世界遺産/インドの世界遺産

カジュラホの建造物群/インド

ヒンドゥー寺院の一面に描かれた強烈なセックス像ミトゥナと、女性美を強調した優美な女神像アプサラ。今回は愛と性に神を見た月の王国チャンデッラが生み出したインドの世界遺産「カジュラホの建造物群」を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

愛こそはすべて 月の民の都カジュラホ

ヒンドゥー寺院の一面に描かれた強烈なセックス像ミトゥナと、女性美を強調した優美な女神像アプサラ。聖地だというのに、どうしてワイセツで退廃的な像で飾ったりしたのだろう?

今回は愛と性に神を見た「月の王国」チャンデッラが生み出したインドの世界遺産「カジュラホの建造物群」を紹介する。

LOVE&SEXとトゥリ・ヴァルガ

とてもセクシーな女神像アプサラ。古代インドの人々は、性の力=シャクティこそ力の根源で、シャクティは生命を生み出す女性にこそ宿ると考えた ©牧哲雄

とてもセクシーな女神像アプサラ。古代インドの人々は、性の力=シャクティこそ力の根源で、シャクティは生命を生み出す女性にこそ宿ると考えた ©牧哲雄

カンダーリヤ・マハーデーヴァ寺院の男女交合像ミトゥナ。神々の像とともに多数のミトゥナが彫られている

カンダーリヤ・マハーデーヴァ寺院の男女交合像ミトゥナ。神々の像とともに多数のミトゥナが彫られている

女性の曲線美をひたすら追求したセクシーな女神像アプサラと、あらゆるセックスの形を描き出した交合像ミトゥナ。まずは本記事に掲載したアプサラとミトゥナの写真だけ、ざっと見てほしい。

どうだろう? いやらしいだろうか? 日本の倫理観に照らせば不道徳なんだろうけど、彼らの文化のなかで果たしてこれが不道徳だったのかというと、そうばかりともいえない。

「人はまこと百歳の寿命を享受して、時期を区分して人生の三目的を、順次に継続して、しかも相互に侵害することなく遂行すべきである。すなわち、少年時代においては知識の習得などの諸々のアルタ(利)を修め、しかして青年時代にはカーマ(愛)に、しかして老年においてはダルマ(法)と解脱とに専念すべきである」(ヴァーツヤーヤナ著、岩本裕訳『完訳 カーマスートラ』東洋文庫より)

 

愛の喜びに満ち溢れたミトゥナ ©牧哲雄

愛の喜びに満ち溢れたミトゥナ ©牧哲雄

アルタ、カーマ、ダルマは古代インドのトゥリ・ヴァルガ(三大目的)。この中でも、特に現世の人間にとってもっとも重要なのは、異性や家族、子供、そして同じ人類や生命への結びつきを与える「愛」だと考えられた。そう思ってもう一度写真を見てほしい。生命を生み出す女性への讃美、愛を育み快楽を提供するセックスへの歓喜、両者への感謝。像に託した古代インドの人々の想いが聞こえてくるだろう。
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