私たちは時に、周りの誰かと自分を比べてしまいます。自分では、周りと比較しないようにしている人でも、周りの誰かから、自分を誰かと比べられてしまうこともあるでしょう。私たちは「相対評価」の世界に生きているのかもしれません。
小さな子どもでも、背の高さや持っているおもちゃなど、ちょっとしたことを比べて、自慢したり、悔しがったりするものです。そしてその傾向は大人になってからも、少なからずどこかに残っています。何かの点で自分が人よりも劣っていると感じた場合、それがコンプレックスになり、ひどいケースでは劣等感が原因で心の病気になってしまうこともあります。
今回は劣等感とは何か、その程度をセルフチェックして関連する心の病気を解説すると共に、劣等感をポジティブな方向に向けるためのヒントについても、わかりやすく解説したいと思います。
<目次>
劣等感が強い・コンプレックスがある……深刻度をセルフチェックする方法
もしかしたら自分には劣等感なんてものはない!という方もいらっしゃるかもしれません。もしそうならば大変結構なことですが、大抵の人は何らかのコンプレックスを抱えているものです。見た目や、勉強の出来・不出来、学歴、運動能力、自分の家庭環境、そして対人関係など、さまざまなことが劣等感を覚える要因になります。でもその程度は人それぞれです。他人にそれを指摘されても、苦笑いするだけで済む人もいれば、ひどく心が傷ついて思い悩んでしまう人もいます。自分が劣等感を覚えるような人には、絶対に近づかないようにしているという人もいるでしょう。ここで劣等感が深刻化していないかどうか、まず以下のことを是非チェックしてみましょう。
- いつもそのことばかり考えていないか
- それが原因で本来すべきことに集中できなくなっていないか
- 自分のコンプレックスが刺激されるような場面を極力避けていないか
- その結果、人生に消極的になったり、せっかくのチャンスを逃してしまったりと、何らかの悪循環に陥っていないか
劣等感が原因で起こる心の病気……うつ病・対人恐怖症・醜形恐怖症など
心の病気が発症するメカニズムは一般に不明ですが、生物学的、社会環境的、心理的要因などがネガティブな方向に相互作用することで発症すると考えられています。コンプレックスは、心の病気の要因のなかでも心理的要因として重要なものです。もし劣等感が強まってしまうと、自分にあまり自信を持てなくなるもの。物事には消極的になりやすく、場合によっては何らかの悪循環に入ってしまうかもしれません。
例えば毎日のさえない気分を紛らわす手段として、アルコールやギャンブルが対象になれば依存症につながる可能性もあります。また、それらは基本的には自分の抱えている問題を解決しません。心の苦悩はそのままで、場合によっては脳内が病的になり、うつ病など心の病気に近くなってしまう可能性もあります。
劣等感に関連する心の病気はうつ病だけではありません。基本的にはどの心の病気も関連する可能性がありますが、代表的なものに対人恐怖症などがあります。また自分の身体的特徴を不合理なほどネガティブに解釈する身体醜形恐怖症、あるいは筋肉をもりもりにしようと筋肉増強剤に頼っているうちに、それに依存するようになってしまうことも何らかの劣等感が関連していることは少なくありません。
劣等感の克服法……コンプレックスを口に出すことも方法の一つ
劣等感は人によっては深い苦悩の元になります。そしてまた、劣等感の原因を根本的に解決することは、難しい場合も多いものです。たとえば自分の見た目や学歴などに劣等感がある人の場合、それを改善するための努力をすることはもちろんできますが、簡単に解決できることは少ないかもしれません。それらの劣等感から、自分の感情や思考、行動に悪影響が出ないように、避けることが大切です。劣等感が原因で、思考が悪い方向に向かわないための方法として、自分が生きていく上でお手本となるような人物を探してみるのはいかがでしょう。何らかの劣等感やハンディキャップを克服したことで大成する方は多く、こうした人の生き方から参考にできる方法が見つかるかもしれません。もちろん自分の身近にお手本となるような人物がいらっしゃれば、ぜひその方を参考にしたいものです。その結果、劣等感のエネルギーが何かを成し遂げる原動力になれば素晴らしいことだと思います。
また、自分がコンプレックスにしていることについては、他人に触れられたくないもの。まして自分からそれを敢えて口にするなんて論外!と思われるかもしれません。しかし、劣等感を克服する上で、その内容をある程度「自分の感情から切り離して」客観視できるようになることはとても重要です。
例えば自分が劣等感を覚える相手に対して、「すばらしいね!」とはっきり言えるようになれば、自分の人生にネガティブな影響を与える劣等感はほぼ克服したも同然です。劣等感を覚える点も、自分の個性として受け入れる第一歩になるでしょう。
もしも劣等感の苦悩に押しつぶされそうなら、カウンセラーに相談してみることも有効です。すでに強い劣等感から何らかの精神症状が起きていて、日常生活を送る上でも支障が大きくなっている場合は、精神科(神経科)受診も是非考慮してみてください。