カジュラホの歴史
ヴィシュヌ神に捧げられたラクシュマナ寺院。トウモロコシのような塔をシカラといい、シカラを並べることで聖山カイラスを中心に連なるヒマラヤ山脈を描いた ©牧哲雄
ヴァラーハ寺院に祀られているヴィシュヌ神の化神ヴァラーハ(猪)像
最盛期には85もの寺院を建築し、寺院は金で覆われて光り輝いていたといわれている。しかし14世紀、イスラム教徒が進出してくると、偶像崇拝を嫌って多くの寺院が取り壊され、本尊も破壊されてしまった。
その後寺院群は忘れ去られて熱帯雨林に飲み込まれてしまった。発見されたのはなんと1838年、イギリスのバート大尉による。残されていた25の寺院は第二次大戦後に急速に復元され、現在のような形になっている。
カジュラホの見所と現実のインド
水たまりでくつろぐ水牛と、その背中に乗るサギのような鳥、そして水面に映るシカラ
中央の像は象の頭を持つガネーシャ神。インドの神々の由来はぜひ自分で調べてほしい。これがおもしろいのだ!
大きな寺院やミトゥナはほとんど西群の寺院群で満喫できる。神々のセクシーな像は一体として同じものがないといわれるほど多彩なので、ゆっくり見てほしい。カジュラホで重要なのは空気観。下手に現在の価値観で見るとその真髄はわからないし、寺院の意味にとらわれると本当に彼らが表現したかったものが見えなくなる。チャンデッラの人々は、この不思議な空気観を表現したくて寺院を造り上げた。文化遺産すべてにいえることだが、建築様式や意味性などはそのための手段にすぎないのだ。
ハイライトは西群だが、ぜひ自転車でも借りて東群と南群にも足を伸ばしてほしい。東群に多く見られるジャイナ教の寺院がおもしろいのはもちろんだが、途中の水田風景や水牛たちが遊ぶ川の景色がすばらしい。そしてそれ以上に注目すべきは村。法的には存在しないといわれるカースト制度だが、人々の家が居住区によってまったく異なる姿がよくわかる。
カジュラホのある民家
ヒンドゥーの身分制度に苦しみながら、人びとはなぜヒンドゥーの神々に祈りを捧げるのか? そんな散歩や、人々との出会いを通して、とても大切なものに気づくことができるかもしれない。